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11『一般人を書いてると、どんどんキャラが濃くなっていく』

 11話目です。


 新年初投稿になります。


 つっても間が開きましたね~。

 申し訳ないです。



 では11話目です。どうぞ。


 その日は朝っぱらから妙に騒がしかった。…よくよく考えてみればそれは、何かの予兆的な物だったのかもしれない。なんて、考えて見てもしょうがないんだが……。


 あぁ、なんでこんな事に……。







―とある都市―


~とある民間人の視点~



「あ~っ、やっぱりまだ寝てたっ!」


 日曜日の早朝、とても心地の良い眠りの国を楽しんでいた私は、現実の世界からの刺客により文字通り叩き起こされた。


「お父さん、朝だよっ! ぅ起きろーっ!!」


 ドッ。


「グハッ!?」


 鳩尾あたりに感じる重みに、軽く顔をしかめながらそこを見やると


「起きろーっ!」


 娘が全力で跳び跳ねていた。


 ドスッ


「グフッ! 分かったっ、分かったからっ」


「とうっ」


 ズドッ。


「グエッ! 起きるからっ! ってか、もう起きたからっ!!」


 最後の一発は確実に悪意を持ったジャンピングだった。私の鳩尾はトランポリンじゃないぞっ。


「早く顔洗って準備してってお母さん言ってたよ~っ。約束したんだからねっ、遊園地っ♪」


 とてつもなく上機嫌そうな娘は、それだけ言って部屋を出ていった。今年で六年生になった娘ではあるが、行動から幼さが未だ抜けない。



「っふあ~ぁ。……今何時よ?」


 正直欠伸が出る。


 今日は日曜日。時計で確認したところ現在時間7:30。健康な高校生男子であっても余裕で眠りの中にいるだろう早朝だ。


 当然のように私もいつもだったらこの日のこの時間は、布団の中で毒リンゴを食べた白雪姫並みに堂々と惰眠を貪っているはずなのだ。…寝起きの頭ではあまり詩的な言い回しは出来そうに無いな。


 では何故私がこの日のこんな時間に叩き起こされなくてはならなかったのか? ヒントは先程の娘のセリフの中にある。


「ん゛~っ。何で今日に限って晴れてんだよう」


 伸びをしながら空を確認してみる。空は快晴の青空だ。雲一つ無い。ちょっとした奇跡だ。


 というのもこの国の季節的な物で、雨が続いていたからこの時期に晴れはごく珍しいのだ。


 週末は仕事が無いということで、家でゴロゴロする予定だったのだが、娘の学校もちょうど大型連休に差し掛かっていたらしい。


 娘曰く


「暇ぁっ。どっか連れてけ~!」


 いや、実際こんなカンジで言われましたね。今年で六年生ですよ? もう少しくらい厳しく躾ておけば良かったかな?


 結局その後1時間ほど脅は…いや、説得が続き、娘が金属バットを俺の背後で素振りし始めた所で私が折れたのだ。


 誰に似たかなんて考える必要は無い。娘は母親似で間違いない。


 そんな訳で、日曜日“もし晴れたら”という条件のもと遊園地行きを承諾したのだ。


「晴れちゃったなぁ…」

 はぁ、なんで今日に限って……と、もう一度未練がましくため息をついた所で洗面台に向かうのだった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 現在9:00くらい。


 奇跡的に雲一つ無い快晴の下、私は家族と遊園地に来てしまっています。


「お父さん。私次アレ乗りたいっ♪」


 娘が指差す先にあるのは…、


 (きゃああああああ!!)


 けたたましい悲鳴を追想曲のように奏でる拷問器具……もとい、この遊園地で一番人気の絶叫マシーンだ。


 螺旋状のコースを上がったり下がったり飛んだり跳ねたり、重力だったり遠心力だったりをいろいろと無視したアトラクション。その名も“あっちへGO!!”。


 どこへGOさせる気だ。


 (うわあああああああっ!!)



「……パス」


「え~っ」


「え~っじゃねぇよ。お前さっきから絶叫系しか乗ってねぇじゃねぇか。そろそろ限界だわ」


 何を隠そう娘は極度の絶叫マシーンジャンキーなのだ……。俺には全く理解出来んが。


「限界? 私はぜんぜん平気だよっ?」


「俺がだよっ」


 しかも、必ず私が道連れにされる。三倍くらいの速さで寿命が近づいてくる気がする。


「絶叫系ばっかハシゴしやがって…、その上あんなヤバそうなのに乗るつもりか?」


 (ぎゃああああっ!!)


「見てみろ大の男が恥も外聞も無く泣き喚いてんじゃねぇか」

 (た 助けてくれーーっ!!)


 可哀相に……。


「あんなもんに乗ってみろ。今に泣き叫ぶ事になるぞ、……俺が」


 とにかく自分が既に限界を迎えている事を必死に伝えて見る。ちなみにお母さん、…もとい私の妻も絶叫系ジャンキーであり、そのレベルは娘を軽く凌駕する。あの人に付き合わされたら身心がもたない。例え娘でも。


 何だかんだ言ってあの人と比べれば娘など可愛いものでしかない。


 所謂、圧倒的に格が違うのだ。


「ふぅ~ん、まぁ確かにちょっと疲れたから、アレに乗る前に休憩っ。あそこに売ってるフランクフルトでも食べようか」


 少しは私の気持ちが伝わってくれたようだ。これがあの人なら首根っこ掴まれて強制参加だっただろう。実に恐ろしい。


「でも乗る事は決定なんだな……、まぁ休めるのは素直に有り難いが……」


「十本くらい♪」


「吐くぞ、流石に……」


「大丈夫、大丈……っ」


 フランクフルトの屋台に走って行こうとした娘が途中で立ち止まる。


「何だ、どうした? 大丈夫か?」


 娘の様子がおかしい事に気づき近づいてみる。


「……アレ」


 私の声に固まっていた娘が反応する。視線はどうやら空に固定されているらしい。


「アレ? ……ん?」


 娘の目線で視線をたどってみる。するとそこには確かに少し異様な物があった。


「ヘリ…か?」


 どうやらヘリのようだ。それも一般的なただのヘリコプターでは無い。いつかテレビで見た事がある軍用ヘリよりも大きな機体が黒く塗装され、圧倒的な威圧感を醸し出している。


「自衛隊……、じゃないな。黒いカラーリングなんて見た事無い………つーかこっち来てね?」


 黒いヘリがだんだんと近づいて、その大きさに改めて驚く。


「お、お父さんっ……」


 娘が私の服の端を掴む。珍しく恐がっているようだ。絶叫系のアトラクションを笑顔でハシゴするようなヤツが、こんな可愛らしい反応を見せるのは本っ当に珍しい。


 ……。


「恐いの?(笑)」


「……ギチッ(怒)」


 気づいたら一瞬でサブミッションが完成した。あれっ?◆おかしいな、お前さっきまで前にいたのに何で後ろにぃい痛たたたたた。


 (バラバラバラバラバラバラ…)


 そんなこんなやってる内にプロペラの音がめちゃくちゃ近づいていた。プロペラによって発生する突風が凄まじい。正に目と鼻の先だ。ヘリはフランクフルト屋台の真上あたりで空中停止している。


「『独†変†隊』?」


 黒いヘリの側面にデカデカとペイントされた『独†変†隊』の文字。聞き覚えも見覚えもさっぱり無い。


「お、お父さんっ、逃げようっ」


 つらつらと考えていると、娘が私の腕を引っ張ってきた。


「あ、あぁ。そうだなっ、とにかく離れようか……」


 一旦考えるのを止め、とりあえず厄介な事になる前にその場を離れようとヘリに背を向ける。


 が…。


   (グシャ!!)


 背を向けた方向から何かが潰されるような、とてつもない破壊音が聞こえてきた。


「何だ!?」



 驚いて振り返る私達。そこには、フランクフルトの屋台を踏み潰した機械みたいな恐竜のような怪物……所謂。



「……メ〇ルギア!?」


 版権とか著作権とか諸々を含めて危険そうな怪物がいた。


 (グルルルルルルッ……)


 いろいろな意味で危険そうな雰囲気を醸し出しているソレから、動物独特のうなり声のような音が聞こえてくる。全長にして約5メートルのこれは、どうやら生き物らしい。


   (ズシャッ…)


 そんな音と共にメ〇ルギアのような怪物が一歩踏み出す。若干水音を含んだような音に目を向けると、潰されたフランクフルト屋台から赤い水溜まりが広がっていた。……多分ケチャップだ。



「ひっ、怪獣っ。化物っ。お母さんっ」


 お化け屋敷でさえ動じない娘が動揺しまくっている。


 というか娘の中では怪獣や化物と一緒に出てきたお母さんはそれらと同列の生き物なのだろうか。私もまったく同意見だが……、こんなのお母さんに聴かれたらお仕置き確定だな。


   (ズシャッ)


 また一歩近づいて来た。しかし腰が抜けてしまったのか、娘はその場に座り込んだまま動こうとしない。


   (ズシャッ)


 娘を抱えて逃げようと判断するが、


「ッ!!」


 10メートルはあったはずの距離は、デカイ怪物の歩幅によって既に逃げる事は出来ない距離にまで詰められてしまっていた。



  (フシュルルルルルル……)


 1メートルも離れていない所で、怪物が私達を見下ろしている。


咄嗟に娘を庇う様に怪物の前に立ってしまったが、何の意味も無いのでは無いだろうか。勝算もなにも無くただ父親として、とか浅いこと考えての行動だ。マジ恐ぇ。出来れば逃げ出したいが、守らなければならないヤツが直ぐ後ろにいる。


「だ、大丈夫だ娘よ。コイツは俺が引き付けておく。お前は早くお母さんの所に行きなさい」


 背後に庇った娘を振り返りながらなるべく平静に話しかける。足はガックガク震えている、ばれていないか不安だ。


「はっ、えっ、でも……っ」


 娘が不安そうな顔を俺に向ける。安心しろ。私を誰だと思ってる。私はあの化物(妻)と結婚した男だぞ? こんなトカゲもどき、なんとも無いさ。


  (キシャアアアア!!)


 怪物が吼え、私の胴回り程はある太い脚が大きく振りかぶられる。


「心配すんな、早く行け!!」


「お父さん……っ」


 覚悟を決めた私の言葉に後押しされるように、娘が駆け出す。


 肩越しに娘を見送る。アイツは逃げ足だけは速いから、逃げきれるだろうと思う。そう願う。


 まぁそれも、私がこの怪物をどれだけ引き付けておけるかで変わってくるのだろうが。


   (ブゥン!)


 その音と共に丸太のような脚が迫る。


「グフッ!?」


 咄嗟に両腕を前に出し、後ろに全力で跳ぶ。マンガでよく見る回避方法を試してみたが、そんな器用な事一般人の私に出来るはずも無く失敗。


 ヒューン、ドサッ、ゴロゴロゴロと数メートルを転がり無様に倒れる結果になった。


「カハッ! ゲホッ!? ギ…ギッ」


 どうにか生きているようだが、全身が痛くて息も出来ない。両腕の感覚も無い。もしかしたら怪物に蹴られた時にスプラッタな事になったのかもしれないが、どっちにしろもう動けない。万事休すってヤツだ。


  (ガルルルルルル……)


 直ぐそこに怪物の足が見える。トドメを刺す気らしい。有り難い。


「グッ……時間稼ぎ、ゲホッ──成功だっ──馬鹿野郎っ」


 それだけ言って意識が遠のいていく。怪物の脚が私を踏み潰さんと迫るのを最後に私は目を閉じた。










「すげーや白衣さん! メ〇ルギアじゃね、コレ!?」


 私のシリアスな覚悟を揺るがすような、どこまでも呑気な声が聴こえてきた。



 お帰りなさいませ~。


 この小説はなんだかんだでぐだぐだと続いていきます。


 投稿遅くても心配しないで下さい。終わるまで続けますんで。


 ではまたの機会にお会いしましょう。



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