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2話


--ダンプスペース--



「っててて……、くそっ!やりやがったな、あの女神!」

先ほどの汚部屋よりは空気が澄んでいるものの、雲に覆われた空は陽の光がほとんどなく辛うじて昼過ぎかとわかる程度に薄暗く、荒れた大地はひび割れており、黒い煙のようなものが漂っている。


(くっそ、まだ頭きんきんする! あの情報量、下手したら廃人だぞ。 んで、わかったことは………)


「あの女神っ!! 仕事サボりすぎぃっ!」-サボりすぎぃっ -すぎぃっ


たまらず叫ぶと声が木霊する。


『ギギッ!』『ギィッ?』『ギギャ?』


レイジが音のする方に振り向くと、数十メートル離れた場所にあるうっそうとした森から3つの影が飛び出してきた。

見たかんじは体長2メートルの黒いアルマジロだ。


《黒いモリマジロですね、主が大声出したので釣られて出てきたのでしょう。》


「えっ? 誰?」


《きこえますか… (ぬし)よ… いま、あなたの頭の中に直接……》


「そのネタやめぃっ! 誰だよ、まさかっ、ルーサレスかっ?、このてめぇよくもっ!?」


《アレと間違われるのは不本意です。 私は世界そのもの。 私のことはコアと呼んでください。》


「世界?あ、お前さんも被害者だよな。 ってあぶねっ! うわっとっ! げっ!ぶべらぁっ!!」


いつの間にか3匹のモリマジロが縦列で転がり込んできた。


1匹目をかわし、2匹目を踏み台にジャンプしたところで、3匹目がレイジの顔面にぶつかり、レイジは吹き飛ばされた。


《主よ、モリマジロは非常に気性が荒く、人種を見かけると三位一体転がり攻撃を繰り出してきます。》


「うん、おっせーね!、もっかい言おう、おっせーね!! 自己紹介の前に言うべきことがあったよね?  んがー、また転がってきたっ、この状況どうしたらっ!」


休まず転がってくるモリマジロを持ち前の身体能力でかわしながら、レイジは鼻血を拭った。


ゴロゴロゴロゴロ「よっ!」ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ「おっと!」ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ「…………」ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ「……………………………」ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…「いや、もう無理ぃっ!! ばべっ、ぶべっ、ぼべらっぱ!」


《このままダメージを受け続けますと主は死んでしまいます。》


「ちなみに死ぬと?」

(よく考えたら、無理やり転生させられたんだから、別に死んでもいんじゃね?)


《数時間、死んだほうがマシだと思うほどの痛み、苦しみを精神が狂わない程度に味わうことができます。 その後、この世界にもう一度転生されますので推奨しません。》


「なにそれ怖いっ! じゃさ、なんかすっごい強力な魔法とか状況を打破できるものないのかよっ! そうだっ!」

突然、降りてきた閃きに従い、突進してくるモリマジロに向けて右手をかざし、「四つの元素が一つ、火の精霊よ、眼前の敵を焼き尽くすため、我が手に集まり発現せよっファイアー!!!! ごべぇっ!」


《主、どうされましたか? 顔が赤いようですが…》


モリマジロを片手で受け止める形になったため、腕が折れたのか激痛が走る。

だが、それよりなにより心の中が致命傷を負っている。


(えー、転生者あるある『いきなり魔法使える』じゃないの? チートどうした?)


「だああああぁっ! 悶絶する間もないくらい転がって来やがるっ、もうこれ詰んでるだろがぁっ!!」


もはや満身創痍、体力も尽きはじめ絶対絶命である。




---そのとき、不思議なことが起こった---


『Gyaaaa!!!!』


ザァーッとした飛来音とともに黒い影が、レイジとモリマジロの間に割ってはいり、モリマジロ3匹を一気に飲み込んで、森の向こうにそびえる山へと飛び去っていった。


「えっ? あれって…」

(ゲームでお馴染みのドラゴン…)


《ドラゴン笑、あれはワイバーンですね、モリマジロが大好物です。》

レイジの考えを否定するかのように解説するコア。


(初めて見たんだから、わかんねぇよ。 なんか解説に悪意あるな。)


「あれ、今って声に出したか?」


《頭に直接話しかけてるので、主の考えは聞こえてますよ。》


「あー、そうなんだ。(深く考えるやめた) で、俺は助かったっぽいな。」


いまだに情報を整理できないため、レイジはコアとの会話?については口に出すことにした。


《モリマジロ大好物のお腹を空かせたワイバーンが、()()通りかかって助かりましたね。》


「はは、偶然だな。(もういいや) んで、コアさん?《コアでいいです。》 じゃ、コア、まだ頭がごちゃごちゃしてるんだが、俺はあの女神の尻拭いをするためにどう動けばいいんだ? 世界を中から正常に戻すってどうやるんだ? 戻すまで俺は()()()()()んだろ?」


《さすが主は話が早い。 まずはご自分の能力を確認してください。 ステータスを表示します。 アクセス[レイジ・ステータス]》


レイジの目の前にゲームでよく見るステータス画面が浮かび上がる。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 名 前 :レイジ・ルーサレス


  国  :ダンプスペース(文化レベル3)


 性 別 :男


 年 齢 :18才0ヶ月(記憶保持継続期間100年)


 職 業 :無職 ※無双にして全ての職を極めし者の略


 能 力 :【武術の才】

      【魔法の才】

      【自然治癒速度アップ】

      【精神耐性(限定解禁)】

      【上級世界共通言語】

      【前世記憶(限定解禁)】

      【プチご都合主義】


 称 号 :【効率厨】【カンストしたもの】【ヘタレ】【チェリー】

      【自殺者】【女神の加護】



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


(どうしよう、ツッコミどころ満載でした。


 タイダノがルーサレスに変わってるのはアイツの子ども的な扱いか…ざけんな。


 年齢が若返ってる?、鏡がないから見た目はわからんが腹が少し引っ込んでるか、どうやら全盛期ってのはさっきの戦闘でわかった。


 あれだけ動いたのに全然疲れてない。自然治癒のせいか傷が治り始めてる。


 職業欄は……前世で大企業のナンバー2を捕まえて無職とかいい度胸だ。


 能力つまりスキルってやつか、気になるのは限定って文字、【魔法の才】と【プチご都合主義】か、あれ?俺って魔法使えたのか? だったらなんでさっきは…)


《さきほど「四つの元素が一つ、火の精霊よ、眼前の敵を焼き尽くすため、我が手に集まり発現せよっファイアー!!」とおっしゃっていましたが、この世界では魔法書を読まなければ使えません。》


生まれたての黒歴史を掘り返されたせいで、あははと乾いた笑いをしているレイジに、コアは続けて説明する。


《主の前々世、前世では記憶のとおり魔法は使えない世界でしたが、この世界では魔法の修得は可能です。 なお、例えずっとチェリーだったとしても前世では魔法は使えませんでした。》


(俺の思考にカットインしてきて黒歴史掘ったり、チェリーのくだりはいらんだろっ! 泣くぞ?)


「なぁ、【プチご都合主義】ってなんだ?」


《神の持つユニークスキルの下位スキルになります。 残念ですが、今は主に説明することはできません。》


(えぇ…一番気になるヤツやん。)


「『今は』ね、わかった。 あ、ずっと気になってはいたんだが、なんでコアは俺のことを『主』って呼ぶんだ?」

スキルの内容も気になるが、食い下がっても無駄のようなのでレイジは次に気になっていることを聞いた。


《主は主です。 こちらも説明することができません。 一応、ルーサレス様をフォローするわけではありませんが、前世といくつか違うところは転生特典として付与されております。》


(特典なのか呪いなのか…)


《呪いです。》


「断定しないでくれるっ!? なんかさっきから精神耐性が働いてない気がするんですけど? あれ目から汗が…。」


(話が進まねぇ。 結局どうすればいいんだよ。)


《ぶっちゃけますと、主が思うままに行動していただければ勝手にテンプレ展開がストーリーを進めます。》


(うわぁ…)異世界初めてのドン引きである。


「思うままにって…、あーもう! わかったよ。 とりあえず町を探してそこで冒険者ギルドで登録する感じだろ? この辺りに町ってあんのか?」


頭をがしがしかきながら、話を進めることにした。


《そうですね、ここから北に進んだところにスサンダ村があります。》


「え?、荒んだ村?」


《かつて北にある名も無き村は、魔王の一柱ツメヲカームに突然襲われました。 村人達は魔王に指先を深爪になるまでかじられ続け、生活を苦しめられていました。 あるとき、そこを通りがかった英雄スサンダが村人達を救うため、魔王ツメヲカームに立ち向かい、スサンダ自身も深爪になりながらもなんとか討伐に成功したのです。 しかし、残念ながら英雄スサンダは、魔王が死に際に放った【一生、深爪になる呪い】を受け、深爪の痛みにより戦うことが辛くなったため、現役から退きそのまま村で暮らすことにしました。 それが後のスサンダ村となります。》


「説明が長いわりに、しょぼいなっ!魔王も英雄もしょぼいなっ!!」


《主がしょーもない返しをされたので、由来から説明しただけですが?》

シンッと空気が張り詰める……


「はい、そのとおりです。 ご説明ありがとうございましたっ!!」

生命の危機を察知した、レイジは素直に土下座した。(コイツには逆らっちゃいけねえ。 本能がそう言っている…)


《では、そろそろ移動しましょう。》


「ソーデスネ。」

どこかぎこちない返事をコアにして、レイジはとぼとぼと北へと歩き出した。





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