EXTRA3 託された正義
それは誰かの記憶。
だが、確かに本当に起きた出来事だ。
「鈴蘭さん、僕にはこれくらいしか出来ません。」
「どうして、こんなことになったんだろうね。」
「僕の力不足です。でも、この作戦が上手く行けば李夢を倒すことてさができます。」
「私ね、きっと鈴蘭ではなかったんだと思う。あの人ならこんな運命にはならないもの」
大雨の中だ。少年と少女が話している。
「僕はここであなたを殺します。百合野鈴蘭は、ここで息絶えます。」
「でも、李夢はあなたを信用していない。」
「そうですね。だから、僕は騙すんです。この世界を。」
「ユリノと契約した幌先が死ねばユリノは死ぬ。ユリノが死ぬば幌先は死ぬ。」
「その裏をつくんです。……死ぬつもりはありませんが、きっと僕は殺されかけるでしょう。僕が殺されてもいいように、です。」
少年は左手を出す。
「覚悟はいいですか。鈴蘭さん。あなたは目が覚めたら織詩歌です。」
契約の破棄。それは幌先に伝わる最後の手。
これは幌先の人間が生まれた時に身につける力。
鈴蘭の名を継承する人のみこの仕組みを理解出来る。
「百合野鈴蘭はここで死ぬのね。私はあなたを苦しめた。せめて、李夢だけは。」
「……例え、記憶を失っても、例え肉体を失おうとも、僕はあなたを守ります。そして、導きます。……栄介のことよろしくお願いします。あいつはきっと、正義の心を持っているはずだから。」
少年は左腕を切断する。
契約は今破棄された。
それと同時に百合野鈴蘭も死を迎える。
「……織詩歌……さんを頼む。それが終わったらきっと全て上手くいく。……あいつが、栄介が繋いでくれる。 」
少年は部下の男に織詩歌を託す。
「ご武運を。あなたなら勝てるはずです。」
男はそういうしか無かった。そしてその場を後にする。
「……栄介……頼むぞ。お前の運命の人を見つけてくれ。」
「随分瀕死だな?……主と決別したようだな。」
背後から声をかけられる。相手は当然李夢だ。
「鈴蘭はタスクに預けました。これで満足でしょう?」
「いいや。分かっているだろ?ここでお前も終わりだ。今部下にタスクも殺させる。私のこの手であの女は殺す。お前のことだ。なにか小細工をしているはずだ。……どっちみち、お前を殺せば鈴蘭は死ぬ。……恨むなら鈴蘭を恨め。」
「簡単に……やられるかよ、ババア。」
少年は瀕死の状態で立ち上がる。
幻想の言霊を使用しているため、李夢の目には少年が瀕死の状態で体全身から血を流している、と見えている。両腕とも存在している。
少年の目は李夢を捉える。
目に焼きつけるように。
「ここでお前を……止める!!!未来のために!!!」
少年は残った霊力全てで攻撃する。
渾身の一撃。
「ふっ、やはりな。お前死ぬ気だったか。一撃で終わらせよう。……『言霊返し』!!!全ては逆転する!!」
「そう来るって思ってたよ!!!」
少年は拳を自分に向けて放つ。
「なっ!?」
「我が名をもって命ずる!!我が名はーーーー薫!!意味は今を持って確定する!!!」
「……やってくれた……ね。クソガキが。だが、甘かったな。『状態反射!!!』」
「っ!?……ば、ばかな。お前、化け物かよ。」
少年はその場に倒れる。
「……私は仮にもユリノの後継者だ。
あの忌々しい鬼の力は使える。
……だから、な。私で終わりでいいんだ。もう二度と鈴蘭は生まれてはならない。
すまないな。薫。私は私以外の鬼を取り込み、私ごと封印する。
『鈴蘭は最後の1人なんだ。』」
「…………狂気……だな。でもお前は……いずれ本物に裁かれるぞ。はっははは。」
少年はそこで息絶える。
託された想い。
それは栄介へと受け継がれたのであった。