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彼女はヒロインでヒーローで。訳あり女子高生の秘密は、重すぎる?  作者: 白い彗星
第二章 ヒーローとしての在り方

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第34話 謎は全て溶けたよ恵くん



「こっ、こここ、ここ、これ、れこ……!」


「にわとりかな」


 スマホの画面を見た、愛の動きが止まる。かと思えば、言葉に詰まってなにかを言おうといていた。

 その様子だけで、今の着信は尊によるものだろうな、と恵は思った。


 やれやれ、好きな人からのメッセージだからって、なにをそんなに慌てているのか。

 軽くため息を漏らして、恵は愛のスマホの画面を、覗き見た。


「あらま」


 そこに書かれていた文章に、小さく声を漏らす。

 なるほど、これでは愛がこんなになってしまうのも、仕方がないと言える。


 だってこれは、まるで……


「デートのお誘いってわけね」


「でっ……」


 確信めいた恵の言葉に、愛はまたも固まった。

 このままでは、愛は一生動けないのではないか。そう思った恵は、話を進めることとする。


「だって、これどう見たってデートのお誘いでしょう」


「そ、そうかなー? ただ、遊ぼうって可能性も……」


「わざわざ遊園地に誘う? それに、なんでわざわざメッセージで? 直接言えばいいじゃん」


「う……」


「直接言うのが恥ずかしい、ってことでしょこれ」


 尊から、遊びの誘いならこれまでもあった。だがそれは、買い物とかカラオケとか、そういう普通のこと。

 しかし、今回のは……まさかの、遊園地だ。遊園地なんて、気軽に誘うものでもない。


「で、でもぉ……なんで、いきなり遊園地? これまでそんな話、したことなかったよ?」


「私に言われても」


「あっ……は、ははーん。わかっちゃったよ私」


 慌てる愛であったが、なにかを思いついたようで、不気味に笑う。

 ついに壊れたか、と心配になる恵の前で、愛はなぜか得意げに笑っていた。


「これは、あれだよ。恵のときと同じだよ」


「私のとき?」


「プールだよ。割引チケットが当たったからって、私たちを誘ってくれたでしょ。

 今回尊は、遊園地のチケットを当てるか貰うかした……でも、遊園地なんて男友達と行くものでもない」


「そうかな、普通に行くと思うけど」


「シャーラップ!

 そこで、一応異性の私を誘ったんだよ。割引チケットを使うために、たまたま私が選ばれただけ……謎はすべて解けたよ恵くん」


「一応異性って自分で言ってて悲しくならない?」


 愛が、自身の推理を自信を持って披露する。

 それに恵があきれ顔を浮かべているのは、残念ながら気がついていない。


 ふふん、と笑う愛のスマホが、再び鳴った。



『割引のチケットをもらったんだ』



「ほぉらね!」


 言ったでしょ、と愛が得意げに胸を張る。

 どこか残念そうなのは気のせいだろうか。


「いや、でも無理に使わなくても、それこそたけたけも誰かにあげればいいんじゃない?」


「そ、それはぁ……あれだよ。貰いものだし、それをまた誰かにあげるのは、尊の良心的なあれがさ……」


「てか異性なら、ししょ……渚ちゃんがいるでしょ」


「きょ、兄妹で遊園地なんて、は、犯罪でしょ!?」


「そんな事実はない」


 恵の追及に、愛の推理にほころびが出始める。

 素直に誘われたことを喜べばいいのに……なぜ、自分で自分を苦しめるような推理をするのだろう。


 あの尊がデートに誘っている……その事実を、認められないのは、わからなくもないが。


「まあ、たけたけの真意はどうでもいいけどさ。あいあいは行くの?」


「行くに決まってるでしょ!」


 なぜか怒られる恵。そして愛は、また何事かを考える。


「どしたのよ」


「またまたわかっちゃったよ、恵くん」


「そのキャラ気に入ったのね。なにがわかったの」


 スマホの画面を睨みつけ、愛は口を開く。


「割引チケット、ってことはさ……きっと、あれだよ。四人とか六人とか、複数人だよ」


 以前のプールの割引チケット。あれは四人で使えるものだった。

 あれと同じようなものであるなら、今回の遊園地割引チケットも、複数人での使用が考えられる。


 つまり、だ。


「別に尊が、私個人を誘ったわけじゃないんだって。デートとか考えすぎ」


 やはり、デートなんて考えすぎなのだ。

 苦笑いを浮かべる愛は、残念な気持ちはあったが、しかし楽しみでもあった。


 どんな理由にせよ、尊から……遊園地に、誘ってくれたのだ。



『いいよー。恵たちも誘うんだよね?』



 なので愛は、すぐさま返信した。

 四人であれば、以前と同じく恵と、山口を誘えば問題ないだろう。


 また四人で遊ぶのも、それはそれでいいではないか。今から、どんな服着ていくか決めておかないと……


「お、返信来たみたいだよ」


「だね」


 着信音が、尊からの連絡を知らせる。

 愛は、スマホの画面を見た。



『いや』



 そこには、ただ短く、それだけが書かれていた。


「……んん?」


 それはいったい、どういう意味だろう。

 言葉の意味がわからない。眉を潜める愛と恵。


 そこに、再びメッセージが届いた。



『二人で、行かないか』



 ……思いもしなかった、言葉が書かれていた。


「……へ?」


「おー……?」


 それを見た二人の反応は、違うが同じものだ。

 信じられないものを見た、という目をして……間の抜けた、声が漏れた。


 しばらく、その場に静寂が広がって……


「えぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!?」


 生まれて初めて出たんじゃないか、というほどの大声を、愛は上げていた。


「う、っるさ……」


 隣にいた恵にとっては、耳に大ダメージだ。

 とっさに耳を押さえたが、それで防げるはずもなく、頭がぐわんぐわんしている。


 対して愛は、自分がどれほどの大声を出したのか気がついていないようで、スマホの画面を凝視していた。

 いくら画面を見ても、書かれている内容が変わるわけではない。


 しばらく……三分は、固まって画面を見ていた。


「おーい、あいあい?」


 このままでは、休憩時間が終わる……そう思った恵は、愛の肩を揺らす。

 すると愛は、ようやく我にかえってきたようで……


「ど、どどっ、どうしよ恵!?」


 先ほどまでの自信満々な顔はどこへやら。めちゃくちゃ情けない顔で、恵に助けを求めてきた。

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