転生 001
嗚呼、悪い人生だった。
いじめられ、虐められ、苛められ。
散々な毎日だったさ。
こんなアスファルトの上で死ねるなら、それはいいことだろう。
ストレスの捌け口にされながら死ぬというのが一番屈辱的だ。
……嗚呼、悪い人生だった。
瞼が上がらない。
視界が0に。しかし……暗転!?
「え?」
眩いほどの光が差し込んでくる。
これは、なんだ?
ここは、どこだ?
手足の感覚がない。体もない。意識しかない。
この状態は、魂?
そうしていると、どこからともなく、声が響く。
『子よ、我が子よ。偉大なる神によって生み出された、悪の象徴よ。その願いを我が聞き届けたり』
意味不明な言語で、耳に届く。
しかし、理解る。
脳で日本語に変換されたかのような、不思議な感覚。
その言葉は、今は無き体に沁み渡る。
この声の主は……神?
願いとは、なんだ。
『汝に二度目の生と、使命を与える。転生するのだ、悪の象徴よ。その魂は天界へと昇りやがて方向を変えてとある地に降り立つ』
要するに、転生ってことなのだろうか。
『拒否権は非ず。故に、在るが儘を受け入れよ』
二度目の人生を与えられた。
疑問しか浮かばないが、定められてしまったということが脳に焼き付けられた。
『逝くが良い、悪の象徴。次の世で使命を全うすれば、漸く…………』
そこでテレビの電源でも切るかのように、意識が途切れた。
◆
目が覚めた場所は、どこかの家の中。
そこには現代日本の家具、寝具、日用品などが乱雑に置かれていた。
唯一散らかっていないベッドの周囲を見渡して、現状を確認する。
「転生、したのか。ここは………?」
問いに答える者はいない。
静寂が場を支配している。
「ひとまず、状況確認をしないと話にならないな」
自分しかいない部屋でも、口を動かさないと駄目だということは前世で学んだ。
舌にも筋肉があって、使わないと衰えてくる。
「おっ、鏡か」
大きな姿見だ。そこに自分の姿が映し出された。
黒い髪で、眼の色は蒼く、とても虚弱に見える、少年がそこにいた。
表情は暗い。
「これが、俺か?」
どうやら、声の主は楽に今世を生きさせてはくれないらしい。
「自ら鍛えよ…………ってことか」
前世に比べれば、大分マシな条件下だ。
面白くなってきた。