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転生 004

 ここがじめじめとした森の奥だということは解っている。

 薄暗い森の中はとても不気味で、いつどこから何が現れるのかわからない。


「なぜ、天才であるこの僕がっ、こんな目にっ!」


 一呼吸ごとに脚に力を入れながら歩く。

 凹凸が激しく、道がない地面だからだ。

 一刻でも早く平坦な場所に座り込んで水でも呷りたいが、生憎とそんな場所は見当たらない。


「なんで……こんな目に……」



 ――エイス・クライスは遭難していた。





 ◆





 事の始まりは、課外授業。

 丸一日かけて行われる授業の内容は、魔力収集。

 物体を魔力に変換する作業を効率よく行う訓練のため、魔力に変換しやすい木々が生い茂る森に入っていた。


 そこで運悪く暴走した獣に襲われたり、天候が荒れたせいで殆どの生徒と(はぐ)れてしまったのだ。



「あっ、そこ危ないよ」


 クライスに声を掛けるのは、唯一ともに行動していたフレクト・ノーブル。

 秀才や天才ばかり集められた場所で、一人だけ落ちこぼれの生徒。

 何故か一緒に逸れてしまった二人は、延々と木々の間を通っていた。


「フン、余計なお世話だ」


 こんな森の中を歩き続けて二日目。

 とうに気力体力ともに尽き果てているクライスは、今にも倒れそうな表情で歩いていた。


「ねえ、あそこに何か見えない?」

「貴様は元気そうだな……目が霞んでなかなか見えん」

「あれは…………建物だよ!」

「なにぃ!?」


 ノーブルはクライスの手を引っ張り、白い建物へと走って行く。

 クライスはなぜこのような森の中に建物があるのか疑問に思ったが、人がいれば食べ物を分けてもらおうと考えるまでが精一杯。

 単純なノーブルは、無人じゃなければいいなぁとしか思っていなかった。



「誰か! 誰かいませんか!」


 硬い素材で出来ている扉をノックする。

 数秒後、中から一人の少女が現れた。


「よ、幼女?」

「なぜこのような場所に幼子が……」


 少女が扉を開き、中へ入れと手振り身振りで示唆する。


「……入れということか」

「大丈夫かなぁ」

「入るしかあるまい。俺を引っ張れノーブル」


 疲労で足が震えて使い物にならないクライスを、ノーブルは軽々と浮かせて家に入った。




「なんだ、ここは……?」

「綺麗なところだね」


 玄関でしげしげと眺めていた二人を、奥から現れた少年が出迎える。

 少年と言っても、9歳のクライスから見れば十分お兄さんと呼べる年齢だ。13か14だろうか。


「ようこそ。遭難者かな? 俺の名前は……いや、すまん。とりあえず風呂に入ってくれ」


 体のところどころが汚れている二人を、このまま家にあげて話すのは難しい。

 そう判断した少年は、二人を風呂に入れることにした。


「それはとても有り難いが……」

「えっ、お風呂! お風呂だってクライス君!」


 はしゃぐノーブルを、クライスが落ち着かせて耳元で囁く。


(こんな森の中に風呂があるわけないだろ。しかもやけに小綺麗な家だ、何か怪しい)

「そ、そうだね……」

「どうかしましたか? 遠慮せずに上がっていってください」


 家主であろう少年は、そう促す。


「……入らせてもらうとしようか、ノーブル。確かにこのままでは余計失礼だ」


 仕方ない。

 そう心の中で呟いてから、案内されるがままに家の中へと踏み入った。

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