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あの夏の蝉はもう泣かない  作者: 土野 絋
最後の花火は夏の終わり
32/37

始まりの花火 はるき&てるひこ

今回は羽休めの回です。

特に細かいこと気にせず読んでください。


ただ、砂糖をいきなり口に詰め込まれるのでお気を付けて。

晴希と照彦だからね、しょうがないね。

「日向君、大きくなったなぁ…」

照彦は独り言みたいに言った。

「サル、オッサンみたいな事言わないでよ…」

祭りは先程よりとても賑わっていた。

もうすぐ花火が上がるからだろうか。


射的屋が目に入った。

指をさして言った。

「サル、私はあれをやる」

射的を見つけたらやるしかあるまい。

「ん、やってこい」

照彦は腕を組み目をつぶって頷いた。


「よっしゃ!やるぞー!」

「お!姉ちゃん、1回5発だ。頑張れよー!」

射的屋のおっちゃんは元気よく盛り上げる。

「おっちゃん、任せな…」

私は射的が大好きだ。


だが…


パンッ…パンッ…パンッ…パンッ…パンッ…。


得意とは言ってない…。


「姉ちゃん、全部…ハズレだぁ…」

おっちゃんが私に申し訳なさそうに言った。

「オッサン、気を使わなくてもこいつが下手なだけなんで」

照彦が私の頭をポンポンしながら私を(けな)していた。

「サル…貴様ァ…」

睨むように照彦を見上げる。

「お?やるか?」

余裕な表情。

「やめておきます…」

照彦(コイツ)は射的が上手い。

5発なら2個は景品がとれる。

クソが…。


射的屋を離れてまた並んで歩いていた。

「そう言えばさ…」

照彦はどこか困った顔をしていた。

「何で手、繋いでんの俺達」

「んー…サルが事故らないように?」

「適当かよ」

「いいじゃん別に」

理由をいうなら単純に手を繋ぎたかったから。

それだけ。


「別に構わないけど、恋人でもないのに恋人繋ぎはちょっとやめないか…?」

釣れないなぁ…。

少しくらいいいじゃん、久しぶりに手を繋ぐんだから。


「いいじゃん別に」

「機嫌悪くするくらいなら繋ぐよ…」

いいじゃん別に、の言い方で私が少し不機嫌になったのが分かってしまったようだ。

「嫌なんでしょ?」

私はそう言って突っぱねた。

何というか、ただこれだけの事であとに引けない感じがした。


「意地張らないの…」

照彦は恋人繋ぎのままぎゅっと握った。

顔を見ると、少し照彦も照れているようだ。


サルもそうやって意地張ってるくせに…。

でも、どこか嬉しいことには気付かないふりをしておいた。


「ねぇ、サル」

「どした?」

意地っ張りな恋人繋ぎのまま、私達は何をするわけでもなく歩いていた。

「浴衣着てきた方が良かった?」

「いきなり何」

「沙耶が浴衣着てたからさ、照彦もそっちの方が嬉しいのかなーって」

照彦は少し考えてから言った。

「まぁ…?」

なにその曖昧な感じ。

「どっちだよ」

「嬉しいけど、別に付き合ってもないのにそれって必要?」

うわコイツ何も分かってねぇ…。

「付き合ってなくても!そういう感じの方が!照彦も!嬉しいかなって!思ったの!」

「パワーが凄い…」

照彦はそう言うとまた少し考えていた。

そして、目線を少し私から外して言った。


「嬉しい…かな…」


なんだか少し、照彦は面白くなさそうな顔をしていた。

たぶん、これが本心なんだろう。

「お、私の浴衣姿を想像したんか?」

オッサンになる私。


「…したよ」


…っ!


いきなり過ぎて少したじろぐ。

「何をいきなり…」


………………………。


照彦が変なことを言うから、お互い黙ってしまった。


恥ずかしい…。

でも、それと同じくらい嬉しいと思う自分が居た。


私…照彦のこと何だかんだで好きなんだなぁ…。


言葉にはしていない。

でも、何故か照彦もそんなふうに思ってるんだと握った手から感じた。


いつの間にか意地っ張りの恋人繋ぎは、少しの恥ずかしさと、言葉にはしない気持ちに変わっていた。

黙ったまんまじゃ何も始まらない。

「ねぇ…」

「ん?」

照彦が私を見た。

「あのさ…」


ヒュー…


私が話そうとした時、笛を鳴らしたみたいな音が遠くの空から聞こえた。

私も照彦も聞こえた方角を見る。


ドーン…


花火だ。


花火の光が辺り一面に降り注ぐ。


最初の花火が消えるのを見ながら。

「照彦…私のこと…好き…?」

「…どうかな」

この雰囲気で照彦はそんな返しをした。

ロマンティックの欠けらも無い。

「そこはお世辞でも言いなさいよ…」

「お世辞言ったら怒るくせに…」

こんな話をしながら、馬鹿みたいに二人で空を見上げていた。

たぶん周りもそんな感じだと思う。


「綺麗…」

私は独り言みたいに照彦に言った。

「うん…綺麗だ…」

照彦も独り言みたいに返す。

腐れ縁の私達は手を繋いで同じ景色を見ていた。



腐れ縁はいい言葉じゃない。

依存してると言われれば、そうかもしれない。

でも、しょうがない気もしている。

お互いの心にお互いが住んでいて、居なくなったら困ると思っている。

だから私達、このままで居たいんだ。



「サル、今度事故っても全身打撲で済ませてよ」

「俺は超人かよ…」

「とにかく、何も言わずに死んだら許さん」

「そう言って、晴希が先に死んだりしてな」

「サルが死ぬまで死なないよ」

照彦は私を見た。

私も照彦を見る。


お互い、優しい目をしていると思う。


「無茶苦茶だな…」

照彦は笑った。


ずっと、私はその笑顔を見ていたいから。


「ねぇ…照彦…」

「何?」

「私、照彦が死んだ次の日に死んでやろうと思う」

照彦は少し驚いた顔をした。


私は言った。

「私、照彦の死んだ顔見てから、笑って照彦に会いに行ってやる」



だから…。




「私と結婚して?照彦」




たくさん花火が咲いて、私達を照らした。



「うん」


照彦は笑っていた。

私も笑った。

泣きながら笑った。


「これから毎年死ぬまで二人で花火を見よう」

照彦はそう言った。



最後の花火は夏の終わり。



でも、私達はこれからなんだ。



これが晴希と照彦の答えです。

分かってたっちゃあ、分かってましたけど。

でも、二人がまた付き合うのが想像出来なかったんですよね。

たぶん晴希も照彦も想像出来なかったと思います。

なので、いきなり結婚と。


もちろん、大学卒業してからだとは思いますよ?


さて次回からは、いよいよ最終章。

祭りも終わりましたから。

この物語の宴もたけなわということで。


次回、沙耶と0.02


ねぇねぇ、エロいの欲しい?

(やめておけ)

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