3. 崩れた倉庫から出てきたのは、アルミのたらいを被った全裸のイケメンでした
薄暗くなった周囲に止む気配のない雨が風に乗って吹き込んできた。 受験生のいる家ならきっと問題解説の放送に耳を傾けていることだろう。 ジュヨンも同じだった。
父が帰ってくるにはまだ早い。 ヨンミが好きな辛いトッポッキのせいで、ただでさえ熱くなっていたジュヨンの胃はさらにひどい状態になった。
「胃が痛くてたまらない。牛乳は残っているかな?」
答えを合わせていたジュヨンはそれ以上正解を出すことが無意味に感じられた。さらに胃がひどく痛んでいた。
「くそっ、トッポッキが辛すぎた。辛いのは本当に嫌いだってば」
それでもヨンミと一緒にいるのはいつも楽しい。ジュヨンはヨンミを思い浮かべてにっこり笑った。
「もう少しだ……」
1リットルの牛乳を買ったのは昨日のことなのに、きっと父が水のように飲み干したのだろう。 母を癌で失った後、いつも酒に頼る父だった。
「二日酔いには牛乳が一番だ」
父は毎回そう言って、睨みつけるジュヨンににやりと笑って見せた。 酒を飲まないと眠れない苦痛の夜、治療費で借金まみれの疲弊した生活は常に辛そうだった。特に夜ごとに音もなくベランダに出て、古い家の庭を見下ろしていた父の後ろ姿は寂しげだった。
ドン……! ゴトッ! ガシャーン!
それは崩れる音だった。きっと鈍い何かが落ちて、ただでさえ崩れかけていた家の庭の古い倉庫の屋根を壊したのだろう。だから倉庫の中の大きなアルミ鍋が転がる音がしたのだ。
もう少しで牛乳をコップに注いで飲もうとしたジュヨンはそれをこぼしそうになった。騒がしい破裂音に驚いて落としそうになったガラスのコップを、なんとか握りしめた。
「な、何の音? 倉庫? まさか崩れたの? なんで?」
恐怖より好奇心が一歩先だった。ためらわず外に飛び出したジュヨンは、目の前に広がる光景に驚いて目を見開いた。
予想通り倉庫がめちゃくちゃに崩れていた。ガシャーンという音と共に転がったアルミのたらいも崩れた倉庫の一角にあった。 治療費のために住んでいたアパートを処分し、やっと手に入れたスラム街のぼろ家なのに、幽霊でも出そうなほど不気味だったのに、とうとう倉庫が崩れるなんて!
その時だった。突然、ひっくり返っていたアルミのたらいが動き始めた。見知らぬ誰かのうめき声も聞こえた。あまり重くもないのに、その人はアルミのたらいをかぶったままうめいていた。
「うう……腰が……」
銀色のアルミのたらいの下から腕が一本飛び出した。毎年キムチを漬ける時に白菜を漬け込んでいたあのアルミのたらいだ。 母が嫁入りの時に持ってきた大事な家財だと言って、何度も何度も磨いていたアルミのたらい。ジュヨンが子供の頃にお風呂も入ったそのアルミのたらいから、見知らぬ誰かの腕が?
いや、今度は男の頭が現れた。
「変……変態野郎! この野郎!」
一目で彼が裸だということが分かった。勇敢無双とでも言うのか? ジュヨンはどこからそんな力が湧いたのか不思議なくらい素早く体を動かした。
「変……変態だって?! 痛い! 痛いってば!」
カイは自分を覆っているアルミのたらいが何かよく分からなかった。しかし、これはきっと体を隠したり、敵の攻撃から防御するための盾の一種だろう。そうでなければこんなに体を完全に隠せるはずがない!
しかし、何かが足りない。敵が今のように上に乗ってドンドン跳ねると背中も痛いし、何よりうるさくて耐えられなかった。
「あれ? この野郎パンツも履いてない! おい、この野郎、ここがどこだか分かってんのか! 今日のストレス満点なのにちょうどいいや! 見た目はまともなのに頭は金髪で他人の家に裸で飛び込んできやがって! お前、この崩れた倉庫はどうすんだ! 変態野郎! 変態野郎!」
「違うって……痛い! お願いだからやめてくれ!」
「何がやめてくれだ! 何が!」
ジュヨンが飛び跳ねるたびにドンドン音がした。アルミのたらいがへこんでいた。母のアルミのたらいがこうしてへこむしかないことがさらに腹立たしかった。 だから全身の重さをかけてつま先に力を込めて跳ねた。
「ジュヨン!」
父だった。ジュヨンは門が開いて黒いビニール袋(きっと酒が入っているだろう)を持って立っている父が自分を呼ぶ声に驚いて振り返った。
その瞬間、バランスを崩したジュヨンの体がよろけた。 その姿に驚いた父さんが駆け寄り捕まえる間もなく崩れたジュヨンは、崩れた倉庫の破片の間にそのまま転がりそうだった。
「うううっ!」
なぜだろう? どうして? アルミのたらいをかぶっていた男が体を投げ出し、ジュヨンを抱きしめた。その勢いで、そばに倒れていた鉄パイプや重い荷物が男の体の上にそのまま倒れた。
「どけ! どけってば! この変態野郎!」
しかしジュヨンの叫びにも男は何も答えなかった。ジュヨンを抱いたままうめいていた彼は、そのまま意識を失っていった。
父さんが駆け寄り、男の体に降りかかった荷物を慌てて片付け、ジュヨンを抱き上げた。 体が軽くなった男は地面に投げ出されるように倒れた。
ジュヨンにとって本当に青天の霹靂のような一日だった。そしてカイにとっても。




