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あの夏の蝉はもう泣かない  作者: 土野 絋
その蝉の音は少し歪んでいた
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淡いピンクは友情を問う

「うぅ...」

「アンタは馬鹿か!ペットボトルの水、全く減って無いじゃない!そりゃ熱射病になるよ!」


親戚の家で夏休みの間、親戚の営んでいる果樹園でバイトをしながら居座るはずだったのだが初日から倒れてしまった。

叔母さんに説教を受けながら親戚の家の畳に伏している状況だ。


「今日は休んでなさい、今日は手伝い無いから、ちゃんと休むのよ!?」

「...はい。」


まったく、もう。とおばさんは居間の方へ行った。

少し休んで起き上がれるようになった頃、視線に気づいた。

障子からひょっこりと顔だけを出してニヤニヤ笑っている僕の従姉、晴希(はるき)

男っぽい名前がコンプレックスでポニーテールが特徴の大学二年生。


「ふふふ...、初日から倒れるとは良いご身分ですなぁ~♪」

「体調に身分も何も無いでしょ!」

晴希は今夏休みか。ということはなんであの子がいないんだ?

きょろきょろしていると晴希が気付いた。

「あぁ、沙耶(さや)は今部活。」

なるほど。沙耶は確か僕の二つ下の従妹だ。今年で高校一年生のはず。

「相変わらず日向は沙耶が好きだね〜シスコンかな?」

「違うわ!」

確かに1人っ子の僕にとってこの従姉妹達の存在は兄弟のような存在で沙耶を特に可愛がってはいたが、どこまでいっても妹のスタンスは変わらない。

「元気だねぇ~、持ってた花は花瓶に活けといたよ。」

「あぁ、ありがと。」


僕は起き上がって、あぐらをかいて軽くお辞儀した。花は僕の寝ていた場所からもよく見えるところに活けてあった。


「キレイな花だね、なんて花?」

「ゼラニウムって言うんだ、夏が旬の。」


すると、晴希は苦笑いをして

「聞いても分かんないや、まず花に旬なんてあんの?」

と首を傾げた。


「大体の花にはあるよ、一年中咲いてる花とかじゃなきゃね。」

「へぇー、さすが植物博士。」

からかうような顔で僕を見る。


そして花を見て微笑みながらこう言った。

「あの花可愛いね、淡いピンク色で。」

僕は少し複雑な心になった。

「あの花、可愛いのかな?」

そんな風には見ることが出来なかった。

「え?可愛いじゃん。」

不思議そうに晴希は言った。


「あの花の花言葉、真の友情って言うんだ。」

と僕は言った。

晴希は思い出したような顔をして

「そっか、元々ここに来た理由もあの子の墓参りだもんね。」

と花を見続けていた。


あれから五年、殺しても友達を名乗る資格はあるんだろうか。自分に問うても答えはでない。



正解は分からないままだから。

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