プロローグ
恋とは。
恋とは、何も異性の人間だけに向けられるものではないと私は思う。
それはいくつものかたちを持っていて、人それぞれに違っていて、どれひとつとして同じものはない。
“それ”について考えると心が躍り誰もが乙女になる。
ある時、“それ”は彼女の形をしている。
しかし、ある時には彼の形をしている。
そしてまたある時は、猫の形をしている。
“それ”はスポーツだ。音楽だ。絵画だ。学問だ。
つまるところ、“それ”は我々にときめきを与えてくれるものだ。
どんなものにでも姿を変える。
もしかすると、あなたのすぐ近くにもまだ気づいていない“それ”はあるのかもしれない。
恋とは、好きのその先。
誰かを、何かを思い浮かべるたびに胸が高鳴る。
頬は燃える。
目が潤む。
何を差し置いても守りたいと、守られたいと願う。
これ以上の特別はないと確信する。
同じ気持ちを抱いて欲しいと願ってしまうこと。
失うことを想像するだけで苦しくなってしまうこと。
それでもなお、愛おしいと思わずにはいられないこと。
その全てが、恋なのだ。
恋とは、神聖なものだ。おしなべて無垢でなければならない。そこにいかなる理屈も打算もあってはならない。理由など、存在し得ない。
好きから生まれるのが恋でその結果として生じるのが憎しみだとしても──決して理屈からも打算からも恋は生まれない。
たとえ表面が汚れ、純白が失われたように見えても、全ての皮を剥いだ最も内側にあるのはただの「好き」。
混じり気のない「好き」でできている。その他のどんな言葉でも説明できないもの。
そんな純粋な想いを、私は恋と呼びたい。




