第1話 眠らないBAR
『ここは、都内某所にたたずむ、とあるBAR… 店内にいるのはお店を切り盛りするマスターの父と、父の後を継ごうと必死で修行中の少し気弱な息子…』
息子「ありがとうございました!」
(カランカラン[扉閉める音])
息子「父さん、今ので最後のお客さんだよ。そろそろお店閉めようか」
父「…店で父さんって呼ぶなって、何度も言っとるだろうが」
息子「ご、ごめん…!」
父「よし、閉めるか。ジュン、今夜も修行だぞ」
息子「えっ、今夜も!?」
父「なんだお前、俺の後を継ぐんじゃないのか?その為に必死で修行してるんじゃないのか?」
息子「そうだけど…父さ…いや、マスター。自分で言うのもなんだけど、俺マスターにこうして教えてもらって昔に比べて成長したって思ってる。マスターは俺の事まだ未熟って言うけど、一体何が未熟なのか分からないよ…」
父「……お前の作るカクテルには、心が足りないんだよな」
息子「心?」
父「決められた量をブレンドして決められた様にシェイカーを振る…そんなんだったら覚えれば誰だってできる。それこそ機械に作らせた方が正確だろうな。
店には色々なお客さんが来る。その1人1人に対してどれだけ心を込めて作ることが出来るか…それがお前には足りないんだよ」
息子「……!」
父「とは言えこればっかりは、自分で感覚を掴まないと分からないものさ。今夜は俺相手に…心を込めて作ってみな」
息子「は、はい!!」
『ここは、都内某所にたたずむ、とあるBAR
閉店後も、眠らないBAR…』