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塔の人員、濃すぎませんか?

 見張りのはずなんだけど何というか、気の抜ける二人の様子に、私も落ち着いて話ができるようになってきた。


「それで、あの、王女様ではない私の扱いはどうなるのですか?」

 私の質問に二人はきょとんとした後、意味が分かったのか苦い顔をする。

「それは……」

 片方が言葉に詰まるのを見て、やはり別物として扱われるのかと落胆する。

「やっぱり、追い出されちゃうんですか?」

 私の言葉を聞いたお兄さんの答えは、予想とは違った。


「あ、ええと……そういうわけではないんだ」

「え?」

「その……君には申し訳ない話なんだけど、ラシェル姫は心を壊してこの塔に閉じ込められているんだ」

 あ、うん、そうですよね。そうだろうなと思ってましたけど……。

「それで、君の体はラシェル姫のままだから、塔から出してあげられないんだ……」


 私としてはむしろ予想の範囲内なんだけど、それに気付いていない表情豊かな方のお兄さんは申し訳なさそうに続けた。

「もちろん、基本的に塔の中ならどこに行っても文句は言われないし、庭も図書室もあるけど、塔の外にある結界からは一生出ることはできないと思う」


 お兄さんは今さらっと言ってくれちゃったけど、私にとって重要な一文があった。

 なんと、『塔の中では自由』な上に『庭も図書館もある』んですって!

 最高じゃないですか!


「ええと……?」

 私は今嬉しさが顔に出ていることだろう。それを見た二人が怪訝な顔をする。

 いや、私もこのタイミングで嬉しそうにされたら軽くホラーだと思うけど、にやける顔が止まらない。

「だって私、ここにいてもいいんですよね?」

「いてもいいも何も、()()()()()んだよ? 君はこの先、旅行も、近くの町で買い物ですらできないんだよ!?」


 焦ったように言われるけど、私はどうとも思わない。

 旅行? 遠出も人混みも好きじゃない。

 買い物? それに時間をかけるのが楽しいとは思えない。

 もうお分かりかとは思うが、私は健全な大学生ではない。

 嫌々外に出ているが本質は完全に引きこもりなのだ!……あれ、なんだか悲しくなってきたぞ?


「旅行も買い物も興味ないからここにいたいです!」

 もはや懇願の域に達し始めた私の言葉に、片方は面白そうな、もう片方は呆れたような目を向ける。

「これは今までに無かった展開だね!」

「……面倒な人間が来た」

「まあまあ、そう言わずに! とにかく、ここで暮らすんだから自己紹介が必要だよね!」

 そう言ったお兄さんが手を二回叩くと、部屋の入り口に二人のメイドが現れた。どちらも背は低めでツインテール。違いといえば片方が白い髪、片方が黒い髪というくらいでそれ以外は瓜二つだった。


「他にもいるけど、今すぐ挨拶できるのはここにいる四人だけかな。……あ、スイ。彼女、()()()()()から怖がらなくてもいいよー」

 白髪の方のメイドはにこにこしているのだけれど、黒髪の方は現れたときからずっと怯えていた。見張りのお兄さんからそう言われて驚いたような顔をしたその子に、笑顔を作ってみせる。

 意識して笑顔を作るのは苦手だけど、少し空気が緩んだ気がしたので成功したと思っておこう。


「そういうわけだからご挨拶ー。スイからね」

「え!? わ、私からですかぁ!?」

 言われたその子が慌てたように声を上げる。可愛いしほほえましい。

「す、スイです。よろしくお願いいたします」

 スイは前に出されて諦めたのか、しっかりと挨拶をして、きれいなお辞儀をした。……その後脱兎のようにもう一人のメイドの後ろに隠れたけど。

「スーです。スイと一緒に身の回りのお世話をさせていただきます」

 次に銀髪の方のメイドがにこやかにそう言って、お辞儀をした。彼女の後ろに隠れていたスイは、目の前の壁がなくなってもの凄く慌てていた。可愛い。


「んで、俺がラック。主な任務は見張りと護衛!」

「……ウィズ。右に同じ」

「護衛?」

 お兄さん達は予想通り見張りだったけど、護衛って何だろう。

「ここに入れられるのは王族。一応身分ある人たちだから、護衛も必要ってわけ。ちなみに俺たちは魔法生命体だから、この塔が壊れない限り不死身です!」

「魔法生命体?」

「そう。魔力を糧に生きるものってことだね! スイとスーは人形を主体とした、いわゆるゴーレムなんだけど、俺とウィズは純魔力生命体。三次元の体に頼らない個体なんだ」


 護衛の話は納得したんだけど、魔法生命体の説明に理解が追いつかない。ゴーレムは分かるけど……不死身? なんかさらっとチート情報が聞こえたような。


「……解析完了しました。推定理解度30%……魔法生命体と有機生命体の違い、塔の魔力供給による維持再生システム、純魔力生命体全般についての補足説明が必要と推察します」

 私が首を捻っていると、こちらを見ていたスーが流れるようにそう言った。……おお、ゴーレムっぽい。

「ラシェル様は先ほど“ゴーレムっぽい”と思われたので、ゴーレムに関するイメージはある程度あるものと思われます」

 ……心を、読んだだと!?

「読心術ではありますが、直接精神にアクセスしているわけではありません。表情や心拍数などの身体的情報と会話の情報からの推察になります」


 私の心の声と会話をしているスーを、残りの三人は珍しいものを見るように傍観している。

 ちょっと誰か助けて下さい! スーさんがこっちに寄ってくるんですけど!?


「何を怯えていらっしゃるんですか? もしやどこか不調があるのでしょうか? ご安心ください。私たちは王族を害するようにはプログラムされていませんから」

 さっきと同じ穏やかーな表情なのに楽しそうに見えるのは何でかなあ……。

 ちょっと待って、美少女にこんなこというのも申し訳ないけど寄ってこないで!

 私のパーソナルスペースそんなに狭くないから!

 おーい、入り口の三人! 憐れみの目を向けてないでお願いですから助けやがれください!


「ああ、困惑しておいでですね……これは、データを取る必要があるかもしれません」


 この子、Sだ……!!



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