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フェリスは、首元まである紺のワンピースを選んだ。


襟元とスカートの裾に、白のフリル少しが付いている落ち着いた感じのドレスだ。


フェリスとアガットは衣装ルームを出て、リビングルームに戻る。


「もっと、華やかなものをお召になりませんか?いくら日中サルマン卿が魔物討伐に出られていて城内でお会いしないからといって、あまりにも地味な装いではないですか」


フェリスは、思い出したようにアガットに尋ねた。


「アガット、聖女アイレさまもご一緒に行かれているの?」


アガットがコテンと首をかしげる。


「今日はどうなさったのですか?聖女アイレさまなどこちらのお屋敷には滞在なさっていませんよ。少なくとも昨夜ご挨拶した時には、そのような話はありませんでしたよね」



「何を言っているの?聖女アイレさまよ。」



「そんな尊いお方が滞在なさっていたら、昨夜のうちに教えていただけると思いますよ」



フェリスはモストロベアの傷を癒やしてくれたのは、聖女ではないかと考えた。


(アイレさまは聖女だもの、急に蘇生ができるようになったとしてもおかしくないわ!)




「アガットさっき胸の傷を見たでしょ、昨日モストロベアが屋敷に侵入した時に負わされた傷で間違いないわ。アイレさまが治してくれたのではないのかしら?」

フェリスは自信を持って強く主張した。



「フェリスさま、モストロベアなんて危険な魔物が、屋敷に侵入するなんて大きな声で言わないでくださいよ、サルマン卿に失礼でしょう」

ちょっと呆れたようにフェリスを見て、たしなめる。



フェリスは、諦めてソファに腰掛けた。


「ねぇ…アガット、今日の日付を教えてちょうだい。」



「今日は、4の月19日ですよ。」

「え…?」


(7の月19日にモストロベアに襲われたはず...間違いないわ__次の日が聖女アイレさまの誕生会だったもの。もし今日が4の月19日なら...3ヶ月も前の過去に戻ってるということ?なら、聖女アイレさまは、まだこの城にお見えにになっていないわね)


「アガット、嘘じゃないわよね?」


「フェリスさまに嘘を教えてなんになりますか?どうしたんですか、今日は」

アガットがフェリスを呆れた表情で見る。


フェリス自身も、魔物に襲われてできたであろう傷が胸に付いてなければ、時が戻ったなど到底信じられなかったと思う。

人に話しても簡単には信じてもらえるはずがないと、ひとまずこの話はおいておくことにした。



フェリスは、落ち着こうとハーブティを飲んで窓から外を眺める。


「アガット...3日後に聖女アイレさまがこの城に滞在されることになるから、そしたら私の話を信じてくれる?」


「わかりました…そんなことが本当に起きるのなら信じましょう」


「アガット、悪いけどランチまで一人にしてもらえる?」

「かしこまりました」

アガットが一礼をして部屋を去っていった。



フェリスは、窓の外を見ながら7の月19日のことを思い出せる範囲で思いだそうとした。



【あの日、私はひとりで部屋にいた。城内の者たちは誕生会の準備でそのほとんどが、大広間に集まっていた。


アガットは、聖女アイレさまに用事を頼まれたとかで30分ほど私のそばを離れたのよね。


そしたら、声がした。誰かが魔物が城内に侵入したって部屋の外で騒いでいて、気が付いたら目の前にモストロベアが迫っていて...


そうだわ、聖女アイレさまからセミージャって種子をもらっていたのを思い出して__水に浸すと魔物避けになるって聞いていたから、花瓶の中に種子を入れたのよ。


でも、モストロベアは私の目の前に...



__あれ、おかしいわね。


私の部屋は、西側のかなり奥まったところだったわ。入り口からも遠いし、一階の大広間の方がたくさん人もいたはずなのに、どうして私のところに来たのかしら...魔物避けもしたのに。


それに、アガットも言っていたけど城内にモストロベアが侵入したなんて聞いたことない。魔物の森からわざわざ出てきて堅牢な城の城壁を超えてくるかしら...不自然過ぎる__



もしや、仕組まれたの?



待って!そういえば扉の鍵が壊れていたわ_見送り前はアガットは何も言ってなかった…ということは、見送りの最中誰かが意図的に壊したのかしら?



え…でも誰に狙われたというの?



そういえば、オルキディアさまは、聖女アイレさまにかなり気を許していらしたわね。

私との婚姻も延期されたし__そういえば城内でも二人はいつも一緒だと噂があった。



私のことが、邪魔になって二人が....?

この考えは早計だわ...オルキディアさまが普通に婚約解消すればいいことだもの。


では、アイレさまが?

聖女が、そんなことをするとは…



でも、最大の疑問は時間が戻っていることね。



神様が本当に存在して、憐れな私にチャンスをくれたのかしら...】


フェリスは、しばらく考え事に夢中になっていた。


侍女のアガットが再びやってきてランチの時間を告げた。









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