第9話「最近は死霊料理の糖質が気になるけど何か質問あるw?」
謎の少女マギーとの出会い
王宮の外れ、石畳の広場にて。
「お前、鍛錬するなら外でやれ!ってか、お前は追放された人間じゃないのか?」
「まあ、ええがや。文句言ってきたら、王都の裏に引きづりこんで、ぶっ飛ばしたる。」
ビスケットは軽快に笑う。
「そもそもお前、前の話で殴り込んできたやん?なにさりげなく仲間になってんの?お断りなんだけど!」
チョコレートはハッキリという。
「あぁん?そんな義理人情がないこと言うと沈めるぞ?」
これだから陽キャは大嫌いなんだって異世界スローワークに不満を漏らす…。
「……おう、誰か倒れとるがや」
ビスケットが眉をひそめて指差した先には、フードを深くかぶった少女が、石のベンチにうずくまっていた。
「……怪我してる?」
キャンディがぽつりと呟く。チョコレートは面倒くさそうに首を傾げる。
「いや、うわっ、キャンディもおったんかい!寝てるだけじゃねぇの?」
「お前じゃね~んだから」
ビスケットに呆れられ、少しイラっとする。
「……違います。追われてるんです。」
少女――マギーが顔を上げた。瞳は怯え、声は震えていたが、どこか丁寧で、柔らかい。
「……あんた、誰に追われてるのか?」
チョコレートは興味本位で聞いた。
「えっと……その……グミ、っていう吸血鬼の……魔王軍幹部の人に……」
「……吸血鬼グミ、ヤバい…有名……」
キャンディは冷静に言う。
チョコレートは首をかしげる。
「俺、転生者だからそのへんの事情知らないんだけど……そんなにヤバいの?」
「ヤバいどころじゃないがや。魔王軍最古の幹部や。冷徹冷血…。時期魔王候補でもあったんだが、最近は大人しくなったって聞いとったんだがな。」とビスケットが言い放つ。
「……数千年を生きる化け物……」とキャンディが呟く。
だが、マギーの話には奇妙な点があった。魔物たちは、他の市民には一切手を出さず、マギーだけを狙って襲ってくるのだ。
「それって……なんかおかしくない?」とチョコレートが言う。
「おかしいのはお前の存在やがや」とビスケットがツッコむ。
「わからんと……でも、街の魔物たち、誰も他の人には手を出さんのに、私ばっかり……」
マギーの声は震えていたが、言葉の端々に方言が混じっていた。
どこか田舎育ちのような、素朴な響き。
「……それ、ほんとに狙われてるのか?」
チョコレートが疑いの目を向ける。
「ほんとと……昨日も、魔物が家の前に立っとって……怖くて、逃げてきたと」
「でらやべ~な……」
ビスケットが拳を握る。
「よっしゃ、あたいが守ったるがや!戦士ってな~弱きを助けるためにあるんだがや!」
「お前もめごとが好きなだけだろ」
「吸血鬼なんざ。大剣でぶった斬るがや!」
「…吸血鬼……何分割したら……絶命するか…試す……」
キャンディもビビるどころかノリノリだ。
「……でも、助けてくれると嬉しかと。ほんとに、怖かったけん……」
マギーが小さく頭を下げる。その姿に、キャンディが静かにうなずいた。
「……護衛、する」
「お、キャンディも言うなら、決まりやな。あたいも乗ったる!」
「……俺はパスで」
チョコレートは相変わらず勇者に似つかわしくない。
「おい、チョコレート。お前も来るがや。ニートでも、働け!」
「うるせぇよ!俺は勇者なんだよ!陰キャだからって脅したら何でも思い通りになると思うなよ。このDQN!ヤンキー!!!」
チョコレートはビスケットに怒鳴る
こうして、謎の少女マギーを中心に、奇妙な護衛隊が結成された。
だが、この時点では誰も知らなかった。
マギーが語る“魔王軍幹部吸血鬼のグミ”が、〇〇〇〇であることを――。