第2話 根っこ
息子「…出来たよ、マスター!」
父「どれ…(ゴクッ)違うな。もう一回作ってみろ」
息子「今度こそ…!どうだい?」
父「どれ…(ゴクッ)うん、違うな。もう一回」
息子「はい…!」
『お店を閉めて早数時間、気づけば夜も明けようとしていた』
息子「何が、、、何が違うんだ…!」
父「なあ、ジュン。お前って本当器用だよな」
息子「えっ?」
父「さっきから、俺が指摘したところ…しっかり改善している」
息子「じゃあなんで駄目…!」
(息子の「駄」あたりに被せるタイミングで)
父「お前には…根っこがないんだよ」
息子「根っこ?」
父「お前は俺と違って昔からとても人に対して優しいよな。気遣いもできる。ただ…時にはそれじゃ駄目なんだよ。お前、人に対して本気で怒った事ないだろ」
息子「怒った事…」
父「俺の指摘に対して『うるさい!これが俺の作るカクテルだ!』って、言い返してもいいんだぞ?」
息子「そ、そんな事出来るわけ…」
父「俺には師匠と言える人がいて今でも頭が上がらないが…本気になっていた時は言い返したものだぞ。言い返したら怒鳴られる事は分かってたけど、あの時は頭で考える前に言葉が先に出ていたものさ」
息子「…!」
父「お前も、俺に対して『これが俺の作るカクテルだ』と思わず言葉に出てしまうくらいに…根っこからぶつかってこい!!」
息子「は、はい!!」
『ここは、都内某所にたたずむ、とあるBAR
閉店後も、眠らないBAR…』