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あの夏の蝉はもう泣かない  作者: 土野 絋
その蝉の音は少し歪んでいた
12/37

晴希

「もしもし、サル?今夜ヒマ?」

見慣れた庭を見ながら晴希はサルに電話をかけた。時間は午後2時を指している。


「あぁ本当?今夜ヒマ?ならさ、ちょっと飲みに付き合ってよ。イイじゃん別に、え?ヒマじゃない?お前ウソ下手か!」

電話の相手は照彦(てるひこ)。私とは中学からの付き合いだ。


「はいはい、私に声掛けられたら逃げ出せないの分かってっしょ?ね、今夜は飲むぞー!じゃあ今夜8時。文句言わない。じゃあね、はーいバイバーイ。」


照彦はサルと呼ばれている。私と会う前からそう呼ばれていた。理由はバナナが好きとか、木登りが得意とか身が軽いとか…。

サルと呼ぶ理由にするには十分過ぎるくらい理由はある。

でも、一番の理由は子ザルっぽい。これが一番だろう。


懐かしいなぁ…。

高校の頃、私が恋愛で変にこじらせた時に彼は何も言わずに、自然にそこに居てくれた。

どうしようも無く寂しくなって、サルとホテルまで行って。

何もしないで彼を置いて黙って出て行ったこともあったっけ。

うん、懐かしい。


今じゃ腐れ縁というか、なんというか。

サルとは中学高校、大学まで一緒になってしまった。

ここまで来ると周りからは付き合っていると思われてしまう。


しかし、あながち間違いではなくて、高校3年の中旬から大学1年の中旬までは付き合っていた。

情けない話、恋人とかの関係になると今までの関係に比べて少し他人行儀になってしまって。

そのまま1年頑張って見たが、お互い限界になって結局元の関係に戻った。

うん、これも懐かしい感じがする。


縁側(えんがわ)黄昏(たそがれ)ていたら喉が渇いた。

お茶を飲もうと冷蔵庫のあるダイニングへ向かう。


ダイニングへと行く途中、襖を開けっ放しの部屋で沙耶が寝ていた。

クーラーもつけずに左手を枕にして横になっていた。

「お〜い、沙耶〜。クーラーぐらいつけて寝ないと死ぬぞ〜」

沙耶は薄目を開けて

「てっぱんだぁぁぁ…」

そう言って、そのまままた寝てしまった。

鉄板ってなんだ。暑いからか?だから熱い夢を見ているのか?

分からん。

とりあえずクーラーをつけて、その部屋を出た。


冷蔵庫を開けると何も無い。

ただお茶だけが入って冷蔵庫に入っていた。

シンクにはブルーベリージャムが瓶詰めにされて寝かされていた。

お茶を取り出しグラスに注ぐ。

一気に飲み干して冷えた呼気を鼻から出す。

美味い。


沙耶はまだ日向の事が好きらしい。

この夏に日向が来るのを顔には出さないで一番喜んでいた。

同時にあの時のことを心配もしていたが。


日向はあの時のことに、どう折り合いを付けるのだろう。

今、日向は楓ちゃんに会いに行っているけれど、楓ちゃんに何と言って話すんだろう。


楓ちゃんは未だに川に行く。近所の人は佑輝君を探しに行っていると思っている。


でも違うんだ。たぶん彼女もあの時のことに折り合いを付けたいんだ。病んでるんじゃない。私はそう思っている。


照彦と飲みに行くまであと5時間ほど、たまにはイラストの練習でもしようかな。

私はグラスを洗って、自室に向かった。


しかし、照彦には申し訳ないことをいつも頼んじゃうなぁ…

私は5月に誕生日だけど、今は7月で照彦は10月に誕生日だからお酒を飲めるのは私だけなんだよなぁ…


しかも割り勘だし。

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