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あの夏の蝉はもう泣かない  作者: 土野 絋
その蝉の音は少し歪んでいた
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夏の大三角形

中学1年 夏


もうすぐ終業式のある日。僕は佑輝に昼休み食堂へ呼び出された。小学3年からの付き合いだが、呼び出されるのは初めてだった。


食堂へ行くと入口で佑輝が既に待っていた。


「佑輝、すまん。待たせたか?」


「いんや、まったく。まぁ、食べながら話そうぜ。」

佑輝の顔は少し困っているように見えた。


券売機で佑輝は親子丼を買った。

僕はカレーとラーメンで迷ったが、ラーメンにした。


食堂のおばちゃんからラーメンを受け取り、2人で向かい合って席についた。


「いただきます。」

2人で声をそろえて言う。

何となく習慣づいてること。


佑輝は黙々と食べ始めた。

僕も話さないことに戸惑いながらラーメンをすすった。


親子丼が3分の1減ったところで佑輝がテーブルの上の漬けものをとったとき、不意に言った。


「俺、楓に付き合ってくれって言われた。」


僕はラーメンをすするのを思わず止めた。口から麺が出ている状態。


佑輝は黙々と食べている。


僕は口から出てしまっている麺をすすりあげた。

(まさか…楓が…)

色々と考えた。僕は楓の事が好きだが、同時に楓とは親友でもある。同じく親友の佑輝の事を好いていることは薄々分かっていた。


「ゆ、佑輝はどうすんのさ。」

無難に尋ねる。


佑輝は箸を止め首をかしげながら強く目を瞑った。


「OKしようかなと思う。」

佑輝はそう言いながら箸をテーブルに置いた。親子丼はまだ半分残っている。


僕は思考が止まってしまった。


「おい」

佑輝が少し乱暴に呼んだ。

「ん、何」

思考を起こし答える。


「どう…思う…?」

佑輝は目を伏せた。


どうしようか…ここで僕が楓の事が好きだと言ってしまってもいい。いや、むしろ佑輝はそれを聞きたいのかもしれない。

でも、佑輝は楓の事が好きなんだろう。

お互い、それは暗黙の了解で言わないようにしている…んだと思う。

最善の答えが分からない。

それでも答えを探す、きっと最善は…


「よかったじゃん、応援するよ。」

最善は自己犠牲なんだと思う。

しかし佑輝の反応がなかった。

佑輝を見ると拍子抜けしたような顔だった。


「日向…お前、それでいいのか?」

真剣な顔をしていた。

僕は涼しげな顔を装って

「何が?」

「お前は…」

佑輝が何かを言う前に言った。

「勘違いしちゃダメだよ、佑輝」

「え?」

「僕は楓の事を妹みたいに思っているんだ」


佑輝は何か言いかけたが口を閉じた。

「そうか…」

僕は少しおどけた顔で

「だからお幸せにね♪」

と言ってラーメンをすすった。


佑輝が何か僕に言いたかったんだろう。

気にはなったが、聞きたくなかった。

この返しが僕にとって一番の防衛で、心に傷がつかないと思った選択だ。

でもなんとなく、分かっている。


佑輝は僕と違って本当に楓の事を妹のように思っているんだ。

そして、僕が楓の事を異性として好きになっている事を知っている。

猶予を佑輝はくれたんだ。

僕はそれを無駄にした。


ラーメンは伸びきっていて、そしてあんまり味もしなかった。

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