カルト・ゼロ
ハジマーリにてセーブしてログアウト。そのまま2日寝込んで再ログイン。宿屋を出ると少し変化があった。
街の中に掲示板(物理)があるのだ。いつも使ってるネット掲示板じゃなくて。
見てみるとそこには「ドリンクロス ギルドメンバー募集中!」と。他にも〇〇ギルドみたいな募集とその概要が書かれていた。
そういえばアプデでギルドが追加されてたなぁ。この2日の間に大いに盛り上がっていたのだろう。
なになに……。「EX研究会」、「超弩級兵器エグザダイアー同好会」、「カルト・ゼロ」、「アリス様親衛隊」……色んなギルドがある。楽しそうだなぁ。
たしかにギルドは面白そうなのだが、俺のスタイルの関係上やはりチームプレイは向かない。ギルド参加は見送りかな……。残念。
それから今回のイベント消化やらなんやらで手に入ったアイテムを全て売り尽くし、現在所持金はおよそ200万。またレイドの時のやり方でスキル増やすか……。
前回と同じ商品を購入して遺跡へと向かうことにした。
◇◆◇
道中、色んなところにヘンテコな建物がたくさんあった。調べてみると、ギルドハウスらしい。空いてる土地に好きなようにギルドハウス建てて拠点にできるそうだ。
奇抜な形の建物を見ながら爆発していると、突然目の前に魔法陣が現れた!
そこから2人のプレイヤーが出て来て、俺に近づいた。
「お迎えにあがりました、ゼロ様」
などと変にかしこまり、俺を様付けで呼ぶのは緑髪で長髪、糸のような目にメガネをかけた男。頭脳派プレイヤーといった印象を受ける。
「おいおいナッシュ、それだけじゃ伝わらねぇだろ?」
「おや、そうですか。ではサカモトさん、よろしくお願いします」
緑髪のナッシュとやらに代わって説明してくれるらしいのは赤髪で筋骨隆々な男。こっちはパワー派な感じかな。
てかそうですか、じゃねぇよ。伝わるわけねぇだろ。
「俺達のギルド、『カルト・ゼロ』はゼロ――あんたを崇めるためのギルドなんだ」
「崇める……? 待て待てどういうことだよ」
「先日のEXモンスターを討伐したのはゼロ様ということは既に周知されているのです。メンバーの一人が「血塗られた戦跡」消失後のスクショを持っていまして」
ナッシュが見せてきたのは間違いなくタマグライを拾った俺の姿だった。
「そこから総力をあげて調べた結果、ゼロ様に辿り着いたというわけです。そしてゼロ様があの「レベル0バグ」の被害者ということも」
「それでレベル0でEXも倒しちまう謎のプレイヤーに興味を持った奴らが集まって宗教じみてきて、『カルト・ゼロ』ができたわけだ」
なるほど俺がレベル0で色々やってるのはとうとうバレてしまった。……いやバレて困ることはあんまりないけど。
で、そんな俺をスゲーって思う人が集まってカルト・ゼロ結成……ついに俺を御神体とした宗教ができてしまったということか。
「ということで、ゼロ様には我々のギルドマスターになっていただきたいのです」
〚 ナッシュ からギルドマスターの譲渡依頼が届きました〛
ウィンドウが表示される。
「さぁ、「はい」のボタンを押して我々のマスターになってください!」
急かされてボタンを押すと、
〚 カルト・ゼロ ギルドマスターになりました〛
体がピカンと光り、承認された。
「ありがとうございます。それでは、これからよろしくお願いします」
「お、おう。よろしく……」
ナッシュが手を伸ばしてきたのでこちらも応じて握手を返そうとすると……
「死ね」
手を引っ込めて右手で火球をつくり俺に射出してきた!! 崇めるとかどこいったんだよッ!
タマグライに手を伸ばして『居合』の発動準備をする。攻撃してきたならとりあえずやり返せ! ぶった斬ってやる!
火球が刀の射程に入ったところで抜刀しようとすると、横から拳! 火球をパンチして相殺した!
「おやおや、当たりませんでしたか」
「テメェならそう来ると思ってたぜ!」
「……では、分かっていても止められない攻撃ならどうですか?」
ナッシュは炎や雷を織り交ぜた魔法を連打した!
そしてそれを格闘技で防ぎ、ナッシュに直接廻し蹴りを入れるサカモト! 俺の目の前で謎のPVPが繰り広げられてるんだが!?
「フフフ……痛いですねぇ。少し治療を……」
「ハッ! 遅いぜ! 『牙竜拳』!」
サカモトが緑の光を放つナッシュに渾身の一撃を叩き込もうとすると……
「残念、ブラフですよ。『カウンター・サークル』」
「何ッ!?」
ナッシュの前に魔法陣が現れた! 既に飛び出した拳は止まれず魔法陣にパンチ! 魔法陣は光を放ちサカモトをふっ飛ばした!
「なかなかやるじゃねぇか」
「フフ……「テメェならそう来ると思ってたぜ!」、と言ったところでしょうか」
…………非常にどういうことですかね、これ。
ということで宗教が出来上がりました。
そして二人は何故戦っているのか……
というのが次回予告で




