第37話「うん○してたら紙がなかったんだけど何か質問あるww?」(9/10)
魔王城は、もはや城とは呼べないほど荒れ果てていた。
空には死霊たちが舞い、地面はひび割れ、空気は重く、冷たい。
「魔王様がいないなら、我々が支配する!」
「この世界に秩序を!」
「まずは、トイレットペーパーの奪還からだ!」
死霊たちの叫びは、どこかズレていた。
それもそのはず、召喚された死霊たちは、クッキーの情緒に引っ張られて、目的を見失っていた。
屋敷の中心に立つクッキーは、黒いローブを翻しながら叫ぶ。
「魔王様がいないなら、あたしが代わりに世界を支配する!魔王様の代弁者として、あたしがこの世界を導くの!」
その目は虚ろで、涙を浮かべていた。
だが、周囲の死霊たちはその言葉に呼応し、次々と魔力を放ち始める。
「やばいがや!また瓦礫が飛んできた!」
ビスケットが叫ぶと同時に、巨大な石柱が空を裂いて飛んできた。
チョコレートは反応する間もなく、目を見開いた。
「うわっ、俺死ぬ――」
「ちっ!」
ビスケットが剣を抜き、瓦礫に向かって跳躍。
剣を一閃すると、石柱は真っ二つに割れ、破片がチョコレートの頭上をかすめて地面に落ちた。
「……サンキュー、何度もわりーな。」
「次はね~ぞ。ボケなす!」
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屋敷の奥から、さらに死霊たちが現れる。
歴史上の偉人、英雄、魔術師、そして――なぜか、詩人まで。
「この混沌に、詩を捧げよう……」
「いや、黙っててくれ」
チョコレートが即座にツッコミを入れる。
だが、死霊たちは止まらない。
「魔王様の代わりに、クッキー様を讃えよ!」
「この世界に、死霊の秩序を!」
「……秩序って、死霊が言うと怖いな」
魔王ポテチは、静かに一歩前に出た。
その姿は、まだ清掃員のまま。
「……余が、止める」
「え、魔王が出るの?」
「けがされたら困る」
怒りより周りを心配する魔王
「なあ?王国より魔王軍のが、断然ホワイトじゃないか?こんだけ暴れて備品壊しても、社員の安否を最優先に考えてるぞ。」
チョコレートは一人つぶやいた
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屋敷の中心では、クッキーが死霊たちを従えて、魔力を暴走させていた。
その瞳は虚ろで、涙を浮かべながら叫ぶ。
「魔王様がいないなら、あたしが代わりに世界を支配する!魔王様の代弁者として、あたしがこの世界を導くの!」
死霊たちはその言葉に呼応し、空を覆うように広がっていく。
空気は重く、魔力が渦巻き、屋敷の壁が軋む音が響く。
その時――
「暴れるのはやめてほしい」
静かな声が、場の空気を切り裂いた。
清掃服を着た少女が、瓦礫の中から現れる。
モップを手に、静かに立つその姿は、まるで嵐の中心の静けさだった。
「……誰?」
クッキーが眉をひそめる。
死霊たちも、一瞬だけ動きを止めた。
「余は、ただの清掃員。ですが、掃除が大変になるので、暴れるのは困る」
「……ふざけてるの?この魔王軍最強幹部クッキーに、清掃員ごときが講釈を垂れるの?」
クッキーの瞳がギラリと光る。
その瞬間、死霊たちが一斉に魔力を放ち、清掃員の少女に向かって渾身の一撃が放たれた。
「やめろ!」
チョコレートが叫ぶが、間に合わない。
ビスケットが剣を振るい、飛んできた瓦礫を弾き飛ばす。
チョコレートの頭上をかすめた破片が、地面に突き刺さる。
「……サンキュー」
「…」
無言でビスケットに殴られた
「邪魔だがや」
クッキーの攻撃に――
魔王ポテチは、微動だにしなかった。
死霊の魔力が炸裂し、彼女の身体を包み込む。
「ポテチ!!」
チョコレートが叫ぶ。
吹っ飛ばされるポテチ。
「きゃははは、原形をとどめたわね。」
吹っ飛んだポテチに追いつき、空中で腹の上に乗るクッキー
左手で
が、っと首をつかみ
右手の、手の平をポテチの顔に当てる。
(まさか…)
「や、やめ」
チョコレートは叫ぶが、
クッキーの手からは何度も気弾のような光の塊が発射される。
そのたびに後ろに吹き飛びそうになるが、
クッキーの左手が、それを許さない。
「燃えろ!!!」
光弾の乱射に飽きたクッキーの右手からは、次は炎が噴き出した。
火炎放射のようになり、
ポテチは顔から全身まで全焼した。
「あれは、もうあきらめろ。」
ビスケットは冷たく言った。
クッキーは真っ黒な亡骸を地面に叩きつけた…。
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