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第4話「ニートして部屋で寝てたら魔王軍が攻めてきたんだけど何か質問あるw?」

闇夜に包まれた街。


ふいに地面が揺れ、霧がじわじわと広がる。


冷たい夜風が大地を撫でる中、ひとつの白い影が廃墟の中央に立ち尽くしていた。

死霊王リッチーのクッキー、その白髪と青い瞳はゴシックな美しさを湛えながら、どこか痛々しい孤独をまとっている処女だ。


そして、その周辺から、不気味なシルエットが浮かび上がる。

クッキーの召喚した死霊たちだ。


彼らの動きはぎこちなく、それでいて威圧的。冷たい手が壁をなぞり、街の角でかすれた呻き声を上げる。

その声を聞いた瞬間、住民たちは恐怖に駆られ、命からがら逃げ出す。


「誰か助けて!」

若い母親が子供を抱きかかえながら叫ぶが、その叫びも虚しく、周囲には焼け付く炎が広がるだけ。


召喚の中心に立つクッキーは、どこか寂しげな目でこの光景を眺める。





王城


緊急の知らせを受けた兵士たちが駆け回る中、チョコレートは寝室から、のそのそと出てきた。

顔には「ああ、もう面倒だ」という表情がありありと浮かんでいる。


「ねえ、これって本当に俺がやるべき? っていうかさ、魔王軍って絶対関わっちゃダメな奴らやん?」 部屋の端で短剣を磨くキャンディに向かってぼやき始める。


キャンディは無言で短剣の刃をなぞる。


「……行く必要……ある。」


「えぇー……いや、俺は関係ないし。てか、これ、お前らの国の奴らの問題でしょ?」

チョコレートは布団にもぐり、完全に動く気配を見せない。


キャンディは鋭い目で彼を一瞥し、「……やる気……測定不能。」と冷ややかに言い放つ。


「そりゃそうでしょ。俺のやる気ってゼロだもん。てか、なんで俺が魔王軍に立ち向かわないといけないの?」

さらにチョコレートは屁理屈をこね回す。

まるで動かない像のようだ。


キャンディは深く息をつき、彼の目をじっと見つめながら静かに言った。 「……逃げるなら……今。」 「えっ、逃げるってどういう意味?」チョコレートはさすがに一瞬驚く。


キャンディは短剣をしまい、「……逃げたら……みんな死ぬ。王都滅ぶ…」と淡々と告げる。


「全くしょ~~~~がないなぁ~~~!!!」

チョコレートはため息交じりに叫んだ。


「俺のニート部屋を壊されるのは、もっと嫌だな。逃げるのもダメなら、仕方ないか……でも、行くのは構わないが、俺、ニートだから、マジで何にもできないぞ?」


キャンディはクスっと笑い彼の前に立ち、「……大丈夫……あたしが戦う…。」とだけ答えた。




王城を出発したチョコレートとキャンディ。

黙々と歩くキャンディの後ろについていく。

だが、道中でキャンディが急に止まった。


「どした?やっぱ帰るか?」

チョコレートが、小声で聞く。


「…問題ない」

キャンディが冷静に呟く。



衛兵が慌てた様子で「マッチョなゾンビが!」と叫ぶ。


「おいおい、こいつがリッチーが呼び出した死霊だってか?プロレスラーみたいじゃないか!!!」

キャンディが短剣を手に走り出すと、ゾンビも突進してきた。


「あっ終わった」と人生を諦めるチョコレートだが、いつも無表情のキャンディは少し嬉しそうに笑い。


「……残酷に………」

短剣が一閃


キャンディとゾンビが、まるですれ違ったかのように見えた。


キャンディが短剣をしまう。


ゾンビがキャンディのほうに振り返ったかと思うと、


「早く…」とキャンディは、ゾンビを無視して、こちら側に来いとチョコレートに目線を送る。


「い、いや、ゾンビが」

チョコレートはビビり散らかす。


「もう死んでる…死んでることに気付いていないだけ……」


そう言い終えるかどうかという時に、

ゾンビはバラバラの肉片になった。


チョコレートは唖然としながら「…お前、もしかしてめちゃくちゃ強い?」とつぶやく。


衛兵は「……キャンディさんは生粋の殺人鬼なんです…」と怯える。


暗殺命令された人達も、最低でも4~50くらいバラバラにされて原型をとどめないことが有名で、

それを小さな短剣だけで、その解体作業をしてると都市伝説だったらしい。


けど、あまりにも早く、現実的でないため王都の貴族が、かげで後処理のためバラバラにしているのだと、思われていたが…


「えっ、そんなヤバい奴なんて聞いてないんだけど…、返品していい?この同居人?」

チョコレートは衛兵を見るが、衛兵もキャンディから逃げ去っていた。


「俺らより、ゾンビ側に逃げるとか酷くない!!!」


---

クッキーが瓦礫の中を歩みながら、目を閉じて両手を広げる。

その姿はゴシックドレスのひらめきと夜風が相まって、不気味な美しさを醸し出している。

「あぁ~魔王様……この街の壊滅を、どうかご覧ください……」

彼女の青い瞳には寂しさと狂気が入り混じり、死霊たちが周りで蠢く中、その声はまるで詠唱のように響く。


「私は、魔王様のためだけに、こんなにも頑張っているんです……でも、どうして誰も私の愛を理解しないの?」 その言葉は瓦礫に吸い込まれ、死霊たちが静かに彼女の周りに集まりながらうなり声を上げる。


街の住民たちは怯えながら隠れ場所を探すが、希望の影すら見えない。




一方、チョコレートはその場を遠巻きに見ながらキャンディにぼやく。

「いや、これ見てみ? 完全にボスの雰囲気じゃん。俺の場違い感すごいんだけど?」


しかし、キャンディは微動だにせず敵を観察するだけだった。

そんな彼女を見て、


チョコレートは一歩後ずさりし、「いやいや、俺、戦闘とか無理だって!やれ!ピカチュ〇!」と叫ぶ。


軽快な突っ込みを期待したが

キャンディは冷静に短剣を構え、すぐに飛び出した。


「待てって! スルーされるのが一番恥ずかしいんですけど!」と文句を言いながらも、

結局チョコレートは死霊たちに向かって口達者スキルを発動。


「おい、そこの骨、あんたも残業代とか出ないんだろ? 魔王軍ってブラックじゃん? 俺たちに協力してもっと楽な環境作ろうぜ!」

死霊たちは一瞬動きを止めるが、即襲い掛かってきた。


「ですよね!わかってました!!!」


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