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Angel In Online  作者: 一狼
第1章 Start
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1.キャラメイクと魔法少女

「なんだこりゃー!」


 VRMMOの世界に降り立った俺――大神大河――の初めてのセリフがこれだった。


 150cmほどの身長にスラリと伸びた手足、腰までの長い黒髪、くびれたウエスト、Eカップほどのふくよかな胸、股間にあるべきものが無く、どこからどう見ても少女の身体(アバター)だった。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 「Angel In Online」は世界で5番目にAccess社より発売されたVRMMOだ。通称はAI‐On(アイオン)

 Access社は世界初のVR機「アドベント」とVRMMO-RPG「Lord of World Online」を開発し、これにより世界中の人間はこぞってVRMMOに夢中になった。

 そして別会社が国内で2番目・3番目、アメリカで4番目のVRMMOを開発していき世界中を熱狂させていった。


 そうして5番目に再びAccess社より発売された「Angel In Online」はAIに重点を置いたVRMMOだ。

 今までのVRMMOはNPCの表情とセリフが一致せず、微妙に違和感があったのだ。

 そのためにAccess社はAI開発に力を入れ、別会社のAI開発チームを引き抜いたくらいだ。

 その甲斐あって「Angel In Online」はβテストでは好評価を得た。


 だが、いくら好評を得ても肝心のVR機が無いとVRMMOはプレイできない。

 VRMMOが普及したといってもVR機「アドベント」は50万もする高級品だ。

 決して買えない値段ではないが、それでも手を出すのにためらう人がほとんどだ。

 そんな人たちの為にAccess社は「Angel In Online正式オープン記念 無料プレイキャンペーン」を行った。


 日本各地にVR機常設の宿泊施設を作り上げ、そこに7月末~8月31日まで宿泊費無料、朝夕食事付きという破格のキャンペーンを行ったのだ。

 まあ、8月31日を過ぎてもプレイをしたいというお客には、分割払いでもOKとVR機を買い取ることが出来るということなので、Access社は新たな顧客を呼び込むためのキャンペーンということが分かる。それほど「Angel In Online」は自信作なのだろう。


 そして俺はそのキャンペーンに応募して見事当選したのだ。

 キャンペーン期間はちょうど夏休みということもあり、高1最高の夏を過ごせそうだ。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 期待に胸を膨らませながら、指定された日時――7月31日――に指定された場所――さびれたビルだった――に行き、受付を済ます。

 その後の説明会で注意事項を聞き、割り当てられた部屋へ行く。


 部屋の中にはカプセルタイプのVR機「アドベント」があった。

 「アドベント」には生命維持装置が付いており長時間のプレイも可能だというのだが、当然いくら生命維持装置が付いていても長時間のプレイはお勧めしませんと説明されている。だったら初めからそんなもの付けるなよと言いたくなる・・・

 長時間プレイするやつがいるから生命維持装置が付いてるのか、生命維持装置が付いてるから長時間プレイするやつがいるのか・・・なんかニワトリタマゴのような気がするな。


 正式オープンは8月1日の10時開始なので、今日はバイキング形式の夕食を食べ、オープンβ時の攻略情報を確認し就寝する。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 「Angel In Online」のキャラメイクはほとんどがランダムで決まる。名前以外の外見、職業、サブスキル、生産職は自分では決めることが出来ない。


 「Angel In Online」はもともと開発途中では「Atrandom Online」というタイトルだったらしくゲーム中はランダムで決まる要素が多かったらしい。

 普通であればキャラメイクはVRMMO-RPGの醍醐味の一つなのだが、正式に「Angel In Online」にタイトルが決まった時も開発スタッフがキャラメイクはランダム要素のままにした方が面白くない?ということで、『作るのではない、創りあげるVRMMO-RPG』をキャッチコピーに売り出している。

 要は自分で好き勝手作るよりは、与えられたものを自分好みにカスタマイズしろと無茶苦茶な理由だったりする。


 何度もログインをし直せば自分の気に入ったキャラが出来るかもしれないが、それには時間が掛かりすぎるし、名前が他の人に使われる可能性も高くなるので「Angel In Online」ではキャラメイクに時間が掛かることはほとんどないのだが・・・


 開始時間になったので俺は早速ログインをする。

 ログインをするとキャラメイクフィールドに降り立ち一番最初に身体(アバター)が決まる。

 次に名前を入力して職業、サブスキル、生産職と決まるのだが、ここで冒頭の俺のセリフとなる。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「どう見ても女・・・というより少女の身体(アバター)じゃねぇか・・・」


 声も女の声になってるし。

 VRMMOではプレイヤーと身体(アバター)の性別が変えることは出来ない。異性の身体(アバター)を長時間使用してると精神的・肉体的に悪影響が出るらしい。

 しかし、性別判定を脳波パターンで行うため、ごく稀に異性と判断されることがあるとの事。


「もしくは俺の精神が女性よりなのか・・・? うーん嘆いてもしょうがない、このままキャラメイクを続けるか、ログインし直すか・・・」


 普通であればログインをし直すのだが、俺はこのままネカマプレイをしてみようかと考えている。

 なにせ現実ではできないことが出来るのがVRMMOだ。性別転換もその一つだ。


「よし、せっかく美少女の身体(アバター)だ。これをリセットなんて勿体ない」


 俺は気持ちを切り替えて名前の入力に移る。


 目の前には【名前を入力して下さい】とウインドウが浮かんでいる。

 名前は名字の大神の読み方から狼に、そして狼から思い浮かべたのが北欧神話のフェンリルだ。


「フェ・ン・リ・ルっと」


 ウインドウをタッチして名前を入力する。名前は早い者勝ちだ。無事に取得できたみたいだ。


 次にウインドウには【職業を決定します】と表示される。

 職業には〈戦士(ファイター)〉・〈武闘士(グラップラー)〉・〈盗賊(シーフ)〉・〈狩人(レンジャー)〉・〈魔術師(ソーサラー)〉・〈僧侶(プリースト)〉・〈召喚師(サモナー)〉・〈付与術師(エンチャンター)〉の8つがある。俺の希望としては剣などで戦う前衛職を希望したいのだが。

 ウインドウに表示されたのは〈魔術師(ソーサラー)〉だった。手に杖が現れる。


「魔法職かよ・・・」


 ウインドウを見て俺は項垂れる。

 レベルが上がれば上級職に転職出来るみたいなので、今後に期待しよう。


「ま、職業よりサブスキルの方が重要らしいからな」


 昨日見たオープンβの攻略サイトでは、職業のスキルに併せてサブスキルの組み合わせが戦闘の鍵になるらしい。


「魔法が使えるんだから、どうせなら剣が使えるサブスキルがいいな」


 ウインドウにはサブスキルを決定しますと表示される。

 サブスキルの枠は5つ。職業レベルが10になると枠が6つになり、20になると7つとそれぞれ増えていき、レベルが上がるごとにサブスキルの組み合わせは複雑さを増していき重要になる。


 ウインドウをタップしてサブスキルの決定を待つ。

 次の瞬間、美少女の身体(アバター)が外見を変える。


 腰までの長い黒髪はピンクのリボンが付いたツインテールに。

 初期装備の冒険者の服とズボンはフリルの付いたピンクの服とふりふりのスカートに。

 冒険者の靴もピンクのファンシーなものに。

 杖はピンクのハートと羽をあしらったステッキに。

 一言でいうならば、魔法少女の姿だった。


「なんっっじゃこりゃ―――――!」


 本日二度目の叫びだった。


 俺は慌ててウインドウを確認する。

 ウインドウには〈二刀流Lv1〉〈ステップLv1〉〈極大魔力〉〈萌え〉〈泳ぎLv1〉の5つがあった。



 〈萌え〉:外見を萌えにする。また攻撃時に相手に萌えBuffを与える。萌えBuffを与えられた者は萌えスキルを持つ者の攻撃に対して1.2倍のダメージを受ける。※このサブスキルは一度サブスキル枠にセットすると外せません。



「これか――――! 外見を萌えにするってなんだよ! 見た目は魔法少女だから萌えるよ! けどこれはないだろう! しかも一度セットすると外せないってなんだよ!!」


 外見が魔法少女なのは魔術師(ソーサラー)だからだろう。

 まだゲームが始まってないのに心底疲れたよ。


 〈萌え〉スキルに目が行ってしまったが、〈二刀流〉〈ステップ〉この二つはいい。望んでいた前衛用のスキルだ。

 だがもう1つのスキルがとんでもなかった。


 〈極大魔力〉:魔法攻撃力を10倍にする。


「チートスキルじゃねぇか!」


 魔法職だからこのスキルはうれしいけど、もう一回言うぞ、チートスキルじゃねぇか!このゲームバランス大丈夫か?


 〈泳ぎ〉スキル? うん、どうでもいいよ、〈萌え〉〈極大魔力〉の2つに比べたらね。


「はぁ、もうちゃっちゃっと始めよう。うん、始めよう。悩むだけ損だ。どうせランダムなんだし、せっかくのスキルだ使ってやるよ」


 俺はやけくそ気味に言いながら最後の生産職を決めるためにウインドウをタップする。

 生産職の枠は3つあり、ゲーム中はその組み合わとレシピで生産をしていくことになる。

 ウインドウには〈裁縫〉〈薬師〉〈彫金〉の3つが表示された。


「よし、これで決定だ」


 ウインドウには最終確認として【以上でよろしいですか? Yes/No】と表示される。俺はYesのボタンを押す。


 ――それでは「Angel In Online」をお楽しみください――


 俺はそのアナウンスを聞きながら「Angel In Online」の世界に降り立った。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


魔法少女を見たスレ


1:光の王子

 ゲーム開始直後なのに魔法少女を見たんだが

 一人だけ装備が違うってどういうこと?


2:天夜

 俺も見た!しかもメッチャ可愛かった!


3:justice

 俺も見た!しかもメッチャ巨乳!


4:邪気癌

 >>3 mjd!?


5:鏡子

 運営スタッフとかじゃないの?

 ゲーム開始直後のトラブルとか無いように


6:光の王子

 そんな風には見えなかった

 他のプレイヤー同様に買い物をして町の外に出て行ったしまった


7:独眼竜

 オープンβの特典とかじゃないの?


8:邪気癌

 >>3 巨乳のサイズを求む!


9:怒り新人

 僕、オープンβからのプレイヤーだけどそんなの聞いたことないよ


10:justice

 >>8 見た感じD以上はあった


11:邪気癌

 mjd!!


12:独眼竜

 >>11 黙れww

 オープンβの特典じゃなければどこで手に入れたんだ?

 スタート時点で装備が違うって特典以外じゃ考えられないのだが


13:光の王子

 うん、いきなり魔法少女が目の前に現れてビビったw


14:鏡子

 装備じゃなければ隠し職とか?


15:怒り新人

 僕、オープンβからのプレイヤーだけどそんなの聞いたことないよ


16:アルフレット

 いや、職業は8つで間違いない

 隠し職があるとすれば上級職以上からだろう


17:天夜

 じゃあ、あの魔法少女はなんだったんだ?


18:心音

 あと考えられるのは、何か特殊効果のスキル?


19:怒り新人

 僕、オープンβからのプレイヤーだけどそんなの聞いたことないよ


20:独眼竜

 >>19 お前はそれしか言えないのかww

 魔法少女に変わるスキルってどんなんだよww


21:ジャッジメント

 あのさ、本人に聞いた方が早いんじゃね?


22:邪気癌

 よし、聞いてくる

・・・バストサイズを!w



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