1『テンションに身を任せると・・・死にます』
初めての投稿になります
感想をいただけたらとても嬉しいです
それではどうぞ 行ってらっしゃいませ~
ヴィーーンッ
っていう、若干高めのエンジン音がメット越しの耳に響く。
天気は晴れ。雲一つ無い快晴。
ヴィーンッ
目に写る物がそれなりの速さで視界から後ろへと流れていく。
目に写る物──目が写す景色と言っても、
鬱蒼とした木、背の高い草、連なった山々、たま~に木の間に見える空……。
まさに田舎ってカンジの山道。実にカントリー。と言っても、道はアスファルトで舗装された道路である。
ヴィーンッビシッ
ここで聞こえるのは相棒の走音と、この時折弾く石ころの音だけ。
高校から5年は大事に乗ってきたスクーターである。それだけ長い付き合いをしているとやはり愛着もわくというものだ。名付けて“たっ君”。もはや相棒。その名も“TAK―KUN”。我が愛スクーター。
そんな訳で今日たっ君に跨がって向かってる先は実家だ。
何でわざわざ山の中にあるド田舎に帰るのか。
……所謂不況の煽りってやつだよね。(リスとトラに追われたって言えば分かるかこんちくしょう)
ヴィッヴィーンッ
それにしても、こうしてたっ君と山の中を走っていると、都会で感じることの多かった閉鎖的な感覚や――ハゲ係長――から解放されたような感慨を感じる。
だからだろうか。
時々見かけるカーブ注意の看板を無視してしまったのは。
スピードを上げるごとに風を感じる。ストレスが発散される気がして気持ちがすこぶる良い。
辺りは田舎特有の自然豊かな山々。人工的な物などガードレールと時々見かけるカーブ注意の看板だけ。
だんだんと気が大きくなり始めたころ、また一つカーブ注意の看板を見つけた。
しかし、スピードは落とさない。
いけるっ、と思っちゃったんだろうな。逆にスピードを上げたくらいだし。本当にあの時の自分はどうかしていたんだと思った。
「いったらぁああああ!! イニシャ〇D……スクーター版じゃあああ!!(イニ〇ャルDとか見たこと無いけども!)」
ここで一つ自己分析をしましょう。
勘のよろしい方は薄々気付いているでしょうが、俺は普通にバカ野郎なんです。
え? どれくらいかって? そうですねぇ……。
「アレぇえええ!? 調子乗りすぎたぁあああ!! 俺の大バカ野郎ぉおおおおぅ!!」
相棒を飛ばしすぎてガードレールから飛び出すくらいには馬鹿野郎です。
……え~。
現在、急カーブを曲がりきれず相棒のたっ君(非人間)と共に落下中。
内蔵のフワッとした感覚を感じてる真っ最中であります。うっぷ。
眼下には広大にして鬱蒼とした森林が急速接近中。
「ヤバイねこりゃまじでヤバイね人生20年生きてきたなかで一番ヤバイよいやもうヤバイなんてもんじゃなくヤヴァッ……!!」
着地……、
に見えなくもないと思う。
★☆★☆★☆★☆★☆★
着地?の拍子に身体中からゴキッ(折れた?)やらバキッ(折れたな)やらスポーン(なんか抜けた)やらのとってもイヤ~な音がした。
これはいろいろとやっちゃったっぽいな。
それでも不思議と痛みが無い、しかし代わりに体が動かない。
しょうがない、助けを呼ぼう。
「…うっ――ガッハ!?」
声を出そうとしたら咳き込んでしまった。
おまけに、さっきまで全く無かった痛みも一気にきた。
痛いの嫌いだからそのまま何も感じないままでよかったのに。あぁ、痛い痛い痛い痛い。
(これはやばいな……)
けっこう重傷っぽい。血も出てるし。見るだけで痛い。っていうかマジで痛い。
それと苦しい。
折れた骨が肺にでも刺さってんのかもしんない。っていうか超痛い。
ヤバイなこりゃ……早いとこ病院に行かないと死ぬかも。でら痛い。ヤバス。
「……っが! …ゲホ!」
と言う訳で、助けを呼ぶ為の声出しに再チャレンジ。
しかし、咳き込むだけで声は出ず。
あ~。だんだん頭がぼーっとしてきた。
つか今更ながら、此処って山の中じゃん。山丸出しのド田舎じゃん。
声出せても人に届く確率が絶望的なの忘れてた。チョベリバ~……(錯乱中)。
……もうまともに頭も働かないみたいだ。普段の俺なら酒を飲んだとき以外絶対に使わないような死語が出るくらいに働かない。
視界の端にチラチラみえるガラクタ……相棒(元スクーター)の姿が絶望に悲愴感をプラスする。たっ君…っ(泣)!!
殉職です。享年五歳くらい。(俺と過ごした時間プライスレス)死因は頭文字D。
「ゲホ! ゴホッ…ゴポッ!?」
咳きと共に大量の吐血。
これ本格的にヤバイやつだ。
目が霞んできやがった。お花畑が見える~、とか言ってる場合じゃない。
体が氷みたいに冷たい。
それに、さっきまで超痛かったのに今は痛くない。それどころか何も感じない。寒いだけだ。
自然と一つの可能性が頭の中をよぎる。
これはアレか? 『死ぬ』ってヤツですか?
普段考える事さえ無い単語が徐々に現実味をおびる。
オイオイ、死ぬのか? ここで? リアリィー?
俺が? 冗談だろ?
え? 本当に……?
こんな所で? マジで?
ドッキリとかじゃなく?
いやいやいやいや、ムリムリムリムリ!!
やっぱ、死にたくないってばよ!!
ムリだって! やりたい事まだたくさん有るんだぜ!?
まだ初体験どころかキスさえしたことないだぜ!?
彼女が出来た事さえないんだぜ!?
こんなところで死ねるかぁああ!!
なんで動かねーんだよ!? 骨が折れた?さっさと治せや!! 自然治癒力仕事しろっ!! ゆとり世代の本気舐めんな!!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だイヤだイヤだイヤだイヤだ死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイシニタクナイ・・・!!
まだっ…、
「じに゛だ…ぐな゛…い゛!!」
俺の魂の叫び、全く声が出ていないが今の俺の全力だった。そして、届くはずもない虫の鳴くような声は、届いた。
ガサッ……
!?
無宗教の俺が言うのもアレだが、神様ってヤツラが本当にいるのなら。ソイツらは本当に気まぐれなヤツラなのだろう。
ガサッ……ガサッ
自分に近づく落ち葉を踏む音が聞こえた。規則的な足音は恐らく人間だろう。……多分。
ぶっ壊れたガードレールでも見て気付いてくれたのだろうか?
視界がほぼ完全に暗くなりかけているせいで、そちらを確認することは出来ないが。間違いなく何かがすぐそこにいる。
ガサッ……
人――もしかしたら熊かも……。
(神ってヤツラは本当に気まぐれだから)
そこまで考えたところで意識が完全に途切れた。
お帰りなさいませ
ここまで読んでもらえただけで十分嬉しいのですが・・・
出来れば感想が欲しいところです
お手数ですがどうかよろしくお願いします
次回の投稿が何時になることやら分かりませんが 次回にお会いしましょう!
ではでは!!