13『新スク派か旧スク派かで言えば旧スク派。……なんかゴメン』
13話目です。
待ってたかどうか知りませんがお待たせしました。
サブタイトルは本編にあまり関係無いです。適当なんで。
活動報告の方にも書きましたが1話1話が長くなってきてしまっています。
分けようかとも思いましたが面倒なんでそのまま投稿しました。すんません。
では13話目です。どうぞ~。
前回までのあらすじ。
メ○ルギアっぽいのを投げたよ。
終わり(キリッ。
ズンッッ!!
十トントラックでも衝突したかのような音を響かせながら、メ〇ルギアもどきが地面に激突する。すごい衝撃がここまで伝わってくる。まるで小規模な地震みたいだ。どんだけ重いんだよ。
グギャアアアッ!?
メ○ルギアもどきは、自分の身に何が起きたか分からないという疑問を悲鳴にしたような鳴き声を上げる。“なんじゃあ!? いったい何が起きたんじゃあ!?”的な事を言いたげな意思を感じる。気がする。
パラパラパラパラ……
砂ぼこりが舞い上がる。相当な衝撃だったのだろう。
近くにあったアトラクションはバラバラ、地面にいたってはマンガでしか見た事無いような凹みかたをしている。サ〇バイマンの自爆を食らったヤ〇チャの倒れてる地面みたいな凹みかただ。……別に分からなくてもいいんです。
ガラガラッ……
メ○ルギアもどきが体にのっている鉄骨や建物の残骸などを、軽々と押し退けながら立ち上がる。軽く頭を振ったりしているが、見る限りでは装甲に少し砂ぼこりがついているだけ。ほぼノーダメージっぽい。帰りたくなってきた。
フシュルルルルッ……!
メ○ルギアもどきが超睨んでくるんですけど。もしかしてもしかしなくても、怒っちゃった? 鼻息とか超荒いんだけど。てか超恐いんだけど。超帰りたくなってきたんだけど。
キシャアアアア!!!
ひとつ吼えると同時にメ○ルギアもどきが、全力でこっちに向かって走って来る。正面から見るその形相たるや“絶っっ対に殺す!”っていう決意がにじみ出ている。気がする。
「ここまで来たらやるしかない……、かかって来いやぁっ!!」
それに対して俺も覚悟を決め、気合いを声に出しながら、通常の三倍の力を両足に込める。そして、
キシャアアアア!
「やっぱり嫌ぁあああああ!!」
全力で真後ろに駆け出した。これを戦略的撤退と言う。仕方無いよ。コレは仕方無い。
「とうっ!!」
強化された脚力を生かして全力で風になる。
『ぅおいっ! 何をしているんだい!? 戦わないと君を送った意味が無いじゃないか!!』
通信を通して白衣さんがごちゃごちゃ言ってくる。何故逃げるのかだと?
「だって恐いんだもん!!」
命の懸かった恐怖の前に、びびりの覚悟など一瞬で折れるほど脆いものなのだ。参ったか。
『はぁ!? ついさっき“もう何も恐くない”ってカッコつけていたじゃないか!!』
「マジすんません!! 自分、チョーシ乗ってましたー!!」
強くなってもびびりに変わりは無い。それが俺の持論だったりする。ヘタレ? 俺の事ですが何か?
ズンッ!
ズンッ!!
ズンッ!!!
キシャアアアア!!
「ほぎゃああああっ!!」
全力で逃げてる俺をメ○ルギアもどきが全力で追う。名実共に赤い彗星並みのスピードを出している筈なのに、距離は開くどころかどんどん近づいて来る。
ここマッキーランドのパレード広場は、数々のレジャーランドの中でも世界最大級の広さを誇っている。現在行われている命賭けの追いかけっこ。名付けてリアル追いかけっこも、そこで行われている。
キシャアアアア!
「お助けーーっ(泣)!!」
そんなこんなでリアル追いかけっこが広場を二周目に入らんとした所で、メ○ルギアもどきが急にその動きを止める。
いい加減疲れてくれたのだろうか? 少なくとも俺は疲れた。体じゃなく、精神がね。常に命を狙われる恐怖で精神がすり減りすぎたようだ。いや、泣いてなんかいないよ。ちょっと涙目なだけ。
「諦めてくれた、って訳じゃなさそうかな……ハハッ……帰りたい」
突如停止したメ○ルギアもどきと正面から向き合い観察してみる。何故止まったのか分からない。不気味だ。
……今の内に少しでも離れておくべきだろうか。しかし、恐い顔してんなぁ。その形相たるや“おどりゃあ、地獄の底まで追い詰めてくびり殺してやるけんのぉ”的な意思を感じる。気がする。
警戒しながらそんなことを考えていると突然、
『フフフッ♪ どうしたの~? いつまでも逃げてばっかりじゃつまらないわよ~?』
広場になにやら異様に艶かしい大人の女性の声が響く。
びっくりして思わず周囲を見回してしまったが、その聞き覚えの無い声はどうやら俺の真正面──メ○ルギアもどきがいる方向かららしい。
「…えっ、誰? どこから? っていうか、えっ? もしかしてもしかするとメ○ルギアが喋っ……、ええっ!?」
混乱する俺。
いや。だって目の前にいるのはメ○ルギアもどきだけだし、間違いなくね? いやいや、ちょっと待てよと。女性の声だったぞ。
ということは……このメ○ルギアもどきメスだったんか!!
「℃¥$¢£%◎●※⊃!?」
もう大混乱である。
『フフッ♪ 落ち着いて~。コレはただスピーカーを通してるだけよ~? 本物はコッチコッチ』
またまた妙に艶かしい女性の声が聞こえた。言われたとおり、見れば確かにメ○ルギアもどきの頭にスピーカーらしきものがついているように見える。
気が動転し過ぎて気がつかんかったわい。
「紛らわしい真似を……っ」
とりあえず、間違いを指摘された事の照れ隠しをする俺。メ○ルギアもどきとの追いかけっこでは恥も外聞も捨てて逃げ回っていたが。やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいです。
メ○ルギアもどきを警戒しつつ、もう一度辺りを今度は入念に見回す。
すると、さっきまで浮いていた筈のヘリがいつの間にか広場の真ん中に着陸しているのを発見した。
ローターは未だに動いたままで、いつでも飛べるようにしてはあるようだが、少し無警戒すぎやしないだろうか?
この状況で着陸しているのが危ない事くらい俺でも分かるんだが……。
そう思って白衣さんに聞いてみる。なんか頭良さげじゃね? 今の俺。
『フム。確かに今までは警戒して空中からこちらの様子を伺っていたようだが。それがわざわざ降りてくるとは、どうやら奇しくも君が逃げ回ってくれたおかげで相手側の油断を誘えたようなのだよ。相手のヘリを落とす手間が省けたよ。P.S.君の頭は良くないよ。勘違いさ。だいたい君が逃げ回る必要は……(以下略)』
とは白衣さんの弁。っていうかまた心の声を読まれたんだけど。なんかごちゃごちゃと説教されたし。ええいっ! つまり結果オーライ、大雑把に言えば俺のおかげってことなのだ。
そうこう言ってる内に、着陸したヘリからは次々と人間が降りてくる。
「にー、しー、ろー……8人か。しかも全員銃持ってるっぽい」
赤いツノつきヘッドのおかげなのかどうか知らんが、ヘリからそこそこ距離があるはずのこの位置からでもかなり鮮明に見える。全員若い女の子だ。なかなかレベルも高いようだ。
ただ、
「何で水着……? しかもスクール……」
『ジーク、コッチに戻りなさ~い』
疑問を持ちつつ観察していると、再びメ○ルギアもどきのスピーカーから女性の声が聞こえてくる。
「ジーク? 誰?」
するとメ○ルギアもどきがグルルルッと低く唸った後、着陸したヘリの方向へゆっくりと歩き出した。
ジークとはメ○ルギアもどきの名前らしい。何か犬みたいだな。言うこと聞いてるっぽいし。
まぁ、ちょうどいい。俺もこれからはメ○ルギアもどきでは無く、ジークと呼ぶ事にしよう。
正直“メ○ルギアもどき”とか意外と文字数が多くていちいち書くの面ど……じゃなくて、いろいろとアレだったからすごく助かるわ。
などと考えている内に、いつの間にか俺もヘリの前に来ていた。無意識にジークの後を追ってついていってしまったらしい。何でついてってんだよ俺の馬鹿! 無意識のアホ~!
グルルルルルル……
近くで見ても、やっぱり若い水着少女達。そのすぐ後ろで、ヘリより少し小さいくらいのジークが低い唸り声を上げる。正直、水着の少女達よりもジークに目がいきます。エロか命かで言えばやっぱり命です。
銃を俺に向けたまま油断無く構えている水着少女達だが、すぐ後ろにジークがいて恐くないのだろうか?
グルルルルルルッ……
どう贔屓目に見てもジークは恐い。超恐い。間違ってもコワカワイイなんて新手の商業的価値のあるような生物では無いのだ。
そんなものが背後に立っていると言うのに、この少女達は気にして無いのだろうか? 勿論俺だったら光の速さで逃げる所だが、最近の女の子はきもがすわっているらしい。非常に羨ましいことだ。何故水着なのかは分からないけど。
と、銃を突きつけられている危機的状況にもかかわらず呑気な事を考えている俺。
コイツ、実は大物か? と考える方もいるだろう。
が、しかし。ここでよっく考えて欲しいのだ。
つい昨日までただの一般ピープルに過ぎなかった俺にとって、今現在のこの状況がどれだけ常軌を逸している状態なのか。
分からないか?
ならば考えて欲しい。君がもし、いきなり改造人間として世界制服の片棒担がされたり、水着姿の女の子達に銃を突きつけられたり、ましてやジーク(メ○ルギア的な大トカゲ)に遭遇したら何を思うのか。
答えは“考えんのめんどくせ、パス”だ。
混乱の極みだ。もう考えたりとかは放棄しちゃっているのだ、実際。
……脱線し過ぎたようだ、話しを戻そうと思う。
広場に立ちすくむ俺。水着少女達も俺に銃を向けたまま油断無く構えている。
混沌としつつ、かなり緊張感のある中、ヘリから更に人が降りてきた。
「フフッ♪ さっきまで逃げ回っていたのに自分からここまで来るなんて~、意外と勇気があるのね~?」
ジークのスピーカーから聞こえていたのと同じ声だ。
現れたのは派手な赤い色の高そうなコートにヒールのあるブーツ、赤い石のイヤリングを身につけた大人の女性。しかし、コートの中はやっぱり水着。赤のビキニだ。
見た目からしていかにもスク水ガールズとは格が違うカンジ漂う女性。薄く笑った口元が印象的な美人さんだ。
「あ、アナタは誰ですカ?」
普通にしたつもりだったのに声が裏返ってしまった。それに気付いたかは分からないが、彼女は薄い笑顔を絶やさぬまま応えてくる。
「フフッ♪ 私は“波波・I・シア”。これでも独立変革大隊のNo.3だったりするのよ~?」
意外な大物に一歩後ずさる俺。No.3っていったらあれじゃん。会社でいったら専務並みに偉い人じゃん! 水着だけど!
「フフッ♪ よろしくね~」
一見してのんびりとした印象の彼女──波波さんはそう自己紹介を済ませ、逆にこちらにも自己紹介を求めてきた。肩書きにビビったが、何だか優しそうで安心してしまった。水着だけど。
「えっと、俺は――」
グギャアアアッ!!
自己紹介をしようと口を開いた瞬間、その声をかき消すような鳴き声をジークが上げる。
キシャアアアア!!
「きゃあっ!?」
何が起きたのか、突然暴れ出したジークが、近くにいたスク水ガールズの一人に襲いかかろうとする。俺は咄嗟に駆け出し、なんとかジークの攻撃を止める事に間一髪成功した。少女も若干粗相をしてしまっているが無事だ。
それにしても、何故ジークが暴れ出したのか、ジークの脚を抑えながら考えていると
「フフッ♪ 駄目よジーク~。大人しくしなさぁい?」
波波さんののんびりした声と共に、バチンッ!! という音が響いた。同時にジークがその場に倒れ込み、ピクピクと痙攣し出す。
「!? いったい何を……」
発言から何か知ってそうな波波さんを見てみると、何か小さなリモコンのような物を手に持っていた。
「フフフッ♪ コレぇ? ジークの制御装置のリモコンだよ~。コレを押すとジークの体に高圧電流が流れるようになってるんだ~。ほらっ」
そう言って、波波さんがリモコンを操作すると、ジークが再びのたうち悲鳴を上げる。波波さんはソレをリモコンでカチカチと点けたり消したりしながら微笑っている。
「ちょっ、波波さん? ジークもう止まったし、もう良いと思うんだけど……」
「え~、どうして~?」
声をかけた俺に波波さんはやはり薄い笑顔で問い返して来る。若干、頬が赤いのは何故だろう。
「どうしてって、このままじゃあジークヤバイでしょ。なんか煙とか出ちゃってるし……」
波波さんを止める為に更に声をかける。電流で苦しむジークは、見ていて気持ちの良いものでは無かったからだ。
それに、
「……これじゃ死んじゃいますよ!?」
何故かやたらと胸が痛むのだ。
さっきまで殺る気で追いかけ回されてたのに。機械になった筈の胸がジークの悲鳴を聞くとズキズキと痛む。
「フフッ♪ 大丈夫よ~。ジークは丈夫だから、コレくらいやらないとお仕置きにならないのよ~。それに~、人間であれ何であれ。苦痛に歪んでいる時の顔は……」
薄い笑顔に相変わらずののんびりした話し方。全く調子を変えずに波波さんは言う。
「可愛いじゃない♪」
……確信した。ドの付くSだ、この人。格好といい言動といい変態じゃねぇか。
「フフッ♪ その顔サイコーぉ」
恐いよ~。
グギャアアアッ!!
波波さんがリモコンを操作すると、ジークがいっそう苦しそうな悲鳴を上げる。
電流の威力を上げたのだ。
「!? 止めろ!!」
耐え兼ねた俺が、波波さんの持つリモコンに手を伸ばす。波波さんはジークに気をとられていて、俺の伸ばした腕に全く反応出来ていない。“とれるっ!”と思った。
が、しかし
ダダダァァン!!
銃声と共に頭を重めの衝撃が襲い、ツノつきヘルメットが弾き飛ばされてしまう。
「のわわっ!」
慌てて両腕で頭を守る。
ズダダダダダァン!!
更に銃声。弾丸はキンキンと音を発てながら肩や脇腹、腕に当たる。腕の隙間から見てみると、どうやら少女達が撃ってるらしい。さっきの俺の動きが敵対行動だと判断されたのだろう、マジで殺る気だ。
「くっ! コイツぁヤベェッ!!」
全力でその場を飛び退き、少女達やヘリから距離をとり身構える。
すると、波波さんが制止をかけて少女達が銃をおろしてくれた。
「フフッ♪ コレが欲しかったの~?」
何で~? と波波さんが右手でリモコンをフリフリと振りながら訊いてくる。ジークへの電流は止まっているようだ。
「何でって、アンタなぁ! あのまま電気流してたらソイツが死んじゃうだろ!?」
ジークの体の丈夫さとかは詳しく分からないけど、ヤバそうだったから助けようとしたのだ。
ソレを波波さんに告げると…、
「ん~? 良く分からないけど、助ける必要なんてないよ~。というよりは、助ける程の価値が無いんだ~」
助ける程の必要や価値が無いとはどういう意味なのか。薄い笑顔のまま波波さんが言葉を続ける。
・・
「だってコレは──検体番号“G―9(ジーク)”は重大な欠陥を持った、失敗作なんだもの」
波波さんの言ってる意味がよく分からず。失敗作? と聞き返す。少女達は大人しい。
「そう、失敗作。 私たちが生物兵器開発のエキスパートだってことは勿論知ってるよね~?」
初耳ですが。
「あれ~知らないんだ~? 独†変†隊といったら生物兵器って言うくらいそっちの筋では有名なんだけどな~」
首を傾ける俺に、まぁいいや、それでね? と続ける波波さん。
「──私たちはこれからの大きな計画の為に、もっとタフで大きくて強力な戦力になる兵器を作ろうとしたんだ~。ソレがこのG―9! ……の筈だったんだけど~…」
未だ倒れているジークを見たまま黙り込み、何故か落ち込むようなジェスチャーをする波波さん。とりあえず、話の続きを待つ。
「……強くて獰猛で理想的な生物兵器になる筈だったのに。G―9にはそれはそれは大きな欠陥があったのよね~」
参ったわ~。と今度は困ったような顔で笑う。
「……その“欠陥”ってのは何なんですか」
なかなか要領を得ない話し方に思わず訊いてしまう。波波さんはフフッと笑い、
「ごめんね~、焦らすつもりは無いのよ~? でも失敗作なんて恥ずかしい話だから、つい~。」
オホンッ、とひとつわざとらしい咳払いをした後、くるくると右手の人差し指を回しながら波波さんは続ける。
「それで欠陥って言うのは~」
なんとなく未だ倒れたままのジークを見る。生きてはいるようだが、力無いその姿は見ていて痛々しい。
こんな仕打ちを受けるくらいに価値を落とす欠陥とはなんなのだろう。想像もつかない。
「──それはズバリ。“闘争心の欠如”なのよ~」
波波さんがコートのポケットに両手をつっこみながら説明し出す。
「このG―9は、私が遺伝子レベルから操作して造った生物の筈なのに、何故か気性が穏やかで争いを避けるような性格だったのよ~。コレがG―9の欠陥。 でもただ処分しちゃうのも悔しいし、こうして制御装置をつけて何とか戦場に出せないか面倒な実験してるんだけど、やっぱり駄目ね~」
更に続ける。
「他の項目はコンセプトを満たすどころか、期待してた以上の数値を叩き出してくれたのよね~。ホントに惜しいわ~。 でも兵器にとって“戦闘”への拒否反応なんて論外。やっぱり処分かな~って考えてた所に、貴方が来たの~」
つまり、
ジークは生物兵器として生まれながらも穏やかな気性を持っていたため、『兵器』としての“存在価値”が無く、ならば『生物』としての“意味”も無い。…と。
「貴方が来てくれたおかげで一応戦闘データもとれたし、コレはもう用済み。だから価値は無いのよ~」
バックアップも全部とってあるし~。と相変わらずの薄い笑顔で言う。
まるでおかしな冗談を言うようなニュアンスを含む波波さんの顔を見ながら、それ以上その口が動かないのを確認して俺は言う。
「──たった“それだけ”なのかよ……?」
波波さんの話を最後まで聴いていろいろと考えた結果、一番初めに俺の口をついて出たのが今の一言。
「それだけって……君~、ちゃんと話聴いてた~? 今話した事は兵器にとっては重要な欠陥なんだよ~? それこそ人間が日常生活の中で──ヒィッ!?」
波波さんが話しの途中でいきなり怯えたような悲鳴を出す。……いけない、気づかぬ内に睨み付けていたようだ。平常心平常心…。
「ふー……っ、俺だって分かるよ、それくらい。……ジークは失敗作でアンタらの造りたかったものと違ったんだろ…。 でも、たった“それだけ”でジークの存在価値は無くなっちゃうのかよ!? 違うだろ!?」
一度は落ち着いたつもりだったが、だんだんと怒りが込み上げてくる。今の俺はいったいどんな顔なのだろうか?
波波さんだけでは無くスク水ガールズ達まで腰抜かしているんだが。
「アンタらの勝手で生み出しておいて、望んだものと違ったらいらないなんておかしいだろ!?」
収まらない怒りにくさいセリフが次から次へと口をついて出てくる。
「──命なんだぞ!?」
バカで口下手な俺にはこれ以上に上手い言葉は出てこないが
「そんなのバカな俺にでも分かる!!」
そう締めくくって、一度深い息をする。波波さん達はカタカタと少し震えながら俺を見ている。何時だったか俺の目は自分で思っているよりも百倍恐いと、以前白衣さんに言われたが、ここまでとは……。
「フ、フフッ……何を言うかと思えば……」
波波さんが得意の薄い笑顔を作っているが、青ざめている上に声も震えている。無理してるのが一目で分かる。
「じゃあ望みどうりにしてあげるっ」
「……?」
波波さんがコートからさっきまでとは違うリモコンを取り出す。
「G―9! 強化薬注入!」
そう言ってリモコンを操作すると、
ギャアアアアア!!
「何だ!? ジーク!?」
突然起き上がり苦しみ出すジーク。
「強化薬はG―9の細胞を活性化させ、急激な進化を促す。その結果、通常何世代もかけて行なわれる進化を一瞬でとげる」 ギャアアアアアッ!!!
ジークの体が更に大きくなり、至るところからトゲのような物がはえてくる。「何のマネだ!?」
翼が生え、全身を包んでいた鉄の装甲が全て剥がれ落ち、その姿を変貌させていくジーク。
波波さん達に顔を向ける。が、いつの間にかヘリに乗り込んでいた波波さん。
「フフッ♪ 貴方の望みどうりソレの存在する意味を造ってあげたのよ~」
波波さんはさっきまでの綺麗な薄い笑顔では無く、卑劣に歪んだいやらしい笑いかたで話す。
「あの薬──強化薬は劇薬でね~。使うと言うこと聞かなくなるから使いたく無かったけど…」
ヘリが離陸し浮き始める。止めようとするが、
ギャアアアアアッ!!!
耳をつんざく悲鳴のような声。
「ふふっ」
血走り赤く輝く目をした黒い姿のジークが吠える。その姿は正しく──黒龍。
『フフフッ♪ じゃあ頑張ってね~』
高度の上がり始めたヘリの中で手を振る波波さん。ジークについていたスピーカーがその声を届けさせる。
ギャアアアアアッ!!!
ズドゥンッ!!
「のわっ!!?」
高度が上がっていくヘリを見上げていると、その場からいきなりとてつもない衝撃を受け弾き飛ばされてしまう。
「っ! ……くっ」
弾き飛ばされた空中で体制を立て直し着地する。
見れば、今まで自分の立っていた場所はジークの爪で深く抉られている。殺る気全開だ。
ギャアアアアアッ!!!
爛々と輝くジークの赤い目は俺を捉えて離さない。
漆黒の翼を大きく広げ、けたたましい鳴き声を上げる。
黒龍──ジークの姿を見て、俺はゆっくりと立ち上がり、
「さっきの続きだ……真剣にやってやろうじゃねぇか!」
今度は俺から走り出す。
「行くぞ!!!」
ジークはこの世に生まれたんだ。望まれたかどうかなんか関係ない。失敗作? だからどうした。
コイツはこの世に生まれて、ここで生きてる。それだけで奇跡みたいに凄いはずなんだ。
人の損得勘定なんかでコイツの価値は決められない。コイツの生き方はコイツが決めるべきなんだ。
コイツは絶対、俺が助ける。
お帰りなさいませ~。
どうでした~?
バトルシーンは次回になりましたが、雰囲気を上手く盛り上げようとしてみました。
成功か失敗かは知りませんが、とりあえず読んでくださった事に感謝~。
他の作者さんの自作小説を読んでみると、自分とは天と地程の差を感じてしまいますがマイペースを貫いていこうと思います。
そんなカンジでぬるぬると上達しつつ続けます。
次回投稿が何時になるやら分かりませんが、終わるまで書き続けますんで安心して下さい。
またお会いしましょう。ではでは~。