16.ベルザと見えない王
主人公、魔法少女になる
主人公、魔法剣を発明する
主人公、26の王の1人『始まりの王』を倒す
デスゲームが始まる
主人公、『水龍の王』を発見する
主人公、臨時PTを募集する
臨時PTで『トロールの王』を倒す
臨時PTで『水龍の王』を倒す
主人公、騎獣を手に入れる
主人公、戦闘をしないで『月影の王』をクリアする
・・・now loading
「お姉ちゃん、ありがとう。お姉ちゃんのおかげで月神の巫女になることが出来たよ」
月神様が去った後、放心状態だった俺にルーナちゃんが抱き着いてくる。
「ううん、ルーナちゃんが諦めないで頑張ったからだよ」
「でも、これでお別れだね。寂しいな」
俺の胸に顔を埋めて寂しそうにしてるルーナちゃんの頭を撫でながら優しく話しかける。
「永遠のお別れじゃないんだから。また村の近くに来たら会いに来るよ」
「ほんと!? 絶対だよ!」
ルーナちゃんはパッっと顔を上げ、嬉しそうに笑いかけながら再びギュっと抱き着いてくる。
そこで祭壇に上がってる神器が目に入る。
「そういえば、神器を返しに行かなきゃね」
「あ、それならあたしの仕事だよ。他の巫女に月神の巫女になった挨拶を兼ねながら、神器を返しに行くの」
「え? それじゃあルーナちゃん1人でプレミアム王国まで行くの?」
「あはは、流石に1人では行けないよ。
今、村に冒険者の人たちが居るの。その人たちに王都セントラルとプレミアム王国への護衛を頼んでるよ」
俺の心配は杞憂だったようだ。
「お姉ちゃんはこれからどうするの?」
「んー、特には予定は立ててないんだけど・・・
とりあえずウエストシティに行って26の王の情報を集めてみようかと」
今のところ26の王の残りの情報では『廃棄の王』『リザードの王』の2王のみ。
そろそろ他の王の情報が欲しいところだ。
まぁ、ウエストシティの転移門の登録もしたいってのもあるけど。
俺はそのままルーナちゃんと別れて村の宿に向かった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「よう、フェンリル」
「あれ? ロックベル? なんでアルテ村に居るの?」
宿には先客――見知った人物、ロックベル達が居た。
「何でって、王を目指して森に入ったのはいいけど『リザードの王』はいくら探してもみつけられないわ、『オークの王』・・・じゃない『オークの女王』については横取りされるわ、で成果がゼロなのよ。
なのでここでふて腐れてるって訳。」
七海がやってられないわ、と言った感じで飲み物を煽ってる。
テーブルの上を見ると大量の空いたグラスがあった。
どうやらやけ酒をしてるようだ。
「はは、まぁ、そういうこった。
気晴らしに息抜きでルーナちゃんの護衛がてら噂のプレミアム王国まで行ってみようかって話になってな」
ロックベルも酒を飲んでいるようだが、他のメンバー程酔っていないようだ。
「ああ、ルーナちゃんが言ってた冒険者たちってロックベルの事だったの」
「そんなことより、お嬢ちゃん随分と活躍してるみたいじゃないか。
ついさっきも王の1人をクリアしたのにそんなそぶりも見せないで・・・
余裕か? 強者の余裕か? んん?」
リックが絡んでる。絡み酒か、こいつ。
「おい、リックやめろ。フェンリルにあたるな」
「だってよ~~、こんなロリで巨乳で萌えなのに物語の主人公みたいにどんどん活躍してるじゃねぇか~~~、悔しいじゃねぇか~~~~」
と思ったら泣き上戸だった。
テーブルに顔を埋めて泣きまくる。
「あー、一応言い訳しとくけど、さっきのCrescent――『月影の王』は戦闘無しでクリアしたから余裕ぽっく見えたのかもね」
「ほう、詳しく聞こうじゃないか」
景虎の目がきらりと光ったように見えた。
いや、ゲームだからそういう演出が無意識にされてるのか?
俺は『月影の王』クリアの経緯を掻い摘んで話した。
無論、月読の太刀の事は隠しておく。
そうそう、後で掲示板に『月影の王』の攻略方法を載せておかなければ。
条件さえそろえば、戦闘なしでもエンジェルクエストがクリアできるのは重要な情報だしね。
「なるほどね~~、上手くフラグを立てておくと今後の展開に有利になるのね~~~」
普段から間延びした口調で話してるので酔ってるのか、酔ってないのかいまいち分からないおーちゃんが頷いている。
「フェンリルの行動を見る限り、無理してフラグを立てようとするよりNPCでも普通の人として接しているといいのかもな。
それが結果としてフラグ立てに繋がるのかもしれん」
「だな。ここはゲームの世界であると同時にもう一つの現実だ。それを踏まえて効率だけでなく、対現実を見据えて行動すべきだろう」
さほど酔っていないブラッシュに景虎が相槌をうつ。
「ところでフェンリルはこの後どうするつもりなんだ?
俺達はさっき言ったようにルーナちゃんの護衛がてらプレミアム王国に行くが、その後そろそろギルドでも立ち上げようかと思ってな。
もしよかったら俺達のギルドに入らないか?」
「そうよ~~。フェンリルちゃんは女の子なんだから、ソロでプレイするのは危険よ~~~。ただでさえデスゲームでハラスメントコードが解除されて触り放題されるんだから~~~」
もう最近じゃ慣れてしまったせいで違和感が無くなってきたが、俺の身体は女の子の体をしてる。おまけに巨乳だし。
おーちゃんの言うとおりソロで行動するからには気を付けるべきことだろう。
「そうだ! セクハラをされたくなければ俺達のギルドに入るんだ!」
「何の脅迫よ、それ」
リックはさっきまで泣いていたと思ったら、突然起き上がっておかしな理屈でギルド勧誘を始める。そして七海はそれに冷静に突っ込む。
「あー、他のギルドに入る約束とかがあるなら無理にとは言わんが」
ロックベルの約束の言葉に俺はある人物を思い出す。
この世界で名前をヒントにお互いを探し当てたら一緒にプレイをしようとした人物――鳴沢鈴を。
デスゲームが始まった時点で鳴沢がINしていないことを祈りたいが、もしこの世界にとらわれていた場合、少しでも彼女の力になれればと思う。
少なくとも俺の持つチートスキル、オリジナルスキルは十分に役に立つはずだ。
俺が黙っていたのでロックベルは何かしらの事情があると思ったのだろう。
「どうやら先約があるらしいな。残念だが今回は諦めるとしようか」
「あ、いや、そういう訳じゃ・・・」
俺が思わず言い訳をしようとしたが他のメンバーに押しとどめられる。
「フェンリルがギルドに入れば百人力だけどね。あたしたちの目標はフェンリルでもあるんだから。
貴女がギルドに入ると頼ってばかりになりそうだから、別に無理して入れようとしてるんじゃないのよ」
「そうそう、いつかあんたをギャフンと言わせるためにも、あんたに頼りっぱなしになるとまずいからな」
「あはは~~~、ギャフンだって~~~。景虎っていつの時代の人なの~~~」
「え~~~~、お嬢ちゃん入れようぜ~。ロリで巨乳で萌えのメンバーが欲しいじゃんかよ~~」
「リックお前は黙れ。人にはいろいろ事情がある。無理に推し進めるとトラブルの元だぞ」
「と、まぁ、他のメンバーもこう言ってることだし気が向いた時でいいぞ。俺達はいつでも歓迎してるからな」
ロックベルの言葉にみんなが頷く。約1名ほど難色を示しているが。
ブラッシュの言葉通りPTやギルドには人間関係のトラブルが付き物だ。ましてや今はデスゲームと化したこの世界ではメンバーの募集は慎重にならざるを得ない。
強い『だけ』ではVRMMOは生き残れないのだ。
「ロックベル、みんな、ありがと。今はちょっと無理だけど、もし機会があったらよろしくね」
8月19日 ――19日目――
昨日あの後どんちゃん騒ぎの宴会となった。
笑い上戸、泣き上戸、絡み酒、エトセトラ。
おかげで今朝は二日酔いの状態での出発となった。
ロックベル達はルーナちゃんと一緒に王都セントラルへ向かい、俺はそれを見送ってからウエストシティに向かった。
アルテ村とウエストシティの間にはサンオウの森があるからMOBに遭わないようにするためには、王都セントラルに向かい、王都・プレミアム王国・ウエストシティの三差路で再びウエストシティへの迂回路が安全な行路だろう。
だが俺はあえてサンオウの森を直進で進み、MOBを倒しながらの経験値を稼ぎながらの行路を選ぶ。
この間まではヴァイ達と臨時PTを組んでいたため経験値もそれなりだったが、今はソロなのでかなりの経験値が稼げるからだ。
ただしこの方法はソロでサンオウの森を進むことが出来ることが前提だ。
PTを組んで役割を決め戦闘するのが普通だから、ソロでサンオウの森を突き進むのは自殺行為だったりする。
俺はしばらくソロでオークPT、トロールPT、リザードPTを倒しながらサンオウの森を進んでいたが、途中でその自殺行為のソロプレイヤーを発見した。
160cm程の身長に金髪のセミロング、巫女服の上から革鎧と巫女職に定番の錫杖を装備した女性プレイヤーが必死にオークPT――ソルジャー3匹、メイジ、アーチャーが1匹ずつ――に対峙してた。
――明らかに死亡フラグじゃねぇか。
そう思いながらも助太刀するためにオークPTに突入する。
流石にこのまま見捨てたら目覚めが悪すぎる。
いつも通り右手で右の剣を左手で左の剣を逆手で抜きつつ、拳銃のようにクルッと回しながら順手に持ち替える。
「サンダージャベリン!」
まずは遠距離用のアーチャーを仕留める。
そのままメイジに二刀流スキル戦技・三連撃を叩き込み、止めにアイスブリットの魔法剣で仕留める。
「助太刀するよ」
一旦オークどもから距離を取り巫女プレイヤーの前に立つ。
「あ、ありがとう。助かったわ」
俺はそのままオークソルジャーに斬りかかっていく。
剣舞で躱しながら左右の剣を振るっていく。
剣を振るいながら魔法剣で仕留めようと思ったが、その必要は無かった。
俺の攻撃の要所要所に援護が入るからだ。
「ブラストボム!」
俺の剣が当たる瞬間に彼女からの雷属性付与魔法の設置型魔法がオークソルジャーに掛かる。
俺の剣が当たると設置された魔法が弾け、剣と魔法のダメージが同時に掛かる。
連続で剣を振るうたびに、連続で魔法が掛かるのだ。――詠唱呪文なしに。
噂には聞いていたが呪文を一切唱えずに魔法を使えるチートスキル・詠唱破棄だ。
「スクエア!」
グアァァ――
最後の1匹を斬り捨てると、巫女プレイヤーは何とか一息をつく。
「はぁ、ありがとう。助かったわ。もうだめかと思った」
「こんなところに後衛職が1人で入るなんて自殺行為でしょ」
「そういう貴方だって後衛職じゃない」
「わたしは特殊な例の一つよ。剣の舞姫って聞いたことない? 少なくともわたしはソロでこの森を進めるだけの実力はあるのよ」
巫女プレイヤーは驚いたように俺を見る。
「貴方が噂の剣の舞姫なの!? 確かによく見れば魔法少女の格好をしてるわね」
「この恰好の事は言わないで。結構恥ずかしいんだから。
それよりわたしはウエストシティに行く予定なんだけど、貴女も一緒に来るでしょ?
まさかこのままソロで進むなんて言わないわよね」
「あはは、流石にソロでは無理よ。助けてもらった上に申し訳ないけど町までお願いね。
あたしはベルザ。よろしくね」
ベルザは握手を求めてきたので俺は右手を出してそれに応える。
「わたしはフェンリルよ。ウエストシティまでの間よろしくね」
俺の名前を聞いたベルザは剣の舞姫を聞いた時よりも驚愕の表情で俺の顔を凝視する。
暫く考え込むような顔をしていたベルザは口を開く。
「・・・ねぇ、もしかして大神君?」
その言葉を聞いた瞬間俺は思考が止まる。いや、混乱する。
「オ・オオガミクンッテ、ダレノコトカナ?」
思わずカタコトで返事をする。
だが彼女は俺をじーっと見たまま同じ質問をする。
「大神君でしょ?」
何でばれた!? いや、なんでこの子は俺の名前を知ってる!?
まてよ、俺がAI-Onをプレイしている事を知ってるのは・・・
約束をしたあの人を思い出す。
「あっ、もしかして・・・鳴沢・・・?」
鳴沢は名前を捻ったプレイヤーネームにしたと言っていた。
鳴沢の名前は鈴。鈴――ベル――ベルザ。
「やっぱり大神君だ! こんな危機の時に逢えるなんて。凄い偶然!
と言うか大神君が剣の舞姫!? 何か衝撃の事実なんだけど」
「あ、あーーー。何で分かった?」
鳴沢に逢えたのは喜ばしいが、流石にネカマがばれたのは恥ずかしい。
できればそのあたりは突っ込んでほしくないのだが・・・無理か。
「何でって、名前。前に言ってたでしょ。大神にちなんだ名前だって。大神――狼――フェンリルって連想できたの。
それに、仕草や雰囲気が大神君だったもの。見てれば分かるわよ」
見ていれば分かるのかよ。女子怖ぇ。
「それより大神君、なんで女の子なんかやってるの? VRって性別転換出来なかったよね? ・・・もしかして女装?」
「違う違う! 俺もよく分かんないんだけど、アドベントの読み取りエラーだと思うんだよ。
普通は性別転換なんて出来ないから面白半分にプレイしたらこんな状況になっちゃってね」
「あー、うん。こんな状況じゃ流石にきついわね。現実に戻ったら体の方に影響が出てたりしてね」
「ちょ! 怖いこと言うなよ。ただでさえこの身体に違和感が無くなりつつあるのに」
「あはは。あー可笑しい。まさかデスゲームになってこんなに笑える日が来るとは思わなかったわ。
・・・ねぇ大神君、ううん、フェンリル。約束通り一緒にプレイしない?」
そっか、今は笑っているけど本当はデスゲームになって不安だったんだ。
そう思えば今、この危機のタイミングで助けに入れたのは奇跡に近いかもしれない。ちょっと自分に酔った言い方をすれば運命なのかもしれない。
・・・うん、言いすぎた。恥ずかしい。
「もちろん。お互いを探し当てたら一緒にプレイをする約束をしてたからな」
こうして俺は憧れの女子とPTを組み、デスゲームと言う特殊な状況でゲームをプレイすることとなった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
鳴沢がサンオウの森でソロで居た理由は、今まで組んでいたPTに強姦されそうになったからだそうだ。
男3女3のPTを組んでいたのだが、デスゲーム開始から男共の態度が変わってきた。
デスゲームによりシステムの一部変更――ハラスメントコードの解除により露骨にセクハラをするようになってきたそうだ。
最初のうちは我慢していたが、男にあまり耐性のなかった女性プレイヤーが1人抜け、さらには男共のいい加減な態度に呆れてまた1人PTを抜けてしまう。
「何で、そうまでしてそのPTに居たの? 他の女の人と一緒にPT抜ければよかったじゃない」
「うーん、なんだかんだで一緒に苦労をしてきた仲だからね。もしかしたらまだやり直せるかと思って。
それに唯一の回復役のあたしが抜けたらそのPTの生き残りが難しくなるからね」
「セクハラする男共にそんな気を使う必要ないじゃん。
鳴沢お人好しすぎるよ」
鳴沢は「やっぱりお人好しすぎるか~」と乾いた笑いをする。
鳴沢のお情けでPTに居たにもかかわらず、男共は唯一残った鳴沢と『した』かったらしく作戦を練ってきた。
今までの事を反省し、真面目に攻略に取り組む宣言をする。その証拠にこれから『リザードの王』を4人で討伐しようと言ってきた。
鳴沢は少し不安を覚えたものの男共が真面目になってくれたのに目が眩み、4人でサンオウの森に向かうことになる。
森の奥の1人では引き返せない場所まで来たところで、男共は「やらせろ。でなければここでお前をPTから追放する。ソロで森をうろつくのは自殺行為だぞ。さぁどうする?」と言ってきたそうだ。
「あとは売り言葉に買い言葉で「あんたらにやられるくらいなら死んだ方がましよ!」って言っちゃって、こっちからPTを抜けてソロで森を抜けようとしたわけ」
「はぁ、無茶しすぎるよ。俺が奇跡的に通りかかったからよかったものの、下手をすれば死んでたんだよ」
「うん、今思えばちょっと考えなしだったなぁと思うね。
だからと言って男共に屈するのは論外だけど」
鳴沢が男共に強姦される姿、もしくは今襲われたオーク共に嬲り殺される姿を思い浮かべると胸糞が悪くなる。
今さらながらに俺は鳴沢の危機に助けれたのは奇跡的だと思う。
「なぁ、そいつらを一発殴っていいか?」
「いいわよ、もう。今回の件で完全に見限ったから。あの人たちを殴るだけフェンリルが損するだけよ。
それより、ここではあたしはベルザよ。リアルネームは禁止、いいわね」
まぁ、鳴沢がそれでいいというなら大人しく引き下がろう。
本当であれば鳴沢が一番そいつらに報復したいんだろうし。
「ねぇねぇ、フェンリルの事、フェルって愛称で呼んでいい? それと男言葉は禁止。その姿で男言葉で喋られると凄い違和感するのよね」
「愛称で呼ぶのは構わないけど、2人でいる時は男言葉は駄目なのか? なる・・・ベルは俺が女言葉で喋るのは気持ち悪いとか思わないのか?」
「まぁ、女言葉で話す大神君は嫌だけど、その姿だったら違和感ないから。
むしろ魔法少女の姿で男言葉を話す方がすっごい気持ち悪いのよね」
惚れた女の前で女言葉は抵抗があるんだがなぁ。
ああ、魔法少女の格好をしてる時点で男の尊厳も何もないか・・・
「う、気持ち悪いのか。分かった。なるべく女言葉で話すようにするよ。
はぁ、このまま慣れてしまって現実に戻った時まで女言葉で話しちゃいそうで怖いんだよなぁ」
「あはは、そうなったときはそうなった現実を受け入れるのもいいんじゃない?
新しい世界が広がるかもよ?」
おいおい、勘弁してくれ。そんな世界はまっぴらごめんだよ。
鳴沢は笑いながら現実の世界に戻った時の影響のあれこれを話す。
「ねぇ、ベル。そう言えばその男共はどっちの方向に向かったの?」
今俺達はウエストシティの方向、鳴沢が来た方向へ進んでいる。
鳴沢と売り言葉に買い言葉のやり取りで、男共は「だったら『リザードの王』に挑戦してやるよ!」と豪語したらしい。
もし男共がそのまま戻るのであれば、俺達の進行方向にそいつらが居るはずだ。
男共はただでさえ少ない3人PTで戦闘に苦労して進行速度が遅いはずなのに、俺達の進む方向には一向に見当たらない。
俺達は2人PTとさらに少ないが、もともと俺1人でも森を抜けるのには何ら問題はない上に、詠唱破棄スキルを持つ鳴沢が居るのだ。進行速度は並の速度ではない。
そろそろ見かけてもいい頃なのだが・・・
「まさか・・・本当にあの人たち『リザードの王』に向かったの・・・?
ねぇ、フェルお願い。一緒に王のところまで来てもらえないかな」
「もちろんいいわよ。その男共の泣き顔を拝んでやろうじゃないの」
俺はワザとらしくおどけて言うが、鳴沢は不安そうな顔をしている。
強姦まがいのことまでされたのに、何故そんなにその男共を心配するのだろうか。むしろそんな野郎共は死んでしまえばいいのだ。
と、そう思えれば賢い人生を送れるのだが、生憎そんな簡単に人の死を望むほど腐ってはいない。全く俺のせいではないとは言えデスゲームを始めてしまった負い目もある。
まったく損な性格をしているよ。俺も鳴沢も。
鳴沢が得た情報をもとに進んでいくが、その男共の姿は見えない。
「どうやら杞憂だったみたいね。流石に幾らなんでも3人で王に挑むほど馬鹿じゃないみたいね」
「そうね、あたしの思い過ごしでよかったわ」
鳴沢が安堵して一息ついた時、その悲鳴は聞こえてきた。
「だ・誰かーーーーー!! 助けてくれーーーーーーー!!!」
鳴沢には聞き覚えのあった声らしく顔が青ざめていた。
声のした方へ走っていくと、森の広場への入り口――何度も経験した王の存在するフィールドへ辿り着く。
広場の中央には2人が背を合わせ武器を構えている。
どうやら既に1人犠牲になってしまったようだ。
俺は入口のところで状況を伺おうとしたが、鳴沢は広場の中へ入ってしまう。
「馬鹿!! あなたたち何やってるのよ!! こんな人数で王に挑むなんて・・・!
死んでしまったら何にもならないのよ!!」
鳴沢は2人の前まで行き即時回復呪文を唱える。
仕方なしに俺も2人の傍まで行き武器を構えてあたりを警戒する。
だが肝心の王の姿が見えない。
「ねぇ、そこの2人。『リザードの王』はどこにいるの?」
俺の質問に戦士風の男は周りに怯えながら話す。
「わ、分からねぇ! そこらへんにいるのは間違いないんだ! 奴はいきなり消えやがった!!」
その言葉に俺はある言葉を思い出す。それは王の石碑にもあった文字でもある。
Invisible――不可視、すなわち『見えざる王』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
生産に関するスレ4
210:リンドバーグ
偶然とんでもないものを作ってしまったのだが
211:佐々やん
ん? 何を作ったんだ?
212:ルーク&ビショップ
>>210 ここで報告するからにはそれなりのものだろうね
213:リンドバーグ
ミスリルインゴットから裁縫素材であるミスリル銀糸が出来てしまった
214:ワーカーホリック
ガタッ!
215:ダードリック
ガタッ!
216:佐々やん
mjd!?
217:朱里
ΣΣ(゜д゜lll)
218:ブックオフ
>>213 kwsk!
219:リンドバーグ
POTを作っていたんだが間違ってミスリルインゴットをセットしてしまって
結果できたのがミスリル銀糸
当然ミスリル銀糸のレシピもゲット
220:ルーク&ビショップ
>>219 とんでもないものを作ったね
221:ブックオフ
だね、今までお洒落アイテムだった服が普通の防具として装備が可能になるね
222:リンドバーグ
ただ今のレベルじゃ成功率は低すぎるけどね
223:小悪魔
それでもとんでもない発見だよ
224:朱里
このあと裁縫は荒れるだろうね~
225:佐々やん
鍛冶も荒れるね
226:キリアム
>>225 え? なんで?
227:佐々やん
このあと銀糸を巡ってミスリルの値段が高騰するだろ?
当然鍛冶にも影響が出てくる
228:キリアム
ああ、なるほど
229:ルーク&ビショップ
今現在の主流がミスリル装備だろ?
ただでさえミスリルが少ないのに裁縫までにミスリルが流れたら荒れるね
230:小悪魔
222もこの後大変ね
231:リンドバーグ
ほえ?
232:ワーカーホリック
ああ、今現在ミスリル銀糸のレシピを持ってるのは231だけだからなぁ
必要スキルの詳細など細かいとこまで聞かれるだろよ
233:リンドバーグ
・・・引きこもります。探さないでください