第34話「うん○してたら紙がなかったんだけど何か質問あるww?」(6/10)
魔王ポテトチップは、ベッドの端に腰を下ろすと、膝の上に手を置いて、静かに語り始めた。
「……余、世界征服とか、ほんとは興味ないんだよ」
チョコレートは、部屋の隅にあるぬいぐるみを眺めながら、聞き返した。
「それは嘘だろ。力があれば、試したくなるだろ。」
チョコレートは騙されまいと身構える。
「じゃあさ?チョコレートは、昔、子どもの時、お菓子とか好きだったよね?」
ポテチの質問に、うなずく
「じゃあさ?大人になって、大金を持つようになって、駄菓子屋のお菓子を買い占めようと思う?」
それは極端な事例だ。
「でも、簡単に言うと、そういうことなんだよ。」
「できないから、手に入らないから、あこがれる。」
「だけど、簡単に達成できるって、わかってたら、別に、それ以上を望まないんだよ。」
ポテチは、自分の部屋の机のガラスのコップを、手に取る。
とても綺麗な造形が彫られていて、高価なのが見て取れる。
だがそれを、あっさり床に落とす。
コップは粉々になりカラスの破片が飛び散る。
「あ~、なにしてんだ」
チョコレートがため息をつく
が、ポテチが指をならせば、ガラスのコップが元通りになった。
「何もできない人間が、周りに助けてもらいたいから、人を支配するために、お金を欲する。」
「だけど、最初から何もかも全部1人でできたとしたら、別に支配する必要性が見いだせない。」
ポテチは悲しそうにつぶやく
「貴方は、1万円札を渡して、一日小学生を支配したいと思う?」
それは極端な事例だ。
「でも、簡単に言うと、そういう事…。余からしたら、皆、少し不自由な子ども…。手を差し伸べたいとは思うも、壊したいとか支配したいなんて思わない…。いや、思えない。」
ポテチは不満そうにする。
「じゃあ、なんで魔王になったんだ?」
「魔族の力を持って生まれたから、自然とそうなっただけ。誰かが“魔王になれ”って言ったわけじゃないの。気づいたら、みんなが“魔王様”って呼んでた。」
「魔の力が悪いわけじゃなくて、魔に飲まれる弱い心が悪いの。魔を制御できれば、別に悪人にはならないよ」
「……それ、わりと深刻な社会構造の問題じゃないか?」
「でも、魔王って呼ばれると、みんな期待するでしょ?“世界を滅ぼす”とか、“人類を支配する”とか」
「まあ、そういうイメージはあるな」
「だから、余も頑張って“それっぽいこと”言いかたはしてるんだけど……」
魔王は、机の引き出しから一枚の紙を取り出した。
そこには、「世界征服計画(仮)」と書かれていた。
内容は、「みんなが幸せになる方法を考える」「争いを減らす」「トイレを清潔に保つ」など、どう見ても善人の計画だった。
「……これ、世界征服じゃなくて、福祉政策じゃないか?」
「うん。でも、“魔王らしく”見せるために、時々それっぽい命令を出すの」
「それっぽい命令?」
「“人間界の掃除をしろ”とか、“人間に会ったら可愛がってやれ”とか。余的には、“そのまま”の意味だったんだけど……」
「……それ、部下にどう伝わってる?」
魔王は、そっと目を伏せた。
「“人間界を人間を一掃しろ”とか、“力で蹂躙していじめてやれ”とか、って、勝手に解釈されてるみたい」
「……それ、完全に暴走してるじゃないか」
「でも、余が“やめて”って言っても、“魔王様の真意はもっと深いはず”って言われて……」
「深読みされすぎて、止められないってことか」
魔王は、少しだけ肩をすくめた。
「優柔不断って、こういう時に困るんだよね……」
「いや、困るってレベルじゃないぞ。世界が誤解で滅びかけてるんだぞ?へらへらすんなよ。クソ魔王!!」
チョコレートはアッと口をつむぐ…
相手は魔王だ…。言葉を誤れば即戦闘で、殺されるかも…
「くっ…」
魔王は、また目を細めて少しだけ赤くなった。
その表情は、どこか申し訳なさそうで、どこか満足げでもあった。
チョコレートは、椅子に深く沈みながら、静かに呟いた。
「……お前、もしかして、ドMだろ?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
魔王ポテトチップは、顔を赤くしながらも、そこだけは感情的に答えた。
「……そんなこと、ないし!!!不敬だよ!!!」
まあ確かに、現実世界でも会社の重役とかが、赤ちゃんプレイや、ドMなんてのは良く聞く。
普段誰にも頼れず、注意する側の強い人間の方が、
弱い女の子に叱責され、さげすまれる事に興奮する、この矛盾。
おそらくポテチも、清掃員をしながら、部下に罵詈雑言を浴びせられることに興奮する変態なのだろう。
チョコレートはため息をつき、頭をかきながら言った。
「まあ、いいや。とにかく、今回俺が聞きたいのはトイレットペーパー紛失事件だ。」
ポテチは真剣な表情に戻り、うなずいた。
「ん?何それ?」
チョコレートは、これまでの経緯を話した。
クラッカー王はクソ野郎で金がなくてトイレットペーパー紛失だけで金欠でやばいこと
住民が魔王軍が嫌がらせをしてるんじゃないか?って深読みしてること
本当は来たくなかったのにニート勇者である自分が、ここまで来たこと
「あんたは関係ないのは、わかったけど、犯人の魔王軍を止めてくれると助かる。」
ポテチは考えて
「犯人を見付けると犯人が責められるわけよね?それは可哀想なので犯人捜しはやめてほしい。その代わり、余がトイレットペーパーを王都に支給するってのは、どうかしら?」
チョコレートは驚く、何と王都が魔王軍に温情を…
「余、ある程度の物は、魔力で精製できるわ。構造とか教えてくれたらだけど…。ついでに貴方が異世界の勇者様なら、貴方の知識を教えてもらい、それを、余が具現化する、それを王都で売れば、資金調達もできて、そちらの国も潤うのでは?」
ぺらぺらっと凄いことをポテチは言う。
何処か別の転生漫画で読んだことある内容なような…???
「ふぁ…。魔王軍と王都が貿易をすると?」
「だから、仲介人は勇者様。取引先は企業秘密にしといてよ。」
このポテチ、頭も切れる。
「っで、取り分は?」
チョコレートは最低でも6割は欲しいと思っていた。
ここで2~3割は舐められてる気がする
まあ確かにアイディアも、行動力も、問題解決もポテチがしたわけで?
人間たちは無能しまくってたわけだけど…
「そっちが10割でいいよ。仲間との分け前は、うまくやってね。喧嘩だけはしないでね。」
何と貪欲で邪悪だと思われてた魔王は自分は取り分はいらないとか言い出した。
「…、な、なにを企んでるんだ?」
流石の鈍感なチョコレートでもおかしいと感じる
詐欺か?流石魔王…
「いいえ。言ったでしょう?余は思ったものは何でも出せます。ごちそうも、お金も、物も…」
口をぽか~んとあける勇者
「じゃあ、商売なんかしなくても、無限に金を出してくれれば…」
「少しは魔王倉庫にもあるけど、お金は基本的に出さないようにしてるのよ。あんまり紙幣が流通しちゃうと紙幣の価値が下がっちゃうし。個人の貯金が何もしなくても減っていっちゃうもの…」
小難しいことをいう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




