第32話「うん○してたら紙がなかったんだけど何か質問あるww?」(4/10)
王宮の執務室。
クラッカー王は、机に積まれた書類の山を前に、頭を抱えていた。
その手元には、赤字で「紙不足」「備品消失」「勇者役立たず」と書かれた報告書が並んでいる。
「金がない……紙もない……勇者も働かない……」
王は、机の引き出しからワインを取り出そうとしたが、空だった。
代わりに出てきたのは、負債の請求書…。
それを見て、王はそっと目を閉じた。
「……このままでは、この国は終わる……それもトイレットペーパーが原因という、前代未聞の屈辱的な汚名付きで」
そこへ、チョコレートが入ってきた。
相変わらず、だるそうな足取り。
「呼ばれたけど、何の用だ?」
王は、チョコレートを見て、深く息を吐いた。
「勇者よ。そなたに命じる。**魔王を討伐してこい**」
「……え?紙の話は?」
「紙はもういい。魔王を倒せば、すべて解決する。たぶん」
「たぶんって言ったな今」
「魔王軍が悪さをしているのは確定だ。紙を盗んでいるのも、魔王軍の仕業に違いない。だから、魔王を倒せば、紙も戻ってくる。たぶん」
「また、たぶんって言ったな今」
「勇者なら、世界を救ってみせよ。紙くらい、ついでに救え」
「紙をついでに救う勇者って、聞いたことないぞ」
「聞いたことがないなら、作ればいい。新しい伝説を」
「自分のケツくらい自分で拭いてくれよ。紙だけに…www」
王は、机を叩いた。
その衝撃で、請求書が舞い上がり、部屋の隅に散らばった。
「行け、チョコレート。魔王城へ。今こそ、勇者の力を見せる時だ」
「……俺、戦えないんだけどな」
「つべこべ言わずに、さっさと行け!!!」
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こうして、チョコレートは渋々ながら、魔王城へ向かうことになった。
同行するのは、ビスケットとクッキー。
マギーとゼリーは、王都に残って留守番を申し出た。
「あたしは、魔王軍グミの残党が狙ってるけん、外には出られんとよ……」
「ゼリーは、かわいくない人が多すぎて、外に出るとストレスたまるから、留守番するねぇ~♡」
チョコレートは、二人の言い分に何も言わず、ただ頷いた。
まあ、変人はこれ以上いらない…。
何より魔王軍幹部
魔王側に付いたら厄介だ…
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魔王城への道は、思ったよりも静かだった。
途中、魔物の襲撃もなく、道も整備されていた。
むしろ、王都よりも清潔だった。
「……魔王軍って、意外とインフラ整ってるな」
チョコレートはクッキーに素直な感想を言う。
「魔王軍の土木部門は優秀やで。あたしの知り合い、橋作ってるし」
「魔王軍の橋職人って何だよ」
「“魔王軍の架け橋”って呼ばれてるらしい」
「それ、栄光の架け〇みたいに言うなよ……」
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そして、ついに魔王城へと到着する。
だが、そこは――
**もぬけの殻だった。**
広い城内は静まり返り、誰の気配もない。
廊下には、掃除用具が並び、床は磨かれて光っていた。
「……誰もいないのか?」
「いや、あそこに……」
ビスケットが指差した先に、ひとりの少女がいた。
掃除服を着た、地味な見た目の女の子。
モップを持ち、黙々と床を磨いている。
チョコレートが近づくと、彼女は顔を上げた。
「魔王様は、不在なんだよ」
その声は、どこか寂しげだった。
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