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Angel In Online  作者: 一狼
第4章 Invisble
21/84

20.準備と再挑戦

 『リザードの王』への挑戦のための臨時PTを結成してから一週間ほどたった。

 この一週間でいろいろな準備をした。


 最後の問題だった魔力探知スキルもあっさり解決した。

 舞子が親衛隊騒動のお詫びの品として持ってきたのが魔力探知スキルだった。

 なんでも俺達が臨時PTの募集とスキルを探してるのを聞いて探し当ててきてくれたそうだ。

 つーか、俺達が必死になって探しても見つからなかったアイテムをあっさり探し当てるなんて、実は舞子は優秀だったりするのか?


 スキルを買うために資金集めをしてたわけだが、思ったより安めに手に入れることが出来たので、この際だから余った資金を使って装備を更新することになった。

 当然お世話になるのは朝霧さんのお店だ。


 みんなを朝霧さんのお店に連れて行くと驚かれた。

 なんでも朝霧ブランドは王都でも有名らしく、簡単に手に入れることが出来ないとか。


「まぁ確かに朝霧さんはスーパー生産者だからね~。どんな生産ももってこいの人だからそりゃ有名になるわ」


「そんな有名生産者とお知り合いなんて流石お姉様です!」


「なるほどなー。トッププレイヤーの陰には優秀な生産者が居るのはお約束だもんなー」


 舞子は相変わらずお姉様を連呼する。出来ればお姉様は勘弁してほしいんだがなぁ。

 天夜は俺をネット小説に当てはめてるのか、そんなセリフを口にする。言われてみれば優秀な生産者と仲がいいのはお約束だよな。


 まずは当初の予定通り舞子を騎士(ナイト)使用の装備に変更させた。

 舞子は魔法少女の格好にこだわりがあったらしく「憧れのお姉様と同じ格好がしたい!」と言って聞かなかったが、何とか説得をして装備を変えさせるのに成功した。

 全身をシルバーのフルプレートで固め、騎士(ナイト)の特徴ともいえる盾装備をちょっと値が張ったがミスリルシールドにした。

 (タンカー)役の防御力は俺達の防御でもあるからな。


 回避型の(サムライ)と称する天夜は、軽くて丈夫で有名なミスリルを素材としたミスリルの胸当て、籠手、脛当てに装備を一新した。

 武器についても最近市場に出回ってきたウーツ鋼インゴットを使った刀に変えた。

 もっともウーツ鋼インゴットを使った武器防具は朝霧さんのお店を含めごく少数なんだとか。


 俺と鳴沢、クリスは革装備一式をドラゴンレザー装備に変えた。

 俺が以前使ってた強化ウルフレザーよりも軽くて丈夫な装備だ。

 と言うか、俺の飛翔竜の剣と言いドラゴンレザーと言い、朝霧さんはどこでドラゴンの素材を手に入れてるのだろう・・・?


 俺は武器を変える必要は無かったが、鳴沢は錫杖を魔力を併せ持つミスリル製に、クリスはミスリルの性質を持つといわれる木材・ミスリルウッドを素材とした大弓を一新した。


「あとフェンリルちゃんにはこれはオマケね」


 そう言って朝霧さんから渡されたのは普通のベージュのシャツに紺のズボンのように見えた。

 だがアイテムの説明欄を見てみると普通の服には無い桁違いの防御力が表示されていた。


「ちょ!? 朝霧さん!? これ、どうなってるの!?」


「それね、最近出回っているミスリル銀糸で作った服なのよ。

 あたしはまだミスリル銀糸そのものは作れないから、運良く手に入れた銀糸で作った試作品がそれね。

 フェンリルちゃんは前衛だから革装備以外にも防御を固めておかなきゃね」


 確かにドラゴンレザーにミスリル銀糸で作った服を着れば防御力は桁違いに高くなる。

 つーか、こんなの出まわったら裁縫生産がパニックになるんじゃないのか?


「朝霧さんでも作れないものあるんですね」


「あはは、流石にレシピが無ければね~。レシピ無しでいろいろ試して入るだけど流石に材料がね」


 朝霧さんの話によるとミスリル銀糸の存在が明るみになってからは、ミスリル素材が高値で取引されるようになり市場が荒れたそうだ。

 お陰でミスリル素材を手に入れにくくなった鍛冶生産者は試行錯誤の上、ミスリルより1つ上の素材のウーツ鋼にたどり着いたらしい。

 ウーツ鋼はもともと鉱石から生産されるのではなく、アイアン鉱石とダイアモンドと魔力石を混ぜ合わせて出来るとのことだ。

 ミスリル銀糸のレシピを探し当てるための試行錯誤がインゴットにも当てはまることに気が付き上手くいったそうだ。


「でも今ミスリルが高値だと銀糸のレシピを持ってる人はさぞ儲かってるんでしょうね」


「あー、その人裁縫生産が荒れるの分かって引きこもりになっちゃったみたい。まぁ銀糸そのものが市場に出回っているから生産自体はやめてないみたいだけど」


 そりゃ荒れるのが分かっていれば雲隠れしたくなるわ。


 俺達は朝霧さんのお店で装備を一新したのはいいが、今まで溜めていた資金は一気に空になった。

 シルバー装備にミスリル装備、ウーツ鋼にドラゴンレザー、これだけ豪勢な装備を購入すれば懐が寒くなるのは当然だ。

 なので今度はお互いの連携とLvUpも兼ねて魔の荒野での資金集めとなった。


 若干資金に余裕が出来てきた頃、俺はランダムスキルブックを10個購入した。

 よく考えたら今さらながら泳ぎスキルは常時使わないので外してもいいことに気が付いたのだ。


 何かいいスキルが出ればと思い10個スキルブックを使用して手に入れたスキルは、火属性魔法、ステップ、蹴り、短剣、魔力量増加、魔力量強化、斧、風属性魔法、火属性付与魔法、そして魔力探知だった。

 ちょっとぉー! 今さら魔力探知って。まぁ、あって困るものでもないが。

 鳴沢とダブるが探知する数は多い方がいいので、泳ぎスキルを外し魔力探知スキルをセットする。


 俺達が『リザードの王』との準備してる間、他の王が攻略されたアナウンスが流れた。

 攻略されたのは『深緑の王・Forest』。ロック平原の北に存在する深緑の森の王だ。

 攻略したのはギルド『月下美人』のギルドマスター・月牙美刃。

 ギルドPTで攻略したらしく、王の石碑には〈ギルド〉と表示されていた。

 噂には深緑の森は相当モンスターのLvが高いらしく、それを攻略した『月下美人』は相当なものだと言われている。


 そんなこんなで一週間ほど時間を費やし、累計Lvは俺がLv48、鳴沢とクリスがLv46、舞子がLv45、天夜がLv47となった。

 そしてやっとショートカットポーチなどのマジックアイテムやポーション等の準備が整い『リザードの王』への再挑戦となった。




8月28日 ――28日目――


 『リザードの王』のいる広場の入り口でBuff等の準備を開始する。


 俺は氷属性魔法のLvが上がったので6属性を駆使した六芒星の盾(ヘキサシールド)四重加体強化(フォルスブースト)を掛ける。

 同じく『イメージ効果理論』を使えるクリスもこの一週間で使えるようになった三属性の盾(トリニティシールド)を掛ける。

 他のメンバーもこの一週間『イメージ効果理論』を練習したが魔法剣はある程度使えるようになったが、輪唱呪文を使いこなすまでとはいかなかった。


 ただし鳴沢だけは『イメージ効果理論』の恩恵は受けられなかった。

 原因は鳴沢の持つ詠唱破棄の即効性がイメージの想像を邪魔していたのだ。

 ゲーム開始から詠唱破棄を駆使したせいで、今さら呪文詠唱を使って『イメージ効果理論』を実践しようとしても全く効果が無かったのだ。

 まぁ、『イメージ効果理論』が無くても詠唱破棄だけでも十分チートなんだけどな。


 俺達は王のいる広場に入るがそこには王は居なかった。


「どういうこと? 場所はここで間違いないはず」


 俺は脳内に展開されているマップで気配探知と魔力探知で探るが、王の気配は感じない。


「何か出現条件があるのかもしれないな」


 クリスの言葉に俺はロックベルの言葉を思い出す。

 彼らも王に挑戦するためサンオウの森に入ったが見つけることが出来なかったと。

 今現在俺が知ってる限りでは、『リザードの王』に戦闘を挑むことが出来たのは鳴沢の元PTだ。


「ベル、ケインズだっけ? 彼らに『リザードの王』と対峙した時のこと聞いてもらえる?」


「わかったわ。ちょっと待ってて」


 鳴沢はメニューを起動させケインズにメールを飛ばす。

 AI-On(アイオン)では遠距離でのプレイヤー同士の連絡方法はメールしかない。

 最近では携帯念話(テレボイス)というマジックアイテムが出回ってきたが、現実(リアル)の携帯電話と同様、念話同士でしか会話できずお互いが持っていなければ意味が無いものだった。

 おまけに出回ったばかりで金額の方も高くて手が出せなかったりする。


 待つこと10分ほどだろうか。鳴沢は届いたメールの内容を教えてくれる。


「彼らも最初は王が居ると思って広場に来たけど、誰も居なくてここでふて腐れてたみたい。そしたら突然現れたって」


 鳴沢の言葉を証明するかのように、突然気配探知スキルに『リザードの王』の出現を感知する。

 しかしそれと同時に俺は気配探知に突然現れる(・・・・・)というある疑念を感じた。


『我は『リザードの王・Invisible』。我に挑む汝らは戦士か?

 戦士でなくばここを去れ、戦士ならば我と戦え』


 何かまずい。俺はそう思い、みんなにここは撤退する旨を伝えようかと思った矢先。


「もちろん戦士です! あたし達はあなたと戦うために来ました!」


 ちょっ、お前何勝手に受け答えしてるんだよ!

 舞子が代表して『リザードの王』の言葉を受けてしまう。


『よかろう、ならば我と戦え!』


 ボスとしては2mほどの身長で鉄の鎧を着こんだ小柄らな『リザードの王』は、片手剣を掲げ俺達と対峙する。


「っ、やな予感がするから撤退したかったんだけど仕方ない。

 舞子は『リザードの王』の正面に立って引き付け役お願い。天夜とわたしは左右から。ベルとクリスは援護をお願い」


 『リザードの王』が突っ込んできて舞子に剣を振るう。

 舞子はミスリルの盾で剣を防ぎながら剣で応戦する。

 俺は『リザードの王』の側面に回り込み、用意していた染料の袋を『リザードの王』にぶつける。

 染料を被った『リザードの王』は左上半身が赤く染まる。


 これで透明化の対策は完了したのだが、先ほどの王の出現が気にかかる。

 そう思っていた矢先、『リザードの王』は透明化を図る。

 そう、予想していた通り赤の染料ごと気配探知スキルからも消えてしまう。


「まずい! 心理的透明化よ! しかも気配探知スキルまで無効化するタイプ!」


 俺の気配探知はまだLvが低いから『リザードの王』の透明化に及ばないのかと思いクリスの方を見てみるが、(ジョブ)スキルとしての気配探知を持つクリスの方でも感知できないようだ。

 魔力探知にしても『リザードの王』は始めっから魔力には感知しなかった。

 信じられないことに『リザードの王』は魔法攻撃を一切持たない純粋物理攻撃のみの王だった。


「舞子! 天夜! 戻って! ベルとクリスと離れてるのは拙い!」


 後衛職で防御に不安のある2人をそのままにしておくのは拙すぎる。

 慌てて2人の元に戻ろうとするが、やばい予感は当たるもので2人の目の前に剣を掲げた『リザードの王』が出現する。


 くそっ! ステップ! ステップ! ハイステップ!

 俺は『リザードの王』が見えた瞬間ステップで間合いを詰めるが、『リザードの王』の攻撃には間に合わない。

 だが『リザードの王』の攻撃の瞬間、クリスは鳴沢を押しのけるというより殴りつけるような勢いで突き飛ばし、自らも後ろへ下がって避ける。


 『リザードの王』の剣は2人の間の地面に打ち下ろされる。


 そのわずかな隙に『リザードの王』に追いつき背後から十字斬りを叩き込む。

 俺の攻撃を受けた『リザードの王』は振り向きざまに横殴りの剣を振るう。

 俺はバックステップで『リザードの王』の剣を避けるが、攻撃を躱された『リザードの王』は後ろへ下がったと同時に再び透明化する。

 うわぁ、マジやり辛い! 透明化ってここまで厄介なのか。


「お・お姉様! これどうするんですか!?」


「これ、ちょっとやばくね?」


 追いついてきた2人も『リザードの王』の透明化に拙さを感じたのか、不安にあたりを見回している。


「もちろん撤退するわよ。染料や探知スキルが効かないんじゃ戦闘になりゃしないわ」


 俺の撤退指示にみんなは頷く。


「だが逃げ切れるのか? 相手は透明化している。逃げる間にもどこからか襲い掛かってくるか分からないぞ?」


「大丈夫。前にも1回逃げ切ってるから。とりあえず広場の入り口に向かって走って」


 クリスの言うとおり逃走時に受ける攻撃が一番拙い。だが、こちらには前にも使ったゲームならではの習性を使った逃走方法がある。


 俺は入口に向かって走ると同時にファイヤーアローを放つ。

 だが俺の放った炎の矢は『リザードの王』に当たることなく霧散する。


「なっ!?」


 あまりの出来事に俺は言葉を失う。

 本来なら逃走を防ぐため道を塞ぐはず。なのに『リザードの王』はそこには居なかった。


「お姉様! 上!」


 舞子の声に反応して上を見上げれば剣を振り下しながら落下してくる『リザードの王』が居た。

 俺は慌てて十字受けで『リザードの王』の剣を受け止める。

 だが落下の威力も相まって完全には受けきれず、片膝をついてダメージを受ける。


「フェル!」


「今のうちに! わたしが『リザードの王』を足止めしてるから、今のうちに逃げて!」


 こうなったら透明化をする暇も与えず接近戦を仕掛けまくって足止めをしてやる。

 最悪ここで俺が死んでもデスゲームが解除されれば鳴沢は現実世界に戻れるからな。


「でも!」


「ベルザ! フェンリルが抑えているうちに逃げるんだ!」


 俺を置いて逃げるのを渋っていた鳴沢をクリスが無理やり引っ張っていく。

 こういう時、冷静な判断が出来る人がいるのはありがたい。


「はぁぁぁぁぁぁーーー!!」


 鳴沢達を追いかけようと『リザードの王』は距離を取ろうとするが、俺はすかさずステップで距離を詰め連続斬りを連発する。


『戦士にあるまじき逃走。汝らはそれでも戦士か!』


 そのセリフを吐いたと同時に『リザードの王』の攻撃が激しくなる。

 ・・・もしかしてこいつ進化してる?

 そういえばAI-On(アイオン)はAIに力を入れたVRMMOだ。

 NPCだけではなくモンスターにもAIが入っていて当然だ。

 王ともなればそれなりのAIが入っているのだろう。

 前回の俺の逃走手段を学習して対策を取ったのかもしれない。

 だとすれば26の王たちは戦闘をすればするほど強くなっていくのか!?


 流石にステップでは躱しきれなくなってきた頃、森の入り口の方から援護が入る。

 『リザードの王』の振り下されそうになった右腕に風の魔法矢が突き刺さり、剣の軌道が外れる。

 その隙をついてターンステップとハイステップを駆使してその場から離脱する。

 再び攻撃に移ろうとしていた『リザードの王』の剣の逆袈裟斬りは鳴沢のマテリアルシールドで防がれる。


 広場の入り口に向かってダッシュしながら、後ろを見ずに『リザードの王』の背後で風の空間一点発動型魔法を炸裂させる。


「サイクロンバースト!」


 目標点を見ずに放った魔法なので命中率には難があるが、『リザードの王』の体勢を崩すのには十分だ。

 こうして何とか無事に『リザードの王』からの逃走に成功した。

 次に『リザードの王』と戦う時はさらに手ごわくなっているんだろうなぁ。

 ああ、その前に無様に逃走した俺達は戦士として認めてくれず戦うことすら出来ないかもな。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「はぁ~~、流石に今回はもうだめかと思った」


「お・お姉様、ボス戦ってこんなに厳しい物なんですか~」


「これが王との戦闘か~。流石にしんどいな」


 これが初めての王との戦闘となる舞子と天夜は大した戦闘をしていないにもかかわらず、流石にグロッキー状態だ。


「はぁ~、染料も気配探知も効かないんじゃ別の方法を探さなきゃね」


「そうだな。可能性としては他のスキルか、対王専用の特殊アイテムなのかもな」


 クリスも王との戦闘は初めてにも拘らず鳴沢とすぐさま『リザードの王』の対策を練っていた。


「あの~お二人さん、反省と対策は町に戻ってからにしない?」


 クリスの言うとおり、もしかしたら対王専用の特殊アイテムなんかあったりするのだろうか。うーむ、Lv的には他の三王と同じくらいなはずなのに『リザードの王』だけが攻略が難しくなってるなぁ




 そうして『リザードの王』の対策を頭の中で練りながらウエストシティに戻るためにサンオウの森を進んでいたのだが、今日のイベントはまだ終わっていなかった。

 森の中の途中で騎士の大軍と遭遇したのだ。

 いや、騎士だけではなく革鎧に身を包んだ騎士とも呼べない兵士たちまでいる。よく見ればどの騎士や兵士も怪我をしていた。

 この大軍はどこから来たのかは知らないが、全てNPCなのだろう。


「待て! 貴公ら止まれ!」


 大軍の隊長とおぼしき騎士に馬上から俺達は呼び止められる。いや、この場合拘束されるといった方が正しいのか?

 俺達に声を掛けた瞬間周りの騎士兵士たちは俺達を囲み、腰の剣に手を掛けたり持っていた槍をこちらに向けたりして俺達の動きを封じていた。


「貴公らはセントラル王国の冒険者か?」


「・・・そうですけど」


 隊長の質問にPTリーダーとして俺が答える。


「そうか、ならば仕方がない。我らの進軍を見られたからにはここで消えてもらおう。

 今我々の存在をセントラル王国に知られてはならないのでな」


 ちょっ! 何だこれ! これもイベントの一種なのか!?

 問答無用の隊長の命令と共に騎士達の武器が一斉に俺達に向けられる。


「待ってください!」


 だがその瞬間、部隊の奥の方から聞こえた声が騎士達の動きを止める。

 そして部隊の奥の方から進み出てきたのは、白馬にまたがった騎士装備に身を包んだ金髪縦ロールに碧眼の少女とも呼べる女性だった。


「女王様! なりませぬ! このような素性も分からぬ者の前にお姿を現すなど!」


「構いません。この者の素性はわたくしが保証いたします」


 隊長が女王の身の安全を守るのは当然のことだ。彼にしてみれば俺達は女王に仇をなすものかもしれない。

 だが女王にしてみればそんな心配は一切ない。何故ならその女王は俺を知っているからだ。


「久しぶりですね。フェンリル様。まさかこのような場所で再会をするとは思ってもみませんでしたわ。

 これも太陽神サンフレア様と月神ルナムーン様の御導きなのでしょうか」


 そう、女王と呼ばれた彼女は俺も会ったことがある太陽神の巫女・パティアだった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


雑談スレ5


454:ジエンド

 ねぇこれどうなってるの?

 今プレミアム王国の首都ミレニアムに着いたんだけど戦場の跡地みたいになってるんだけど


455:ブルースカイ

 >>454 どういうこと?


456:メガMAX

 >>454 は? 言ってることが意味不明だけど?


457:ジエンド

 だから! 町がメチャクチャになってるの!

 そこらじゅう煙が上がって怪我人が大勢いるの! 泣いてる子供までいるの!

 ああ、マジ戦争の現場に来た感じで気分が悪いよ


458:独眼竜

 ・・・なんかのイベントか?


459:ルーク&ビショップ

 首都ともいえる町を破壊するまでのイベントか?


460:ジエンド

 イベントにしちゃ難民までリアルすぎるっつーの!


461:メガMAX

 いつからそうなってるんだろう?


462:エルリック

 煙が上がってるってことはそんなに日数は立ってないんじゃ?


463:るるぶる

 緊急速報!!

 北側の白霊山の麓からプレミアム王国生き残り義勇兵がこちらに向かってきております!

 目的地は王都セントラルの模様!


464:メガMAX

 は? はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??


465:独眼竜

 ちょ!! なんだそれ!!?


466:Justice

 え? もしかしてこれって戦争イベント?


467:ジエンド

 あれ? それじゃミレニアムを廃墟にしたのってセントラル王国ってこと?


468:ルーク&ビショップ

 その復讐に来たってことか?


469:パウル

 なぁ、これってほっとくと拙いんじゃねぇか?


470:メガMAX

 王都が破壊されたら施設とか使えなくなりそうだな

 >>467 ミレニアムは施設とか使えるのか?


471:ジエンド

 使えるわけねーじゃん!


472:独眼竜

 本格的に拙そうだね


473:エルリック

 冒険者ギルドでも緊急クエストが発令されたよ

 つ「元プレミアム王国軍の撃退」


474:メガMAX

 マジか!?

 やばい! 俺参加してくる!


475:パウル

 俺も参加してこよう!


476:独眼竜

 うーむ、これ複数のギルドでも動きがあるかも

 つーかギルドが纏まって動かないと拙いんじゃないか?


477:ジエンド

 俺が戻るころには終わってそうだな・・・どうしよう・・・?



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