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プロローグ


何もない空間に、意思が生まれた。


なぜか生まれた。


ある時、意思は自分が独り(ぼっち)だと気づいた。


意思(ぼっち)は寂しかった。


意思(ぼっち)は寂しさを紛らすため、自我を持った『(おにんぎょう)』を創った。


次に『魂』は脆弱なため、空間を囲い『世界(はこにわ)』を創り、『魂』が活動するための入れ物として『生命体』を用意した。


『生命体』に入った『魂』は本能に従い活動し、似た『魂』同士は結び付き繁殖するようになった。

『生命体』が活動を停止した場合は、『世界』が『魂』を回収し、別の『生命体』に転生させる。なぜか以前の記憶や経験を持つ個体は周囲から迫害されることが多く、すぐに活動を停止してしまうため、『世界』は転生前に記憶と経験は封印することにした。


こうして繁殖した『生命体』はそれぞれ縄張りを持つようになり、違う『生命体』と協力や敵対をしながら、独自の文化を形成していくようになった。


意思(ぼっち)は発展する『生命体』を眺めるのが楽しくなり、一つ、また一つと『世界』を夢中で増やし続けた。


そして、意思(ぼっち)が気づいた時には、何もない空間は『世界』でいっぱいになっていた。



□□□



ある『世界』で高い知性を持った『生命体(人種)』同士が戦争を始めた。


『生命体』同士が争うと黒い感情(あくい)が生まれ『魂』に悪い影響を及ぼすため、いつもは『世界』が浄化を行い正常に戻していたが、今回は個体同士の小競り合いから始まり、果ては稀少個体である龍種まで巻き込む世界規模の大戦になり、『世界』は大量の『魂』の回収、新たな『生命体』への転生手続き、荒れた地上の修復などの対応に追われ、溢れかえった黒い感情の浄化まで追いつけなかった。


浄化を逃れた黒い感情はやがて集まり、濃い瘴気を出すようになった。

瘴気は強く、『世界』は瘴気の浄化を試みたが『世界』の力では浄化することが出来なかった。

そして、瘴気は一つの目的【世界の破壊】をのため、『生命体』に入り込み世界を侵略し始めた。


破壊行為が進むにつれ、『世界』は次第に疲弊し、浄化する力は衰え、滅びを迎えようとしていた。


異常に気づいた意思(ぼっち)は荒れ果てた『世界』を元に戻すため、汚れてしまった『魂』を浄化し、『世界』から瘴気を祓い、なんとか『世界』を正常に戻すことに成功した。


  -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

  -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

       私は複数の世界を管理し、君たちを創った者だ。


   今まで世界が対応できない問題については全て私が対応してきた。


  だが、今回のように私が目を離したとき起こる問題に対応するため、


      君たちの中から新たに管理する者を選定することにした。


         選ばれた者には私の力の一部を与えよう。


      どうか『世界』とともにその力で皆を守ってほしい。

  -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

  -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


つまり、手に負えなくなってきたので管理するのを手伝って。ということだ。



『生命体』達は突然頭に響いた管理者の声に混乱しながらも、奇跡が起き、世界が救われたことを本能的に理解した。


声を聞いた『生命体』達の多くは、声の主について奇跡を起こす者、世界を創った存在だと考え『創造主』、『全能の神』と讃え、崇めるようになった。



□□□



永い時を経て、意思(ぼっち)は『世界』のため、成熟した『魂』の中から管理者を適当に選び、『世界』を正常にできる力を与えるとともに担当を振り分けた。 選ばれた管理者は、自らを『神』と呼び、意思のことは『唯一神(ぼっちしん)』様と呼ぶことにした。


そして、意思(ぼっち)は優秀な管理者には、新たな『世界』と更なる力を与えた。


力を与えられた管理者達は、より『世界』を『力』を求め、成績を競い合うようになった。


一方で、力を持たない管理者の中には、瘴気の力に負ける者が生まれ、負けた者は瘴気に支配され、『世界』から力を奪いながら『唯一神』に反抗するようになった。


意思(ぼっち)は他の管理者を守るため、いかなる悪意も通さない網を『世界』につけた。


また、管理者の適性のなかった者や成績の悪い者、反抗する者からは『世界』を取り上げることにした。


『世界』を失った元管理者は、他の管理者達は『唯一神』に(あだ)なす者として『邪神』と呼んだ。


浄化から逃れた『邪神』は『唯一神』の目の届かない場所に潜み、力の弱い管理者を騙し、脅し、洗脳し、間接的に『世界』から力を奪うことにした。


力をつけた『邪神』は配下を増やし、ついには『唯一神』と対峙するまでに勢力を拡大した。


意思(ぼっち)は自らが生み出した『魂』がここまで自我に目覚め、自分に挑んでくるほど強くなったことに驚いた。


驚きはあったが、力の差がありすぎたため、さくっと返り討ちにして『(じゃしん)』を浄化してしまった。


反抗する者が消えたとき、意思(ぼっち)は寂しさを感じた。


自分に従順な魂も可愛いが、それだけではつまらない。


いつか自分に並び、そして超える者が出てくるかもしれない、そのとき初めて孤独(ぼっち)ではなくなるのかもしれない。


意思(かまってちゃん)はこれからも時折生まれるであろう『欠陥品(じゃしんのたまご)』に思いを馳せた。


《以上、創世記の話を私なりに解釈しました。》


『ははっ♪ だいたい合ってるけど、ボクへの悪意がすごいねっ♪』



□□□□□



ここは『唯一神』のいる場所からもっとも離れた世界


--ダンプスペース--



地上は瘴気が漂い、黒く汚染された『魂』は魔物となり、他の『生命体』を侵略し、ときには魔物同士でも激しく争い合う。


やがて生存競争に勝ち残った魔物は進化し、魔王となる。


この世界では数百年の周期で、魔王は生まれ、魔王同士で更に争い合う。


負ければ従属か、勝者の糧となる。


魔王同士の争いは苛烈極まり、海が一瞬にして蒸発することもあれば山が吹き飛ぶこともある。


空は雲に覆われ、大地はひび割れ、世界はゆっくりと終わろうとしている。



そして誰かが嗤う


「準備完了…」と。



□□□□□



--唯一神と一緒に魂を管理しようセンター(略してタマカン) 魂管理部仮眠室--


「それで…、ルーサレスさん、聞いてますか? そろそろ働いてくれませんかね? 貴女が仕事を放棄しているせいで一つの世界が滅びそうなんですけど!!」


女神ストリアスはモニターの向こうでぐうたらしている後輩に苛立ちを隠せず語気が強くなる。


「正直、どうしようも……いや、もう大切な世界の将来についてどうしたものかなーって思考停止しているところですよ。 そうだ!これからちょっと目をつぶって考えごとしますんで通信切ってもいいですか?」


名案を思いついたと、ルーサレスは仮眠用のベッドに入りなおして目を瞑る…瞑想とは座することに非ず(あらず)。すやぁ…


「ちょっと!!起きてください!! また仮眠室を私物化してっ!! 貴女がそうやって寝てばかりだから、セーフティーネットに穴が空いてても気づかないんですよ!? ほんのり邪神の気配がしますし、同業者(他の管理者)が棄てた魂が魔王化してるし、貴女の世界は荒れ放題、まるで原初の世界の終末じゃないですかっ!!」


「うーん、穴が空いているのは不味いですよ。 ていうか先輩、可愛い後輩のために、同業者の件は気づいてるなら止めてくださいよー。 不法投棄、ダメ、絶対!」


「貴女がきちんと管理してれば何の問題もないんでしょうがっ!! それに気づくなら止めますけど、穴を塞がない限り、不法投棄は減りませんよ。 あとねぇ、可愛い後輩は、優しい先輩の話の途中で横になったりしませんっ! ぼさぼさの髪の毛にゴミが付いてるし、せっかくの美貌も涎のあとや枕のカタのせいで色々と台無しですよ、もう少しちゃんとしてくださいねっ!!」

ストリアスは、大きく一息吸って、一気に吐き出したため、肩でぜいぜいと揺らしている。


「あ、ホントだ、先輩よく見てますねー 流石です。 ナイス女子力ぅ!」

ルーサレスは髪の毛についたゴミを払いながらモニターの前に座り直し、ストリアスを褒める。しかし、効果はない。


「……………一体どこに感心してるんですか。 …なんか声を張るのが疲れてきました、はあぁ」


「あっ!先輩、ため息すると幸せが逃げちゃいますよ。 めっ!」


「誰のせいですかっ!! 誰のっ!! あー、もういいわ。 とにかくっ! まずは塞ぎなさいっ!! 穴をっ! 話はそれからっ!! いいですねっ!!!」


……文法がおかしくなったことに気づかないほど叫び倒して、ストリアスはぶつんっと通信を切った。


「さてと、世界を守るため、とりあえず横に…『今すぐ動かないならお父様に相談……』 はーい、了解でーすぅ!!」

(さてさて、どうしたもんか。 穴は私がやらなきゃだから、世界の中に入るのは…)


ルーサレスは、名残惜しそうに仮眠室をあとにして業務部へ向かうことにした。




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