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目を覚ましたフェリスは、ぼんやりする頭で周りを見る。

見たことがある部屋だった。

時間がわからないので窓に目をやる。


うわ飾りの付いたドレープたっぷりの深緑色のカーテンは閉まっていて、裾が床に広がる。


カーテンが閉まっているせいで室内は薄暗い。


見上げるとはカーテンレールの隙間から、少しだが光が漏れているのを見て、明け方ではないかと推測した。


ベッドから起きて、フェリスは自分でドレープのカーテンを開ける。

まだ夜明け前の薄いオレンジの光が室内に差し込む。


フェリスは、光が入った室内を見渡す。壁紙はアイボリーで、置いてある木目調の家具と調和していて全体的に落ち着いた印象の部屋だった。


「この部屋...最初に使っていた部屋だわ。もしかして、また時間が戻ったの?」


フェリスは覆面をしたコルヌイエ伯爵に、薬を嗅がされたことは覚えていなかった。


扉がノックも無しに開く。


「フェリ、よかった。目が覚めたんだね」

オルキディアは、昨夜フェリスを城に連れ帰ってから、度々様子を見にきていた。起き上がっていたフェリスをもう一度ベッドヘ誘導する。

「もう少し休むんだ」


フェリスは、言われた通りにしたが、今いる部屋が貴人牢でも、西側の部屋とも違うことに内心で戸惑っていた。


ノックが聞こえてて、オルキディアが返事をするとアガットが入室してきた。


フェリスは上半身を起こす。

「フェリスさま、気が付いたのですね、よかったです」

そばに寄ってきたアガットの袖を掴んだ。

「ア、アガット今日は何日?もしかして4の月?」


オルキディアが、ベッドのそばにある椅子に腰掛ける。


「フェリ、大丈夫。もう時は戻っていないよ。アガット、フェリになにか飲み物を持ってきてくれる?」


アガットが頭を下げて、オルキディアの前から下がった。


「体調は?」

オルキディアが優しい口調で、気遣うように尋ねる。


フェリスは先ほどのオルキディアの言葉が頭から離れず、オルキディアの瞳を瞬きもせず見つめていた。


(今、オルキディアさまはなんと言った?時は戻っていないと...オルキディアさまはご存知だった?)


「フェリ?」



「あの...少し、頭がぼんやりするくらいです」


(話を聞きたいけど...私の頭がまだぼんやりしているわ。)


「さて、どうしようか。君には全てを話すつもりだが今夜にしようか?」


「え....」


「私は、昨夜からまだ一睡もしてないんだ、隣に眠っても?」


「え?」

フェリスは目を丸めた。


(隣って…隣の部屋?私の隣?)


固まってしまったフェリスを見てオルキディアが思わずといった風に口元が緩む。


「ふふふ...すまない、全て片付いて浮かれているようだ」

オルキディアは、含み笑いをして、扉の方に目をやった。

「アガットから飲み物をもらってから、また眠るといい」

「夕食後に時間を作るから君の疑問に答えよう。その時に答え合わせだ」


ちょうどアガットが、ハーブティーを持って戻ってきた。


「あの、この部屋は....?」

「もう君の部屋だから、安心していい」


オルキディアは、アガットと入れ替わるように部屋から出ていく時に、アガットにいくつか指示をしていった。





昼からは、曇り空が広がって風が出てきた。


フェリスは部屋のベッドの上で夕食をとった後、城に常住している医師の診察を受けて許可をもらい、オルキディアと地下牢に行くことになった。


「今回は隠し通路からではなく、庭園を通って東棟の方へ向かう」

オルキディアが右肘を差し出した。

フェリスが軽くそれに掴まる。


少し後ろをフォルクとアガットが付き従う。



東棟は主に使用人の居住施設になっているが、その一部が見張り塔になっている。


その塔の最上階の部屋が、フェリスが入っていた貴人を収容する牢になっていて、そのひとつ下の階は貴人の世話をする使用人の詰め所になっている。


東棟の裏口からそのまま地下に下りると、全く使用人とすれ違うことなく地下におりることができる。



この塔には東棟の裏口から入る方法と、隠し通路を使っても入ることができるようになっていた。


アガットとフォルクは東棟の裏口で待機をする。



オルキディアはフェリスを連れて、その先に進む。

地下に続く階段があるが、以前に来たときと同様に地下は暗かった。

階段を下りきった所で、オルキディアが剣を抜いて柄の一部分を、壁の鍵穴のようなところへ差し込むと等間隔で明かりが灯る。

「フェリ、足元に気をつけて」


「ここは、一度通ったことがあります」


「君が通ったのは、ここじゃないんだ。地下廊下は迷路のようになっている。私も全ての道を覚えるのに半年ほどかかった」


しばらく歩くと、小さな明かりの灯っている牢屋が2箇所ある。

ここは牢屋と言っても、鉄格子がある以外は全てが整えあった。

フェリスのいた貴人牢と遜色ない作りになっている。

ただ隣との仕切りが鉄格子になっていた。


牢屋から大きな声ではないが、なにやら話し声が聞こえる。


オルキディアがフェリスの方を向いて、人差し指を唇に当てる。

フェリスは、オルキディアの仕草を見て頷いた。


「お前が、最初っからフェリスを殺さなければ魔物騒ぎに乗じてフェリスをさらう算段だったのに、二度も失敗する羽目になった」

「二度目はコルヌイエ伯爵の手抜かりでしょう!私は二度目はちゃんと言われたとおりにしたわ」


「だいたい自分が勝手にフェリスに会いにきて、部屋に押し入るから、キディにバレちゃったんでしょう?なんでその時に拐わなかったのよ!自業自得だわ」


「そのつもりで行ったが、フェリス嬢が可憐で凛とした様子でね、無体を働くと死ぬというからね。アイレ、君が一度目のときと違いサルマン辺境伯の心を手に入れられなかったせいだよ。今回だって、サルマン辺境伯が婚約解消しやすいように、いろいろお膳立てしたというのに...」


「一度目の時だって、キディは優しかったけど...私、愛されていなかったような気がしたの。だからフェリスさまにセミージャの種子を渡したのよ…じゃなきゃ陛下から賜ったものを譲るわけ無いじゃない…」


「しかし、なぜ時が戻ったんだ?」


「そうね、しかも私とコルヌイエ伯爵だけ記憶がある。どうせなら、キディとフェリスの婚約前に戻りたかったわ」


薄暗い牢屋で、聖女アイレとコルヌイエ伯爵は、何もすることがないため二人で話していた。


二人の話をしばらく聞いていたオルキディアが、フェリスの手を引いて二人の前に姿を表す。


「オルキディアさま!いらしてくれたのですね!ここから出してくださるんですよね」

アイレが、立ち上がり鉄格子を掴んだ。




















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