第72話「ワイ、ニート。パッパと喧嘩したんだけど助けてクレメンスww?」(4/4)
冬の風が、窓の隙間から冷たく吹き込んでいた。
暖房はついているはずなのに、家の中はどこか寒々しく感じられた。
チョコレートは、毛布にくるまりながら、リビングのソファで父の帰りを待っていた。
時計の針は、夜の九時を回っていた。
食卓には、ポッドが生前よく作っていたメニューを真似て、カカオが用意した夕食が並んでいた。
だが、どれも味気なく、冷めていた。
母の席だけが、ぽつんと空いていた。
「今日も、帰ってこないかもね…」
チョコレートは、誰に言うでもなく呟いた。
その声は、諦めでも怒りでもなく、ただ淡い悲しみが滲んでいた。
数ヶ月前まで、カカオは毎晩「ただいマッチョ むきむき」と言って帰ってきた。
笑顔で、少し疲れた顔で、それでも家族の前では明るく振る舞っていた。
だが最近は、帰宅が週に数回になり、会話も減っていた。
「父さん、なんでお母さんを助けなかったの…?」
誰にも聞かれないように、小さな声で呟いた。
その言葉は、空気に溶けて消えていった。
学校では、誰とも話さなくなった。
友達だったはずのクラスメイトも、今ではただの通りすがりの存在。
「父さんが医者なんだ」と誇らしげに話していた頃の自分が、遠い夢のように思えた。
幸い、クラスメイトは優しかった。
誰もいじめたりはしなかった。
ただ、腫物に触れるように、優しく接してきた。
それが、逆に痛かった。
家に帰ると、冷蔵庫の中はほとんど空っぽだった。
食卓には、安売りのパンと、薄いスープだけが並んでいた。
「ごめんね、今日はこれしか作れなかった。」
カカオは、申し訳なさそうに言った。
その声は、どこか遠く感じられた。
「しょうがねーな。食ってやるよ。」
チョコレートは、わざと乱暴に言った。
怒られたかった。
でも、父は何も言わなかった。
「…“食べてください”だろ?」
チョコレートは、目を伏せたまま言った。
「…食べてください。」
カカオは静かに答えた。
その声には、疲れと、諦めと、少しの優しさが混ざっていた。
夜になると、チョコレートは外に出るようになった。
コンビニの前でたむろする不良たちに混ざり、タバコの煙にむせながら、何も言わずに座っていた。
「お前、医者の息子だったんだろ?すげーじゃん。」
誰かがそう言った。
「…あれ?ホラに決まってんじゃん。」
チョコレートは、虚無な目で答えた。
「母親、死んだってマジ?やばくね?」
「別に?人工呼吸器とかってのつけてて、うるさかったから、ひきちぎってやっただけだしwww」
乾いた、冷たい笑いだった。
万引きもした。
最初は、ただの衝動だった。
物が欲しかったわけじゃない。
誰かに怒られたかった。
「そんなことするな」と、父に叱られたかった。
だが、誰も止めなかった。
誰も、彼を見ていなかった。
ある日、チョコレートが帰宅すると、カカオは書斎で書類を見ていた。
その背中は、まるで壁のように冷たかった。
「父さん、俺…悪いことした。」
そう言っても、カカオは振り返らなかった。
「…知ってる。」
それだけだった。
金持ちだった父は何をしてもお金で解決してしまった。
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冬の風が、窓の隙間から冷たく吹き込んでいた。
暖房はついているはずなのに、家の中はどこか寒々しく感じられた。
チョコレートは、毛布にくるまりながら、リビングのソファでぼんやりと天井を見つめていた。
母を失ってから、父・カカオはしばらくの間、懸命に家庭を支えようとしていた。
朝食を作り、学校に送り出し、夜には話しかけてくれた。
だが、チョコレートは何も返さなかった。
学校にも行かず、部屋に閉じこもり、ゲームとネットの世界に逃げ込んだ。
「チョコ、少しだけでも外に出よう。散歩でもいい。」
「うるさい。ほっといて。」
そんなやり取りが、何度も繰り返された。
カカオの声は、次第に疲れを帯びていった。
ある日、チョコレートが目を覚ますと、家の中は静まり返っていた。
父の白衣も、書斎の資料も、すべて消えていた。
机の上には、何も残されていなかった。
「……父さん?」
呼びかけても、返事はなかった。
スマートフォンを開いても、連絡はつかなかった。
病院にも、職場にも、誰も彼の行方を知らなかった。
「……見捨てられたんだ。」
チョコレートは、そう思った。
母を失い、引きこもりになった自分を、父は見限った。
何も言わずに、消えた。
その夜、チョコレートは屋上にいた。
冷たい風が吹きつける中、彼は柵の向こうに立っていた。
「父さん…俺、もう限界だよ…」
星は、静かに瞬いていた。
その光は、あの日の春の夜と同じだった。
でも、今の彼には、何の希望もなかった。
そして――
空が、裂けた。
◆キャラクター人気投票&作品の今後について◆
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いつも本作品をご覧いただき、誠にありがとうございます。
作者の**双葉フレディ**です。
本作品は連載開始から約1ヶ月を迎え、これを記念して**キャラクター人気投票**を実施させていただくこととなりました。
日々のエゴサーチを通じて、延べ**1,000名近くの方々**に作品をご覧いただいていることが分かり、心より感謝申し上げます。
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●人気投票ルール
- **1アカウントにつき最大3票まで**投票可能です。
- 投票は、作品内のどの感想欄でも構いません。コメント欄にキャラクター名をご記載いただければ集計いたします。
- **1人で1キャラに3票すべてを投じることも可能**です。
- 投票の締切は**9月末日**とさせていただきます。
なお、4キャラに投票された場合など、合計票数が3票を超える場合は、各キャラに均等に票数を割り当てる形となります。
例:4キャラに投票した場合、1キャラあたり0.75票となります。
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●作品の今後について
現在、人気投票の結果は**0票**となっております。
この状況を踏まえ、今後の作品の展開についても検討を進めております。
当初は数年にわたって連載を続ける構想でおりましたが、現時点では**9月末を一区切り**とし、**年内で完結させるかどうか**を判断する予定です。
また、作者自身の創作意欲にも波があり、正直なところ少し気持ちが離れてきている部分もございます。
それでも、これまで応援してくださった皆様には心より感謝しております。
物語の進行には登場人物の存在が不可欠です。
そのため、もし人気投票の結果、登場人物が全員退場となった場合には、**物語の継続が困難となり、打ち切り**という形を取らざるを得ません。
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●最後に
読者の皆様の声が、物語の未来を形づくります。
お気に入りのキャラクターへの投票や、作品へのご感想など、ぜひコメント欄にてお寄せいただければ幸いです。
皆様のご参加を、心よりお待ちしております。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
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