第26話「ニートで異世界転生したんだけど勇者にされてホームシックなんだけど何か質問ある?」(3/5)
「ねえ、あたしって、今、愛されてるのかな?」
「はいはい、大好きだよ。」
チラッとキャンディを見る。
(まさかな…)
「ふふっ、じゃあいいの。あたし、今回は見学だから。戦闘はしないって決めてるの」
「いや、そこは手伝ってくれてもいいんじゃない?」
「だって、あたし魔王軍幹部だもん。中立って言ったでしょ?」
「中立って、便利な言葉だよな……」
チョコレートは笑って、不安要素を拭い去る。
(流石に関係ないよな…)
「あたしも、まだ全部は見えてない。でも、あの森の魔力……普通じゃない」
「……やっぱり、帰っていい?」
「ダメ」
「即答かよ」
馬車は、森の入り口に差し掛かっていた。
空気が変わる。湿っていて、重くて、どこか懐かしいような――そんな気配。
「……ここからは、徒歩」
キャンディが静かに言った。
「え、馬車じゃ入れないの?」
「……入ったら、出られない」
「ホラーかよ……」
チョコレートは深いため息をつき、荷物を背負った。
その背中に、クッキーがぽんと手を置く。
「ねえ、チョコレート。もし、マギーが“戻って”たら……どうする?」
「……そんときは、俺が止める」
「戦えるの?」
「戦わない。」
「ふふっ、らしいね」
森の奥から、風が吹いた。
その風は、どこか甘い香りがした。
まるで――飴のような。
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森の奥へと足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
湿っていて、重くて、どこか懐かしいような――そんな気配。
「……ここからは、慎重に」
キャンディが前を歩く。
その足取りは静かで、まるで森と一体化しているかのようだった。
「ねえ、あたしって、今、空気?」
クッキーが後ろから2人の食べ残しのポップコーンを食べながらつぶやく。
「いや、存在感はある。むしろ濃い」
森の奥へ進むにつれ、木々の間に奇妙な模様が浮かび上がってきた。
それは、血のような赤で描かれた円。
中心には、動物の仮面が吊るされていた。
「……これ、ハントレスの仕業か?」
「たぶんね。魔力の残滓が濃い」
クッキーが指先で空気を撫でる。
その指先が、淡く光った。
「…仕方ないわねぇ~。あたしの魔法、使ってみる?」
「何かあるん?」
「うん。ここの主の記憶、少しだけ覗けるかも」
チョコレートは、キャンディを見た。
彼女は無表情のまま、仮面を見つめていた。
「……キャンディ」
「…何?…問題ない……」
流石に全く関係ないと思うけどイヤな予感ほど、よく当たるものだ…
クッキーが指を鳴らすと、空気が揺れた。
視界が白く染まり、森の音が遠ざかっていく。
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