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お題シリーズ

希望なんて存在しない

作者: リィズ・ブランディシュカ



 この世界に希望なんて存在しなかったのだ。

 叶ったとしても、それはただのまやかし。


 この手に、一時の温もりだけ渡して、すぐに奪い去ってしまう。


 俺には惚れた人間がいた。


 ずっと傍においておきたい人間がいた。


 俺とあいつは水と油の様な存在で、本来なら一緒にいてはならない存在だった。


 だから、俺は覚悟していたはずだった。


 希望を見ないように、幸福にひたらないようにしごしてきた。


 けれど、駄目だった。


 希望の幻想には抗えない。


 これまでは、どんな絶望にも抗ってきたというのに、甘い飴玉を目の前に転がされただけで、俺はそれに手をのばしてしまったのだ。


 そんなもの、ただの幻で、実際には手に取ることすらできないというのに。


 俺は目の前で倒れる彼女の亡骸を手にして、ケモノの様な叫び声をあげる。


 俺の身の回りを世話していた使用人。皺も汚れもなかった使用人服が、血に染まって赤くなっている。


 血の海の中に、俺がやったプレゼントが転がっていた。


 亡骸を見つめる。

 俺は、そいつの服のポケットに、いつも暗殺用の剣があった事に気が付いていた。


 俺とコイツの関係が終わる時は、こいつは俺を刺す時は、俺があいつにやり返す時だと思っていたのに。


 終わってしまってから気づく。


 本当は俺は、こいつと生きたかったのだと。


 勇者と魔王。


 決して交わらない線が交わる時がきてほしいと、願っていたのだ。


 俺は、こいつと明日も一緒にあるという、決して叶わない、幻想の希望を持ってしまっていたのだ。



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