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Angel In Online  作者: 一狼
第3章 Crescent
14/84

13.休憩と調合

8月15日 ――15日目――


「あーー、暇だーー」


 俺はアルテ村の宿屋で1人でごろごろしてた。

 Sの王の証のデメリットにより24時間スキルが使用不能のため一切の戦闘が出来ず、村の外にすら出ることが出来ないのだ。


 実際スキルが無くても戦闘自体は可能なのだが、俺の戦闘スタイルは魔法剣、輪唱呪文、ステップによる剣舞とスキルを駆使したものとなっている。

 そのためスキルのない俺は今現在戦闘に関しては素人同然なのだ。

 Lvアップしたステータスと今までの戦闘経験、それに武器性能を合わせればそこそこ戦闘が出来るのだろうが、なにせステップによる剣舞の癖が付いてしまっている。

 そうなると普通の戦闘では思い道理に動けずMOBの格好の的になってしまうのだ。

 まぁ、仲間の援護があればスキルなしでも戦闘は出来るのだが、他のみんなは今朝解散したからなぁ。


 昨日、『水龍の王』の討伐をアルテ村の村長に報告したところ、盛大に感謝されそのまま村全体での大宴会に発展した。

 当然俺達はこの大宴会の主役として村中の人々から感謝の酒を何杯も浴びせられた。

 VRの中で酔うことが出来るのかと疑問に思っていたが、デスゲームの開始により五感の設定もかなり変更されていることを思い出した。

 村人から勧められるエールを何杯も飲んでるうちに酔いが回ってくるのが分かってきた。

 実際、仲間の状態が既にへべれけ状態だったりする。


「うぉ~~~い、フェンリル~~~、飲んでるかぁ~~~~?」


「うふふふふふ、フェンリルさん~~~~気持ちいいですよ~~~~」


「あはははは、フェンリルさんが何人もいる~~~。いつの間に分身の術を覚えたんですか~~~?」


 ヴァイ、真桜ちゃん、ユニ君の3人はもう出来上がっていた。

 紺碧さん、マリー、ヴィオは大人の雰囲気を出しつつ楽しそうに飲んでいた。


「フェンリル、お前は秘密が多すぎる。隠し事が多すぎるんだよ! いきなり秘密をばらされるこちらの身にもなってみろ! その対処に四苦八苦するこっちの身にもなってみろ! おまけに戦闘中にオリジナルスキルをぽこぽこ開発するだぁ? お前の頭の中身はどうなっている!? 大体・・・」


「ヴァイってばいっつもデリカシーが無くって、分かってってやってるのかって思っちゃうのよ!? この間だって・・・ねぇ、聞いてるのマリー!」


「えぇ、えぇ、聞いてますとも。何故わたくしのこの優雅さを誰も分かってくれないのか。前のPTでも「もうお嬢様キャラなんて古いんじゃね?」なんてことがあったのですわよ。わたくしのはキャラじゃないとあれほど申し上げたのに・・・!」


 ・・・訂正、全員出来上がってました。


 うぉぉ、何だこれ。紺碧さんは俺に絡んでくるし、ヴィオは恋人のヴァイの悪口をエンドレスでマリーに話してるが、マリーはお構いなしに自分の優雅さを延々誰ともなく語ってる。

 よく考えたら俺らみんな未成年者じゃないか?

 いくらVRとはいえ良いのか? と言うかVRで酔っ払い機能まで再現するなよ。

 ああ、大人にしてみればこれもVRでの楽しみの一つなのか。


「フェンリルもこうして見ると普通の格好をした女の子にしか見えないよな~~~」


「普通も何も、わたしはれっきとした女の子よ。ヴァイは女の子差別をするつもりなの!?」


 ああ、いかん。俺も酔っぱらっている。平気で自分で女の子だって言ってるのに違和感がない。むしろ女の子であることをもっとアピールしたい。


 気が付いた時には夜が明けていて宿屋の部屋の床でみんなで雑魚寝をしてる状態だった。

 当然のごとく全員が二日酔い状態だったりする。

 二日酔いはAI-On(アイオン)では毒状態でもないのでネット小説のごとく解毒魔法をかけても回復はしない。

 VRで二日酔いまで再現しなくてもいいのに・・・


 俺達は二日酔いの状態でなし崩し的に大宴会になり、後回しになっていた『水龍の王』のドロップについて話し合った。


 Vの王の証

 『水龍の王』を倒した、または認めてもらった証。

 ※QUEST ITEM

 ※譲渡不可/売却不可/破棄不可

 ※王の証を所有した状態で死亡した場合、王は復活します。

 ※特殊スキル「Vortex」を使用することが出来る。

 効果:24分間、水属性魔法スキルの全てを使用することが出来る。

    24分間、水属性魔法スキルの消費MPが半分になる。

    特殊スキル効果終了後、24時間「Vortex」のスキルが使用不可能になる。

               24時間水属性魔法スキルが使用不可能になる。


 Vの王の証の特殊スキルが水属性魔法に特化していたため、使用後のデメリットを考えると魔法に影響のないマリーが持つことになった。

 今回もユニークレシピ&ユニークアイテムがドロップしたわけだが、レシピの内容がナイフだったため真桜ちゃんが持つことになった。

 真桜ちゃんには朝霧さんを紹介する。俺の名前を出せばボスドロップアイテムを作ってくれることを教える。


 クエストメニューに出てた『アルテ村を救え』は俺とPTを組んだ時にみんなにも出ていたので、村長から僅かばかりだがお金とアイテムが報酬と支払われみんなで配分する。


 この後も水中ボスが現れた時に再会を約束し、水龍の王討伐臨時PTは解散した。

 この後のみんなの予定を尋ねると、前と同じくヴァイとヴィオは2人でPTを組んでラブラブしていくそうだ。うん、羨ましくなんかない。

 マリーは前のPTに戻るそうだがこんなに長くPTを離れていて戻れるのだろうか?

 紺碧さんはこのままギルドに戻って王についての報告をする。もう一つの目標であった俺のスカウトが出来なかったので残念がっていた。

 その代わりに真桜ちゃんが『9人の女魔術師(ソーサレスナイン)』ギルドに入ることになり紺碧さんと一緒に行くこととなった。

 ユニ君は付与魔術師(エンチャンター)としての特性を生かして今まで通り臨時PTを渡り歩くそうだ。


 そして俺は1人になり今の現状に至る。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「『水龍の王』を倒したのが昨日の3時ころだから、あと5時間も暇なのか~」


 そこでふと生産スキルのことを思い出す。

 今まで戦闘ばかりだったので生産スキルは全く鍛えてない。やることもないから生産をするのも丁度いい暇つぶしになるだろう。

 そう言えば特殊スキルのデメリットも生産スキルに影響があるのだろうか?

 まぁ、試してみれば分かるか。


 今俺が持っている生産スキルは鍛冶、裁縫、薬師、彫金の4つ。

 生産して利益を出すことが目的ではないので鍛冶と裁縫は除外。

 朝霧さんの生み出した始源竜の剣と飛翔竜の剣を超える剣を生み出せるはずもなし。

 裁縫に至っては萌えスキルのせいでどんなおしゃれをしようとも魔術師(ソーサラー)系である以上、魔法少女になってしまうのでこれも除外。

 残るは薬師と彫金だが、今後のことも考えるとHP・MPの回復薬のポーションを作れる薬師をやることにしよう。


 村の雑貨屋に行きポーションに必要な素材アイテムを買い再び宿屋に戻ってくる。

 初期アイテムで配布されたフラスコや試験管、アルコールランプ等の一式が1つのアイテムになっている簡易調合セットをアイテムストレージから出して、調合セットのウインドウを開く。


 ウインドウに表示されるのは作成するアイテムのレシピ枠。

 これはプレイヤーが覚えてるレシピの一覧からセットされる。

 次に使用する素材アイテムをセットする枠が5つ。

 最後に作成アイテムの成功率を高める補助道具枠。

 鍛冶で言えばハンマー、木工で言えばノコギリ等の道具だ。


 とりあえず作るのは基本中の基本ポーションで、ウインドウにポーションのレシピをセットする。

 次に素材アイテムの薬草、中和水をセットする。

 補助道具は今回は必要ないので無視する。

 作成ボタンを押してポーションが完成する。


 無事作成できたところを見ると、どうやら特殊スキルは生産スキルまで影響はしないようだ。


 今度はMP回復のマジックポーションの作成を試みる。

 使用する素材は魔力草と中和水の2つ。

 まぁ、基本中の基本であるマジックポーションも簡単に完成する。


 2つの回復薬の作成を確認したので、もう1つ上の回復薬ハイポーションとハイマジックポーションの作成を試みる。

 Lv30を超えた上級職には初級のポーションとマジックポーションでは間に合わないのだ。


 だが2つの回復薬の作成には問題がある。

 ハイポーションとハイマジックポーションのレシピは覚えてないということだ。


 レシピを覚えるには3つの方法がある。

 1つ目はNPCかプレイヤーの店から買う、又は貰う等の他人からの譲渡売買。

 2つ目はモンスターからのドロップか宝箱からの入手。

 3つ目がレシピが無い状態で必要生産スキル、素材アイテムの条件を満たしての生産アイテムの成功。


 はっきり言って3つ目の方法はまず無い。

 上手くいけば誰も知らないアイテムレシピが覚えられるかもしれないが、レシピが無い状態でのアイテム作成の成功率は限りなく低い。

 おまけに失敗すれば素材アイテムも消滅するので何度も試すことすら出来ない。

 ただ逆に必要生産スキル、素材アイテムの条件が分かっていれば問題なのは成功率だけだ。


 レアレシピならともかく、ハイポーションとハイマジックポーションの2つのレシピは掲示板にも情報が公開されているので問題なく作れる。

 レシピのない状態で素材アイテムをセットする。

 ハイポーションの素材アイテムは薬草とスライムの胆と中和水の3つ。

 作成ボタンを押すが立て続けに5度も失敗。


「うぇ!? なんで!? 素材アイテムは合ってるはずだぞ!?」


 いろいろ確かめてみて肝心なことに気が付く。

 生産スキルのLvが全然たりてねぇ。

 今の俺はポーションとマジックポーションの2つを作っただけの薬師Lv1のままだ。

 ハイポーションとハイマジックポーションの生産Lvは最低でも20は必要だ。

 今の状態で成功したら奇跡ですよ。


 そんなわけでアイテムの続く限りひたすらポーションとマジックポーションの2つを作り続けて薬師のLvを上げていった。

 だがそう簡単にLv20になれるわけではないので調合は簡単に終わってしまった。

それでも薬師Lvは13となった。

 アイテムストレージに溜まった大量のポーション・マジックポーションを見て錬金術スキルが欲しくなってきた。

 錬金術スキルは〈分解〉と〈合成〉が出来るのだ。

 大量のポーション・マジックポーションを〈分解〉して元の素材アイテムに戻してもいいし、〈合成〉して少し強力なポーション・マジックポーションにしてもいいからだ。

 まぁ、無い物ねだりをしてもしょうがない。回復量が少量でも無いよりはたくさんあった方がいいに決まってる。


 そうこうしているうちにあっという間に時間が経ち、特殊スキルのデメリット効果が切れる時間になった。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 特殊スキルの効果が切れていつもの魔法少女の格好に戻った俺は、戦闘の感を取り戻すためサンオウの森に向かう。

 感をと取り戻すと言っても1日戦闘をしなかっただけなので、すぐにいつもの調子を取り戻す。

 ついでに『水龍の王』の戦闘で開発したオリジナルスキルの復習も兼ねて行った。


 2時間程戦闘を行いアルテ村に戻るとルーナちゃんが待っていた。


「お帰りなさい。お姉ちゃん」


「ただいま。わざわざ待っていたのは何か用事でもあるの?」


「うん。でもその前に改めてお礼を言わせてもらうね。

 お姉ちゃんのおかげで村も救われたし、あたしも月神の巫女を続けることが出来た。

 本当にありがと」


 ルーナちゃんはお礼を言いながら頭を深々と下げる。


「よかったね。月神の巫女を続けることが出来て」


「うん。それで今日は月神の巫女のことでお願いがあってきたの」


 ルーナちゃんの話によると月神の巫女の修業は最終段階に入っており、月神に認めてもらうために月神を呼ぶための神格顕現の儀を行わなければならない。

 神格顕現の儀を行うには3つの神器が必要で、各神器はそれぞれプレミアム王国にあるサンフレア神殿、ここルナムーン神殿、セントラル王国にあるブルブレイヴ神殿に祀られているとのこと。

 ルーナちゃんは儀式の為にここを離れることは出来ないので代わりにサンフレア神殿とブルブレイヴ神殿に神器を借りに行ってきて欲しいと。


 俺は今後の予定について考える。

成り行きとはいえ、俺は立て続けに3つの王を撃破している。

 他の王の情報は入ってきているものの、このまま連続で攻略に向かうよりも一時休憩の意味も込めてルーナちゃんのお願いを聞いてのんびり過ごすのも悪くはないのではないかと。


「うん、いいよ。ここんとこ立て続けに激戦ばかりだったからね。たまにはのんびりして他の国に足を延ばすのもいいかもね」


「いいの!? ありがと!

 これが他の神殿への書状よ。これを太陽神の巫女様と勇猛神の巫女様に見せれば神器を借りてこれるからお願いね」


 神殿への書状を預かりアイテムストレージへしまう。ついでにクエストメニューを見ると『ルーナのお使い』なるクエストが発生してた。

 丁度その時紺碧さんからメールが届いた。

 メールのタイトルには重要の文字が表示されていた。

 いやな予感がしつつもメールを開いてみる。


 タイトル:重要

 本  文:現在初心者広場にて王の石碑を確認。

      アルファベット順に26の王の名前が表示されていると同時に、

      攻略者(王の証所持者)も表示されている。

      当然フェンリルの名前も載っているので今後周りには気を付けるべし。


 ・・・おおぅ、いつまでも隠し通せるとは思ってなかったけど、まさか自分の手でばらす形になるとは思わなかったよ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


雑談スレ3


818:DRAGON

 誰か割のいいお金の稼ぎ方教えてください

 装備揃えたら一気に貧乏になってしまった・・・orz


819:クリスタル

 818は冒険者ギルドを利用していないのかな?


820:DRAGON

 >>819 何ですかそれ?


821:佐々やん

 ネット小説とかによく出てくるクエスト斡旋所みたいなところだよ


822:アルフレット

 ギルドって言うとMMOとかでよくあるプレイヤーが集まってできるグループみたいなのがあるけど、それとは別のギルドだね。


823:メガMAX

 システムギルドを冒険者ギルド、プレイヤーギルドをただのギルドと呼び分けてる。


824:クリスタル

 で、冒険者ギルドに行けば簡単なクエストでお金を稼げる。


825:DRAGON

 ほうほう


826:PERSONA

 ただしほとんど同じクエストが無いから気を付けるべし

 ゴブリンとか常時湧き出るモンスター退治のクエストは別だが


827:服部半蔵

 拙者この前プレミアム王国の街の様子を報告するだけで1,000,000ゴルドも貰えるクエストを受けたでござる


828:クリスタル

 >>827 なにそれ!?


829:DRAGON

 >>827 mjd!?


830:アルフレット

 >>827 なにその超おいしいクエストww


831:嵐を呼ぶ旋風児

 俺もプレミアム王国の物価の調査のクエストを受けた

 クエスト報酬は同じく1,000,000ゴルドだったww


832:クリスタル

 うそん!? あたしそんなクエスト見たことないよ!?

 見逃してた!?


833:PERSONA

 >>831 mjd!?


834:服部半蔵

 今プレミアム王国系のクエストは大人気でござる。


835:嵐を呼ぶ旋風児

 だな、クエストボードに張り出された瞬間に無くなるからなw


836:メガMAX

 そりゃあ、調査だけで1,000,000ゴルドも貰えるクエストがあれば人気出るわw


837:嵐を呼ぶ旋風児

 ただネックなのがプレミアム王国までの距離がありすぎることだな


838:服部半蔵

 うむ、徒歩で片道3日、馬で1日半も掛かる距離でござる


839:クリスタル

 うぁ、ちょっとその時間のロスは厳しいね


840:DRAGON

 その距離を見越しての1,000,000ゴルドの報酬なのかもね


841:佐々やん

 んー、それでもその報酬額は高すぎるような・・・

 なんかきな臭さを感じるなぁ



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