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Angel In Online  作者: 一狼
第4章 Invisble
19/84

18.親衛隊とPK

8月20日 ――20日目――


 俺達はウエストシティの宿で一晩明かした後、資金稼ぎの為フィールドに出る準備をする。


 目的地はウエストシティの南に広がる魔の荒野だ。さらにその先にはワイバーンが闊歩する飛龍の渓谷があるが、今回はそこまでは遠征はしない。

 経験値稼ぎなら安全マージンを考えるとサンオウの森でもいいが、今回は経験値稼ぎと資金集めの為、魔法生物の蔓延るフィールドを選んだ。

 スライム、ストーンゴーレム、ガスト、ガーゴイルなどが生息し、強敵となるとキマイラ、アイアンゴーレム等も存在する。

 魔法生物のドロップ品は魔法関係の素材等が多く、魔法都市(ウエストシティ)では盛大に取引をしているので資金稼ぎには持って来いなのだ。

 もちろん魔法生物だけではなくジャイアントアントと言った荒野のモンスターもいるので、それらのドロップ品も結構な値段で売れる。


 準備と言っても多少のポーション類と消耗品の補充、それと実験用の染料をいくつか持っていくくらいだ。

 魔法都市と呼ばれるだけあって魔法アイテム関連は充実しているのだが、無駄な経費をかけれないので我慢をする。


 準備が出来たので、さぁ出発しようと思った矢先、5人組の女性プレイヤーに声を掛けられる。


「そこの貴女! だ・誰の許可を得てその格好をしてるの!」


 驚いたことにリーダーと思われるその女性プレイヤーは魔法少女の格好をしてた。

 声を掛けた女性プレイヤーだけではなく後ろに控えた4人も魔法少女の格好だった。

 ただ装備は魔法少女の格好の上に、革の胸当てだったりプレートメイルを着こんだりしてたが。

 リーダーと思わしき女性プレイヤーは腰に片手剣を下げ、鉄の胸当てに鉄の籠手と鉄の脛当てと言った戦士(ファイター)タイプの装備をしていた。


「えーっと、わたしに言ってるのかな?」


「そ・そうよ! そこの魔法少女の格好をした貴女よ!」


 女性リーダーは俺にビシッっと人差し指を突きつける。


「あたしたちは舞姫様親衛隊よ! 最近、実力もないくせに舞姫様と同じ魔法少女の格好をする人が多いわ。

 実力もない魔法少女の所為で舞姫様まで「魔法少女の格好の元となる舞姫も弱いんじゃない?」と言われることを危惧しているの。

 よってあたしたち親衛隊が、舞姫様と同じ魔法少女の格好をするのに相応しいかの許可を出すことにしたのよ!」


 とんでもない理屈に俺は呆れてしまう。

 鳴沢の方を見ると同じように呆れかえっている。むしろ俺の方を見て「貴女の指示なの?」と言ったようなジト目で見てくる。

 とんでもない誤解でございますぞ、姫。


「えーと、あんた達に従う理由は無いけど、その許可はどうやってとるの?」


騎士(ナイト)の玲奈と勝負して勝てたら許可を出すわ」


 親衛隊隊長は後ろに控えた1人の女性プレイヤーを指さす。

 指を差されたのは170cm位の身長で、プレートメイルに両手剣を持った騎士(ナイト)の女性プレイヤーだった。

 プレートメイルの隙間からはみ出てる魔法少女の服が凄くミスマッチに見えるんだが。


「んー、その勝負に勝とうが負けようが従わなければどうなるの?」


「そ・その時は然るべく処置をさせてもらうわ」


「然るべき処置ってPKの事?」


 鳴沢のPKの言葉に俺はギョッとする。

 こいつらそこまでやばいやつらなのか!?


「この親衛隊にはPKの噂が流れてるわ。フェル、貴女自分の掲示板見てないの?」


 俺の表情を見て情報を掴んでないことが分かったんだろう。鳴沢は小声で話しかける。


「あー、変な名誉会長が居るから自分のとこの掲示板は見ないようにしてるんだ」


 鳴沢は「あー、なるほど」と納得する。

 俺らのやり取りを気にした様子は無く、むしろ鳴沢のPK発言に少し考えるそぶりを見せてこちらに気が付いていなかったようだ。


「そ・そうよ! 必要とあらばPKも辞さないわ! 全ては舞姫様の為よ!」


 おいおいおい! PKを認めちゃったよ、この娘。流石に俺の二つ名をこんな風に使われるのは拙いな。

 それにしてもこの娘、何でどもりながら会話してるんだろ? それに態度に違和感を感じる。無理をして虚勢を張ってるような・・・?


「このことは剣の舞姫(ソードダンサー)は知ってるの? そもそも親衛隊そのものに剣の舞姫(ソードダンサー)は許可を出しているの?」


「も・もちろん舞姫様に許可を貰っているに決まっているじゃない!

 ま・舞姫様も強き者にこそ魔法少女の姿が相応しいって言ってたわ!」


 うん、どう見ても様子が変だ。ここが現実(リアル)なら彼女の顔は冷や汗を流していただろう表情をしていた。

 そして鳴沢は「そんなこと言ったの?」みたいなジト目で俺を見てくる。

 俺は思わず顔を横に振る。いやだなぁ、そんなこという訳ないじゃんか。

 俺を信じてくれないのか!? と言ったお約束の葛藤はともかく、そろそろ茶番を終わらせるとしよう。


「えーと、さ。剣の舞姫(ソードダンサー)の名前を使うんだったら本人の顔くらい知っておこうよ」


 俺の告白に親衛隊のメンバーは一瞬何を言われたのか分からない表情をする。


「あー、わたしがフェンリル。剣の舞姫(ソードダンサー)であり、あんた達の言う舞姫様」


 暫く怪訝な顔をしてた親衛隊隊長は、俺の言葉の意味を理解すると突然その場で土下座をし始めた。


「ひぇぇぇぇぇぇぇぇーーー! ご・ご・ご・ごめんなさいーーーーーー!! ゆ・許してくださいーーー!!」


 突然の見事な土下座っぷりに俺達は面を食らってしまう。俺達だけでは無く、親衛隊メンバーも呆気にとられてしまう。


 隊長の名前は舞子と言い、当初は普通に剣の舞姫(ソードダンサー)に憧れ魔法少女の格好をしていた。

 ところがある日、臨時PTを組んでた男から魔法少女の格好を馬鹿にされた。魔法少女の格好だけならまだ我慢できたが、その格好の大元の剣の舞姫(ソードダンサー)まで馬鹿にされると流石にキレてしまい、SA戦闘(セーフティエリア戦闘=街中でのダメージを受けない戦闘)を仕掛けコテンパンにのしたらしい。

 男は馬鹿にしたことを謝罪し、舞子もやり過ぎたことを謝ったのでその場は収まった。

 だけどその時から舞子の魔法少女の格好をしたプレイヤーを見かけるとイラついた。

 あんた達が弱いから舞姫様も馬鹿にされるんだ、と。

 そうして他の同じ思いをしたメンバーを集め親衛隊を結成したのだと。


「けどPKはやり過ぎでしょう」


「も・も・もちろんそんなことは一切してません! ただの脅しです、ハッタリです!」


「本当に?」


「はい! 舞姫様に誓って!」


 んー、嘘を付いてるようには見えないな。どもりながら話してたのはPKの虚勢を張るためと、その後ろめたさからみたいだな。

 そうなると彼女はただの熱狂的な信者だ。ただ熱狂的過ぎて周りが見えなくなりそうなタイプではあるが。


「ベル、どう思う?」


「彼女は嘘を付いてるように見えないわ。だからこの話はここで終わりね。

 ただし親衛隊は解散、二度と剣の舞姫(ソードダンサー)の名前を騙らないこと。いいわね」


「は・はい! もちろんです!」


 舞子は再び土下座をして謝罪をする。

 それに倣い親衛隊メンバーも土下座をする。

 これで親衛隊騒動も終わったように見えたが・・・




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「アイスブラスト!」


「ウォータースラッシュ!」


 俺の放った氷の散弾と鳴沢の放った水刃が10匹ほどのスライムを薙ぎ払う。

 攻撃を受けたスライムはHPがゼロになり光の粒子となって消える。

 朝は予定外の出来事が起こったが、予定通り俺達は魔の荒野で資金稼ぎに精を出していた。


「ふぅ、今日一日だけで結構稼げそうだね」


「うん、この調子なら魔法アイテムもついでに買えそうだね」


 当初の予定では2つの探知スキルを買う予定だったが、折角魔法都市に居るんだから役に立つ魔法アイテムも買おうということになった。

 当面の目標としてはショートカットポーチだ。

 ポーションなどのアイテムを使おうとしたらメニュー画面を開いてアイテムストレージから選択をし、実体化して使用しなければならない。

 当然戦闘中でもメニュー画面を開かなければならず、アイテムを戦闘中に使用するには難易度が高い。

 だがショートカットポーチなら手を突っ込んで欲しいアイテムを念ずればすぐさま取り出せるという便利な魔法アイテムだ。ただし消費系アイテムに限るが。

 だが消費系でも十分メニュー画面を開く無駄をロスできる。


 朝からぶっ続けで狩りをしていた俺達はここらで一時休憩を取る。

 VRなのでHPが減らない限りは肉体的には問題はないが、精神的には結構疲れていたりする。


「ねぇ、ベル。臨時PT募集で思ったんだけど、掲示板で私の名前で募集するんじゃなく、ベルの名前で募集するのはどうなのかな?」


 鳴沢にはここに来るまで王の証について説明はしてある。

 さすがに所有者の死が王の復活につながるので、なるべく複数の王の証の所有は避けるようにするのに同意してくれている。

 俺はすでに2つ所有したりしてたりするが。


「・・・その考えは無かったわね。うーん、掲示板で募集するのは最後の手段にしましょ。

 掲示板だと不特定多数の人が見るから募集の人選や時間が掛かりすぎると思うの。

 当面は冒険者ギルドで人を見ながらの方がいいと思うわ」


「了解。まぁ、どうしても駄目だったら固定PTでもいいと思うわ。王を倒した後PTメンバーを入れ替えて戦闘をしない人に王の証を渡せばいいしね」


 PT用アイテムストレージに入っている王の証は所有者が決定していない。そのことを利用した裏ワザみたいな方法だ。

 その上で戦闘をしない人に王の証を渡せば死亡による王の復活を心配する必要もなく、複数の王の証の所有を避けられる。


「んー、それはやめた方が言いと思う」


「え? なんで? いい方法だと思うけど」


「えっとね、あたしが考えるのは王の証はそれ相応の実力者が持つべきものだと思うの。

 スキルの有用性は当然として、王の証そのものが必要なことがあるかもしれないから。

 例えば今は空欄だけどAの王を倒すには25の王の証が必要になった時、実力者が持っていないとやばいでしょ?」


 あーそうか、王の証そのものが他の王討伐に必要な時が出てくるかもしれないか。

 もしかしたら王のスキルそのものも王討伐に必要な時が出てくるかもしれない。


「うーん、そうなるとやっぱり臨時PTで王を倒していく方法しかないか~」


「だね、急がば回れ。裏ワザばかり使って楽をしてると今に苦労するわよ」


 なかなか辛辣なことを言う。俺の使ってる魔法剣や輪唱呪文は言わば裏ワザみたいなものなんだけどな。




「ウインドランス!」


 休憩も終わりさぁ続きをと思ったところに魔法攻撃が襲い掛かる。

 突然の魔法攻撃に俺は始源竜の剣を振るい弾き飛ばす。

 魔法攻撃は普通に剣とかで斬り防ぐことが出来る。もちろん剣の耐久力は極度に減るが。


「ほぉ~、不意打ちの魔法攻撃を防ぐのか。なかなかやるじゃねぇか」


 俺達に攻撃を仕掛けてきたのはあの親衛隊メンバーの玲奈と呼ばれた騎士(ナイト)だった。後ろには革鎧を着た2人の魔法少女が控えていた。


「ふぅん、やっぱりね。親衛隊事件の裏に貴方達の存在があった訳ね」


「え? 何? どういうこと?」


 鳴沢の思わせぶりな発言に俺は戸惑いを覚える。


「PKの噂まで流れてる親衛隊事件なのに、あの舞子が隊長にしては話が違いすぎると思ったのよ。

 そう考えるとこの事件には裏があると思ってね。親衛隊を解散させられてそのままで済むと思ってなかったのよ」


「ちょっとー! そういう事は言ってよーー!」


 うぉおい! 鳴沢、こっちには奇襲される心の準備が備わってないんだぞ!?


「しょうがないでしょ。あたしもそこまで確信があった訳じゃないんだし」


「はは、そうお前の言うとおり親衛隊を裏で操ってたのは俺様よ。

 あの頭の悪いくせに熱狂的な信者の舞子をそそのかしてな。

 悪い噂は全部あいつに被せて、俺達は裏で従わないやつをPKしてたって訳さ。

 PKはいいぜ~。全ドロップしたアイテムを売りさばけばかなりの儲けになる。

 ああ、PKの事は舞子は知らないよ。あいつは未だにPKされていなくなったプレイヤーが実力不足を知って恥ずかしがって自分の前に出てこれなくなったって信じてるよ」


 えーと、聞いてもいないことをペラペラしゃべりだしたよ。

 悪巧みしてる人って自分のこと自慢したい人たちばかりなのか?

 と言うか玲奈って騎士(ナイト)は俺様言葉使いなのな。


「あのさ、デスゲームでPKってどういう事か分かってるの?」


「はは! デスゲームでPKは人殺しってか!? 本当に死んでるかなんて分からないじゃねぇか。ここはゲームだぜ。俺達はゲームのルールに従ってプレイヤーの身体(アバター)を倒してるにすぎねぇよ」


 はー、ネット小説とかでお約束のセリフだね。

 と言うことはいくら説得しようと無駄なことだ。もっともこういう思考回路の人を説得しようとは思わないけどね。


「お前ら随分と余裕に見えるが、言っとくけど俺様には剣の舞姫(ソードダンサー)のハッタリは効かねぇぜ」


「ハッタリ?」


「ふん、本物の名前を出せば俺達がビビるとでも思ったのかよ。

 ああ、舞子には効果がてきめんだったが、あいつは馬鹿だからな。ま、お前らをPKした後にはお前らが嘘を付いてたって言いくるめてまた親衛隊の復活だ」


 あー、親衛隊から逃れるために本物のふりをしたって思ってるのか、こいつら。

 何でマジに本物が現れると思わないのかね。ここまでお約束が来れば分かりそうなものだけど。

 つーか、こいつらの言い分聞いてると段々腹が立ってきた。


「ねぇ、ベル。こいつらぶちのめしたいけど、いい?」


「構わないわよ。あたしも聞いてて不愉快だし。

 ただし、貴女はあれ(・・)があるから死なないようにしなきゃだめよ。MOB戦とPvPは違うから」


 どうやら鳴沢もかなり不愉快らしい。自分が予想していただけに当たってほしくない部分もあったのだろう。


「おいおいおい! 2対3だぜ? 勝てるつもりでいるのかよ。しかも後衛職のみのくせして。今なら大人しく有り金とアイテムと装備を全部差し出せば命だけは助けてやるぜ?

 ああ、もちろんこの事は他言無用も追加条件だけどな」


「ご忠告どうも。生憎勝つつもりでいるのでね。こちとら本物の剣の舞姫(ソードダンサー)なので負けるつもりも更々無いし」


「はっ! まだ言うか。いいぜ、そこまで言うんならぶっ殺してやるよ!」


 両手剣を構えた玲奈が剣スキルの戦技・スラッシュを放ってくる。

 俺は二刀流スキル戦技・十字受けで受け止める。もちろんそのまま受け止めても騎士(ナイト)魔術剣士(マジックソード)のSTRのステータス差が大きいので、こちら側にダメージが発生する。

 なので上手く打点を受け流してそのままステップで躱しながら追撃を仕掛ける。


 玲奈の後ろに控えていた2人の魔法少女は後衛職らしく、魔法で鳴沢を攻撃していた。

 鳴沢は2対1の状況にもかかわらず、詠唱破棄を駆使して上手く捌いていた。


「アイシクルランス!」


「ホーリーブラスト!」


「ストーンウォール! サイクロンバースト!」


 鳴沢は目の前に石の壁を生み出し後衛職2人の放つ魔法を防ぐ。

 そしてすぐさま石の壁越しに(・・・・・)追撃の魔法を放つ。


「くっ、なかなかやるじゃねぇか! なら、これでどうだ!」


 俺は要所要所で攻撃を当てているが、玲奈の攻撃は全てステップで躱している。

 躱しているとはいえ、流石にMOBとは違い剣が傍をかすめるだけで冷や汗ものだ。

 痺れを切らした玲奈は剣スキル戦技・スラッシュストライクと魔法のウインドカッターの同時攻撃を仕掛けてくる。


「バーストフレア・トリプルブースト!」


 俺は左手の飛翔竜の剣で風の刃を弾き、右手の始源竜の剣の魔法剣で玲奈の両手剣を攻撃する。

 魔法剣の攻撃を受けた玲奈の両手剣は耐久力が無くなり消滅する。

 もちろん始源竜の剣も同じだけ耐久力を削られるが、さすがユニークアイテムの位は伊達ではない。耐久力にはまだ余裕がある。


「なっ!? 魔法剣!? こ、こいつ本物なのか!? ルミア! こいつらを痺れさせろ!」


 両手剣を破壊された玲奈は俺から距離を取り、すかさず後衛に指示を出す。

 指示を受けた後衛の一人ルミアは麻痺毒の霧の呪文を唱える。


「パラライズミスト!」


 あたり一帯に紫色の霧が発生する。

 まずい、この霧は低確率ではあるが毒2状態――麻痺毒――に掛かる恐れがある。

 だが俺の後衛は実に優秀だ。すかさず追撃の呪文で麻痺毒の霧を吹き飛ばす。


「サイクロンバースト!」


 霧を吹き飛ばすと同時に玲奈たちにもダメージを与える。

 PKをされたからと言ってこちらもPKをするわけにもいかず、この戦闘をどうやってけりをつけるか悩んでいたけど、そうか痺れさせるという手があるか。


 圧縮爆風で転がされた玲奈の傍にハイステップで近づき、こちらも低確率ではあるがダメージと同時に麻痺効果がある雷属性の魔法を放つ。

 ただしこの魔法は射程距離が極端に短いため、ほとんどゼロ距離でしか発動しない。


「スタンボルト・トリプルブースト!」


 無論、確率を上げるために魔法の重ね掛けをする。まぁ効果が無くても麻痺2状態――全身麻痺――に掛かるまで何度も攻撃しますけどね。


「ぐぅ!」


 電撃を受けた玲奈は全身を硬直させて身動きが取れなくなる。

 上手い具合に1度で麻痺効果が出たようだ。


「さて、悪いけどあんた達も麻痺らせてもらうよ」


 続けざまに後衛2人も麻痺状態にして動きを封じる。


「ふぅ、とりあえずムカついたからぶちのめしたけど、こいつらどうしよ?」


 麻痺状態にしたといっても、そんなに長い時間効果が続くわけじゃない。

 すると鳴沢はアイテムストレージから縄を取出し玲奈を縛り上げていた。


「随分と準備がいいのね・・・」


「冒険者ギルドではモンスターの捕獲依頼もあったりするから常備してるのよ。ほらそっちも縛り上げてね。口も塞ぐのも忘れないでよ」


 鳴沢に言われるままに残りの2人を縛り上げていく。

 ・・・よく考えれば女の子を縛り上げるなんていけない事をしてるみたいだな。

 いやいや、悪いのは向こうだ。俺は何も悪くはない。


「さて・・・、改めてどうしよ?」


「うーん、あまり気が進まないけどギルド『軍』に引き取ってもらいましょ。

 彼らは特殊クエストをクリアして王城の地下の牢屋を使用できるのよ。犯罪者やPKを閉じ込めておくのに最適なんだけど、そのせいで増長したみたいで皆に嫌われちゃったみたいだけどね」


 あー、掲示板にも載っていた『軍』か~。

 けど、あいつらのあの態度じゃ不安すぎるんだけどなぁ。


「全部が全部あんなのじゃないわよ。少なくともあたしの知り合いはまともだよ。でなければギルドとしても立ち回っていかれないわ。

 連絡取るからちょっと待ってて」


「だってさ。悪いけどあんた達はデスゲームクリアまでそこにいてもらうよ」


 足元に転がってる3人に語りかけるも、向こうは猿轡をされてむーむー唸ってるだけだ。

 もちろん猿轡を外して言い訳を聞いてやるつもりはない。


 暫くするとリーダーと思わしき騎士(ナイト)風の女性と忍者(ニンジャ)の格好をした男と魔導師(ウィザード)風の男の3人組が馬車を引きつれて現れた。

 どうやって親衛隊3人を運ぶのかと思ったら馬車とは恐れ入った。

 どうやら鳴沢の『軍』の知り合いとは女騎士(ナイト)らしく、軽く会話をしたあと親衛隊3人を馬車に詰め込み都市の方へ戻っていった。

 後のフォローとしては『軍』の方でも掲示板に親衛隊の事を書き込んでおくそうだ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ギルドメンバー募集スレ


777:ロックベル

 ギルド『大自然の風』を設立しました

 随時ギルドメンバーを募集しております

 加入希望の方はギルドマスターのロックベルか、サブマスターの景虎までおねがいします


778:愚か者の晩餐

 おお、遂にロックベルもギルドを設立したか


779:Justice

 ここんとこ軒並み攻略組と呼ばれるPTがギルド設立してるね


780:シンドバット

 >>777 つーか『大自然の風』って名前スゲーなw


781:オルカ

 >>780 そんなこと言ったら他のギルドの名前の方がスゲーぞw


 『神聖十字団』『GGG』『忍者疾風伝』『魔女の特急便』『9人の侍』などなどw


782:華麗なる管理人

 ここはギルドメンバー募集スレです

 雑談は控えてください


783:オルカ

 サーセン


784:シンドバット

 すまん


785:カンザキ

 ギルド『ELYSION』では新規メンバーを募集しています

 職業・レベル・性別問いません

 常識ある方であればどなたでも歓迎します

 連絡は私カンザキか天原までおねがいします


786:怒り新人

 僕はギルド『エヴァンゲリヲン』初号隊隊長、怒り新人です!


787:彩奈美麗

 ギルド『エヴァンゲリヲン』零号隊隊長、彩奈美麗


788:双竜・明日香・嵐昏

 私はギルド『エヴァンゲリヲン』弐号隊隊長、双竜・明日香・嵐昏よ!


789:シ者カヲルン

 ギルド『エヴァンゲリヲン』伍号隊隊長、シ者カヲルン。よろしくね


790:碇言動

 ギルド『エヴァンゲリヲン』総司令の碇言動だ

 ギルド『エヴァンゲリヲン』では新隊員を募集している

 加入を希望する者は私か作戦指揮官の葛城サトミンまで連絡を寄越すように


791:Justice

 ・・・なにこれ?www


792:シンドバット

 つーか参号隊と四号隊はどうなったwww




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