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世界

光に包まれて目の前が真っ白になった。

「ま、まぶしぃ」

僕は目をしばたいてゆっくりと目を開けた

「わぁ」

僕は目の前に広がる光景に思わず声を漏らした。

上には赤い空が広がっていて、下の水にはそれが反射してキラキラと光っている。

「川に出たのね。」

マリーが後ろで額に手をかざしながら言った。この水がたくさん流れているところは川というらしい。

僕は乗ってきた白い板の縁から手を伸ばして川の水をすくった。ひんやりとしていて気持ちがいい。

ごろんと横になるとじっと空を見上げた。ふわっと風が吹いてきて、さっきまであの下水道の中にいたのが遠い昔のように思えた。

「ポックル、岸に着いたわ。降りましょ。」

気がつくと板は川から出っ張った石に引っかかり止っていた。

「ま、まってよ。」

マリーのあとを追って僕も板から降りた。

「そろそろ日が暮れるわ。今日はここまでね。」

そういってどんどん暗くなっていく周りを見渡すマリーに

「どうして?せっかく下水道から出られたんだし、もっと行こうよ。」

そういう僕にマリーが腰に手を当てて

「夜はね、昼間と違って危険なのよ。それにわたしはもう疲れてくたくたよ。」

「丁度いいわ、あそこで夜を明かしましょ。上に橋もあるし。」

マリーは大きな影のなかにあった筒のようなものを指していった。

近くまで行くとそれはトンネルみたいになっていて、向こう側も開いていた。

「これって・・・」

「ああ、何かの配管用のパイプね」

そういいながら辺りに落ちていた落ち葉を拾ってきて中に敷いていく。

「なにしてるの?」

「こうするとね、わりと暖かいのよ。ほらポックルも手伝って!」

僕もマリーに言われるまま手渡された落ち葉を敷いていく。そして最後に内側からふたをするように落ち葉を入り口に立てかけた。

「ちょっと薄暗いわね。ポックル、剣を貸して。」

剣を受け取ったマリーは剣の方向を色々変えながら、光の強さを調節した。

「これでよし!」

マリーは敷き詰めた落ち葉の上に寝転んだ。

「ほら、何ボーっと立ってるのよ。ポックルも横になりなさいよ。」

「う、うん」

横になると、落ち葉が僕の体を支えてくれた。

「明日はどうするの?」

僕は横に寝転んだマリーに話しかけた。

「そうね、また剣で方向を確かめながら歩いていくしかないわね。」

ふぁぁと大きなあくびをしながらマリーは言った。

「そっか」

「じゃあわたしはもう寝るわ。お休み・・・。」

マリーは自分の上に落ち葉をかぶせると、よっぽど疲れていたんだろう、あっという間に寝息を立てて寝てしまった。僕は剣を盾の下にしまって暗くする。ケンちゃんも寝るときはいつも暗くしてたのを思いだしたからだ。

「ケンちゃんは今頃何をしてるんだろう・・・僕がいなくて寂しがってないかな。」

ふと横を見ると、入り口に立てかけた落ち葉の切れ目から夜空が見えた。キラキラと星がまたたいている。

「そういえば、ケンちゃんとよく夜空の星を眺めたっけ。」

僕はケンちゃんとまた一緒に星空を眺めることが出来るんだろうか・・・だんだんボーっとしてきたのを感じて、そしていつの間にか僕も深い眠りに落ちていったのだった。



「う、まぶしい」

僕は突然の光に目を覚ました。

「ポックル、起きて、朝だよ!」

目を開けるとマリーが外でうーんと背伸びをしている。

「今日もいい天気だよ」

外に出ると真っ青な空が広がって、すがすがしい風が吹いていた。

僕たちは身支度を終えた後、剣をかざして行く方向を確かめた。

「こっちね」

そういって歩き出すマリーに僕は聞いた。

「ねぇ、マリー。方向はわかるのはいいんだけど、後どれくらいかってのはわからないの?」

「もちろん、分かるわよ。」

マリーはあっさりと答える。

「どうやって分かるの?」

「今剣は光ってるでしょ?」

「うん。」

「それがね、近くなるにつれて点滅するようになるの。で、本当にあと少しってなると、青色に光り輝くわ。」

「そうなんだ!」

そういって僕は剣を確かめた。でも相変わらずぼんやりと光ったままで点滅すらはしそうにはなかった。

「ま、昨日の今日じゃ、まだまだよ、気長にやりましょ。」

しょんぼりした僕の肩をぽんぽんとたたく。

早く光って欲しいな、そのためにはもっと早く歩かないとな。そう思いながら、僕は草を掻き分けながら歩いていく。今までの道に比べて

「はぁ、僕も飛べたらもっと早く移動できるのに・・・」

前を飛んで行くマリーを見ながら思わず僕の口からそんな言葉が出てしまう。

「妖精になれば、あなただってわたしのように飛べるわ。」

そういってマリーはニンマリしながら羽を羽ばたかす。

「どうして、マリーはそんなに僕に妖精になることを進めるのさ」

「もちろん、ひとつはあなたが妖精になれる『想い』だからよ。あとは、そう、わたしはボーイフレンドが欲しいの。」

「ボーイフレンド?」

聞き覚えのない言葉に僕は首をかしげる。

「パートナーのことよ。そしてわたしと彼は二人で世界中を旅するの!いろんなところに行っていろんなものを見たり、食べたり、聞いたりして、ずっと一緒なの。もちろん、『想い』を集めてみんなを幸せにしながらね!」

「へ、へぇ。」

うっとしとした目をしたマリーの言っていることの半分は分からなけれどなんだか楽しそうだった。

「まぁ、あなたがわたしのボーイフレンドになるかは分からないけど、あなたは勇気もあるし、やさしいしきっと素敵な妖精になるわ。ま、候補として考えといてあげるわ。」

「そ、そう。ありがとう。でも、僕は妖精にはならないから。」

釘を刺しつつ、僕は一応お礼だけは言っておいた。

「それはそれでいいわ。それにね、またケンちゃんに会えたとして、いつかは必ず別れの時がくるの。だからそのときまで待ってあげてもいいわ。」

「なんだって、そんなことあるわけがないじゃないか。次にケンちゃんに会ったら、もう僕は絶対にケンちゃんから離れないんだから!」

今でさえ、こんなにケンちゃんに会いたいのに、こんな思いをしてもう一度会えたとしても、その先に別れがあるなんて、僕は考えたくもなかった。

「まぁ、それもこれも、まずはケンちゃんのところに行かないとね!ほら、先を急ぎましょ」

と、急に僕達の横を大きな丸いものが通り過ぎていった。

「な、なんだ?」

見送るとそれには見覚えがあった。確かあればケンちゃんに乗せてもらった車だ!

「おおきな車だなぁ」

僕は感心したように言うと

「ポックル、車知ってるんだ。」

「うん。ケンちゃんが持ってたんだ。もっと小さいけどね。」

「そっか、でもあの大きさが本物よ。あのタイヤに踏まれたらぺしゃんこになるから気をつけてね。」

それから僕はタイヤに踏まれないように道の端を歩いた。よく辺りを見渡すと、すべてが自分の何倍も大きくて驚いた。大きな柱のそばを歩いてるときによってきた犬をには本当にびっくりした。

もじゃもじゃのあのデカイからだは今まで戦ったどんな敵よりも大きくて、口から覗いた牙は鋭かった。

クンクンと鼻を鳴らして近くによってきた時はもう本当に駄目かと思ったけれど、ひとしきりにおいをかいだら柱におしっこをかけてどっかに行ってくれたから、ホッとした。マリーが言うにはこちらから何もしなければおとなしいらしい。間違っても僕はあんな大きな化け物に何かしようなんてさらさらおもわないけれどもね。とにかく、僕は自分がどれだけ小さくて、そして世界には僕なんかよりももっともっとでかいものであふれているということを僕は知った。

そんなこんなで歩いていると、急に僕達の上を巨大な影が通り過ぎた。

「また犬かな?」

そういった僕にマリーが焦って言った。

「カラスよ、伏せて!」

「え、カラスって前に言っていた?」

そしてもう一度影が横切った時だった。気がつくと僕は何かに挟まれていた。周りを見ると、どんどん周りが小さくなっていく。

「これは、僕はどうしたんだ!」

「そこのカラスまてぇ~ボックルをはなせぇ!」

後ろのほうからマリーの声が聞こえる。どうやら僕はカラスにさらわれて空を飛んでいるらしい。

「ええい、こうなったら!」

マリーはいつの間にか杖を持っていて、僕のほうに向けて

「えい!」

と振った。すると杖の先から光がでて飛んできた。

「カ、カァ」

カラスがそれに驚いて鳴いた。そして、それと同時に僕の体が自由になる。そしてそのまま真っ逆さまに落ちはじめた

「わぁぁああああ」

「ポックル~」

マリーは必死に僕を追いかけたが、だんだんマリーの姿が小さくなっていった。

そして僕は空を落ちながら気を失ってしまった。






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