表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/85

第81話「そういえばキャンディの過去は見たけどビスケットの過去は見てなくねw?」(9/10)

天狗堂の登山道は、岩肌がむき出しの急斜面だった。

霧はさらに濃くなり、視界は数メートル先すら怪しい。

風が吹くたび、木々が軋み、どこかで獣の遠吠えのような音が響く。


傀儡たちは無言で、ビスケットの後ろを歩いていた。

その動きは、ぎこちなくも確実で、まるで“目的”だけを見据えているようだった。


「……あたい、わかっとる。これは試練や。見捨てて進むのが正解やろ……」


そう呟きながらも、ビスケットは先ほどのクッキーの最後が忘れられなかった。


御札に覆われた顔。無言の歩み。

それでも、姿形は、あまりにも“本物”に似すぎていた。


そのとき――


「…っ!」


チョコレートの傀儡が、無言で空を指差す。

次の瞬間、山の上から巨大な岩が転がり落ちてきた。


「うわっ、やばっ!」


ビスケットはとっさに身をかわし、他の傀儡たちもそれぞれ回避する。

だが――


「ガム!!」


ガムの傀儡だけが、逃げ遅れた。

岩が直撃し、地面と岩の間に挟まれている。


「ガム! ガム!!」


ビスケットは駆け寄る。

岩の破片に埋もれたガムの傀儡、両足が岩に潰され、これはもう動けそうもなかった。

顔の御札も、衝撃で剥がれ落ちていた。


その下から現れた顔は、ガム本人と瓜二つだった。

怯えた目。苦しげな表情。

それでも、彼は静かに言った。


「……天狗が来る前に、見捨てて逃げろ……」


その声は、震えていた。


「……いやや……あたい、そんなことできへん……!」


ビスケットはガムの傀儡を抱きしめる。

激痛で震える姿が痛々しい。

だが、顔は――あまりにも“人間”だった。


「ガム……あんた、ほんまのガムやないんか……?」


そのとき――


「危ない!!」


ガムの傀儡が叫ぶ。

だが、間に合わなかった。


天狗の投げた槍が、霧を裂いて飛んできた。


「っ!!」


ビスケットの目の前に、キャンディの傀儡が飛び出す。

槍は彼女の胸と肩と右足を金属の槍が貫通する。

地面に突き刺さり、キャンディの身体はその場に崩れ落ちる。


「キャンディ!!」


御札が、風に舞って剥がれ落ちる。

その下から現れた顔は、キャンディ本人そのものだった。


無表情。冷静。

だが、目だけが、どこか優しげだった。


「……早く行って」


その声は、静かだった。

だが、確かに“願い”だった。


「チョコ……お願い……連れてって……」


キャンディは、チョコレートの傀儡に向かって懇願する。

その声は、震えていた。

話し方までキャンディそっくりだった。


「……なんでや……なんで、みんな……」


ビスケットは、崩れ落ちそうな膝を必死に支えながら、仲間の姿を見つめていた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




霧が晴れた先に、滝があった。

岩肌を伝って流れ落ちる水は、まるで天から降る刃のように鋭く、冷たい。



「……天狗の書よ」


ビスケットがそう呟いた瞬間、書は淡く光り、ゆっくりと回転しながら彼女の前に現れた。


その表紙には、古代文字が刻まれていた。

触れれば、すべてが終わる。

この試練は、終わる。


ビスケットが手を伸ばした、その瞬間――


「っ!」


矢が飛んできた。

鋭く、速く、殺意を帯びた一撃。


「っ!!」


チョコレートの傀儡が、彼女の前に飛び出す。

矢は彼の首を貫通し致命傷だった。


「チョコレート!!」


傀儡の身体は崩れ落ち、地面に倒れ込む。

ビスケットはすぐに駆け寄り、その身体を抱きかかえた。


「なんで……なんで、あんたが……!」


チョコレートの傀儡は、フッと笑った。

その笑みは、あまりにも“本物”だった。


「何やってんだよ……その書を取ればクリアなんだろ?さっさととれよ。それでミッションクリアだろ?」


その声は、軽く、いつもの調子だった。

だが、血のような液体が、彼の口元からこぼれていた。


ビスケットは、ボロボロと涙を流した。


「……イヤや……」


「?」


「イヤやって言っとるんや……!」


彼女の声は震えていた。

拳も、膝も、心も――すべてが震えていた。


「偽物でもええ……偽りの命でもええ……でも、今、あんたらは生きとるやろ……痛みを感じとるやろ……」


「……」


「そんな人を見捨てて強くなるなんて、間違ってる。あたいにはできへん……そんな力なら、いらん……!」


「……」


「一生半人前でええ……こんな試験、認めへん……間違っとる……!」


その言葉と同時に、ビスケットは背中の大剣を抜いた。

滝の前に浮かぶ天狗の書に向かって、振りかぶる。


「こんなもん、あたいの信念には合わへん!!」


そして――


ズバァンッ!!


天狗の書は、真っ二つに裂かれた。

光が弾け、滝が揺れ、空が震えた。


その瞬間、傀儡たちは静かに崩れ落ち、光となって霧の中へ消えていった。





◆キャラクター人気投票&作品の今後について◆


---


いつも本作品をご覧いただき、誠にありがとうございます。

作者の**双葉フレディ**です。


本作品は連載開始から約1ヶ月を迎え、これを記念して**キャラクター人気投票**を実施させていただくこととなりました。

日々のエゴサーチを通じて、延べ**1,000名近くの方々**に作品をご覧いただいていることが分かり、心より感謝申し上げます。


---


●人気投票ルール


- **1アカウントにつき最大3票まで**投票可能です。

- 投票は、作品内のどの感想欄でも構いません。コメント欄にキャラクター名をご記載いただければ集計いたします。

- **1人で1キャラに3票すべてを投じることも可能**です。

- 投票の締切は**9月末日**とさせていただきます。


なお、4キャラに投票された場合など、合計票数が3票を超える場合は、各キャラに均等に票数を割り当てる形となります。

例:4キャラに投票した場合、1キャラあたり0.75票となります。


---


●作品の今後について


現在、人気投票の結果は**0票**となっております。

この状況を踏まえ、今後の作品の展開についても検討を進めております。


当初は数年にわたって連載を続ける構想でおりましたが、現時点では**9月末を一区切り**とし、**年内で完結させるかどうか**を判断する予定です。


また、作者自身の創作意欲にも波があり、正直なところ少し気持ちが離れてきている部分もございます。

それでも、これまで応援してくださった皆様には心より感謝しております。


物語の進行には登場人物の存在が不可欠です。

そのため、もし人気投票の結果、登場人物が全員退場となった場合には、**物語の継続が困難となり、打ち切り**という形を取らざるを得ません。


---


●最後に


読者の皆様の声が、物語の未来を形づくります。

お気に入りのキャラクターへの投票や、作品へのご感想など、ぜひコメント欄にてお寄せいただければ幸いです。


皆様のご参加を、心よりお待ちしております。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ