転生日記4
遅い時間の投稿となってしまいました。
すいません
【八日目】
意外と文字は難しいな。そう思いながらヨークと一緒に自室の机に向かっている。教え方は本を使い、文字を一つずつ覚えるというものだ。『漢字』みたいに沢山文字はなく、文字は全部で三十五文字だ。ちなみに今、二十文字くらい覚えた。
「これはこう読んで…」
ヨークは畑仕事の時間を割いて俺に文字を教えてくれている。それほど期待しているのであろう。時間を使ってくれている父の期待に応えたい。しかし、ぜんぜん身に入らない。言葉というのは難しいと再認識した。
「ヨーク、じゃなくてお父さん、無理です」
いつからヨークをお父さんと呼んでいたか、まあそう呼ばないと駄目、とテイルが教えてくれた。機嫌が悪くなるとか。一度間違えてテイルが呼び捨てしたときは、一日口を利いてくれなかったらしい。そういうところでは細かい人なんだな、と思う。
「マク、今日はもう少し頑張りましょうね」
無理だよ、頑張れないよ。頭使いすぎで頭が痛く、少し心が折れそうだった。
しばらくしてコンコンっとドアを叩く音がした。ドアが開きウィルが入ってくる。その両手にはお膳を持っている。
「お父さん、マク。飲み物を持ってきたわ」
そう言い、木のお膳から水の入ったコップを机に置いてくれる。ありがたい、水を飲んでいる間サボれるぞ。飲み物は水と少ししょぼい気がするが、このウェスターラ村ではとても貴重だ。雨がなかなか降らないからな。隣の町までいって輸入してくるくらいだ。
「ありがとう、マク少し休憩しよう」
ウィルは部屋から出て小声で「頑張って」と言ってくれた。細かい気遣いができる女は俺は好きだぜ。
テイルはコップに手を伸ばしゴク、ゴクと勢いよく水を飲む。対する俺は少しずつ飲んでいく。少しでも多くサボるためだ。無駄なところで頭使ってるな。しかし飲んでいくと水は減る。そしてついに無くなった。しかたなくはじめるか、そう思い本を開こうと思ったとき事は起こった。
「お父さん、父さんはいるか!」
テイルの声がした。息が弾んでいる。何があったのか。そう思っていると急いでテイルが部屋に入ってくる。テイルは早口に言った。
「魔物が出た!すぐに準備して!」
そう聞いたヨークはすぐに部屋を出る。少し怖い顔をして。
「マク、お前は母さんと一緒に家で待っててくれ」
ヨークはドアも閉めずに部屋を出た。今から寝室に防具と武器を取りに行くんだろう。俺一人部屋に残された。しばらく考えた後、ペナに会わなければならないと思い、ペナ探しに部屋を出た。
家の中にウィルがいて、隣の家にペナがいた。三人でリビングのイスに座って帰りを待っている。
「ヨークとテイルはもうすぐ帰ってくるから…」
そうペナが言って何時間経つだろうか。少なくとも二時間は経ってるはずだ。ペナの顔がどんどん元気が無くなっていく。もしも2人が死んだら、とか考えているのだろう。正確に魔物の強さは知らないが一般人が敵う強さでは無いと聞いた事がある。でもヨークとテイルはちゃんと訓練を受けているし大丈夫であろう、と自分に言い聞かせた。でも、もし死んだら…
それから何時間経っただろうか。もう外は暗くなってきた。いくらなんでも遅すぎる。ペナもウィルもヨーク達の死を覚悟しているのだろう。2人はほぼ喋らない。
その沈黙を破るようにドアが開く。
「ただいま」
ヨークの声がする。その声は少し重たい声だった。その後ろにはテイルもいる。ペナは嬉しさのあまり声が出ず泣いている。ウィルは自分の部屋に戻った。人前で泣くのが恥ずかしいのだろう。
「お父さん…」
口から自然と言葉が出た。やばい、ちょっと涙目になってきた。ここで泣くのは男の恥。そう思い俺は静かに部屋に戻った。
部屋に戻ると俺は自然とベッドに横になった。ベビーベッドは卒業して今では普通のベッドだ。
改めてここが異世界と認識する。死んだら終わり、俺は少し夢気分でここに来ていた。優遇さているから。もう死んだから。そんな気持ちを今回引き締められたかもしれない。
だんだんと意識が遠くなっていく。眠たい。落ち着いたからかな。2人が無事でよかった。
俺は睡魔に抗わず寝る事にした。