満月の夜に…その後のお話…
「ひめさま、ひめさまはおひめさま、だったってほんとう?」
「ふふっ。どうかしらね?
そうだったかもしれないし、違うかもしれないわ?」
ふんわりと笑う彼女は、攫われた事実など無かったかのようで…少し、安心する。
王城の奥深くに隠されるようにして存在していた彼女を見つけたのは仕事の試験の一環で王城に忍び込んだ時で、偶々見かけた彼女に一目で心奪われた。
ーーー彼女が欲しいーーー
その気持ちが消せなくて毎晩彼女の下に通い続けた。
彼女は半年程度だと思っているが、彼女が知っている期間を含めて二年は通っている。
離宮を確定するのに半年、部屋を確定するのに3カ月、そこから間違いではないと確認するのに更に3カ月。
ここまでで一年かかっている。
我ながら一瞬見ただけの女にここまで入れ込むなんて気持ち悪いと思ったし、仲間達にも散々馬鹿にされた。
でも消えない気持ちを誤魔化すことがどうしてもできなかった。
部屋が確定してからは窓の外の立ち木に紛れてボーッとただ部屋を見ていた。
そこから踏み出せないまま数ヶ月が経ち、彼女が極まれに夜中に寝室の窓から顔を出すのを見るのが楽しみだった。
見ているだけで満足……その事に我慢が出来なくなったのが窓辺に立った頃だというだけ。
無言で立っていただけの俺に、彼女は墜ちてきてくれた。
だから、攫った。
仲間達も何だかんだと言いながら、俺達を受け入れてくれて里に匿って貰っている。
家事など全くしたことの無かった彼女は色々と失敗も量産したけれど里の女達に教えられて今では一通り1人で出来るようになった。
ふわりふわりと笑う彼女がとても愛おしくて、愛おしい。
見ているだけなんて無理だった。
この手で触れて、抱きしめて、口づけて……もう俺には彼女を解放してあげる事なんてできない。
ごめんよ。愛おしい君。
だからずっと、愛しているよ。




