報酬はヤツ
周りを囲む刀はいつの間にか消滅し、「血塗られた戦跡」は完全に消え去った。真っ黒の地面に緑が戻り、大和村も復活する。
「よっしゃああぁぁぁあ!!! 終わったぞォォォォォ!!!」
というわけで2体目のEX討伐完了ッ!! 俺のこのゲームのゴールまで一歩、近づいたッ!!
「さてと……。報酬の確認と行きたいんだが……」
俺の眼の前に落ちているのはなんということだ、「妖刀タマグライ」ひとつ。もしかしてだが、これが報酬ってことはないよな……?
折れた妖刀を拾い上げると、ウィンドウが表示された。
〚EXアイテム:妖刀タマグライ〛
……ありましたね。報酬これでした。さっきまでラセツさんが操られていたこの妖刀がドロップアイテムです。
これ俺が操られて、「お前が次のEXモンスターだ!」とかいう展開ないよな……? あり得ないと言い切れないのが怖い。
とりあえずアイテムの中にしまって俺は大和村へと向かうことにした。
いつも通り『リトルボム』を取り出そうとすると……スカッ、と何も出ない。
おかしい、いつも通りやってるのだが……。まさか。
スキルの欄を確認し、俺は驚愕する。
--------------------------------------
[スキル]
・一文字斬
・居合
・飛燕
・一閃
・ハト
--------------------------------------
えーっと、『リトルボム』は?
いくら探しても俺のスキルは5個。バカな、少なくとも150はあったはずだ。てかタマグライ戦のスキルは使えるんだ。これも報酬の一部かな。
とにかく『リトルボム』を始めとした俺のスキルが無くなっている。何故だ……と思い考えられる原因はひとつ。
『魂の解放』で経験値が飛んだことによってスキルも一緒に飛んだのか! スキルの取得はレベルより経験値に依存していた! ふざけるな。
……仕方ない。再びレベリングと行こうか……。
◇◆◇
久しぶりに徒歩で長距離を移動している。
今まで飛んでたのがすごい快適だったんだなぁと感じるよ。ほんっとうに遅い。
大和村からしばらく歩いてようやくモンスター1匹に会うことができた。日本なオバケみたいなモンスター。
「『ハト』」
取り出し投げつける。懐かしい戦い方だ。
じっくり時間をかけてようやく倒した。
が、経験値はほとんど手に入らない。次のレベルまでのところには24980の表記。さっき手に入れたのは600の経験値。……地獄だなぁ。
あと数百体オバケ狩りしないといけないと思うと嫌になる。今の攻撃手段はハトを投げつけるだけ。気が遠くなるなぁ。
そう思っていると、どこからか声が聞こえてきた。
「おい、俺様を使えばいいじゃねぇか」
? 今のは誰だ……?
あたりを見回すが誰もいない。だがまた声が聞こえる。
「おい小僧、こっちだよこっち!」
勝手にアイテムのウィンドウが開き、ひとつが出てきた。
紫色の刀、邪悪そのもの。妖刀タマグライである。
「まったく、俺様を使えばすぐ終わるってのによォ」
「ギャアアアア! シャベッターーー!!!」
どこかのセットよろしく叫び声を上げた。
「お前、なんで喋ってんだ!?」
「あァ? そんなの俺様が妖刀だからだよ」
理由になってねぇ。大体倒したら死ぬとかじゃないのかよ、こいつ。
「とにかく、俺様であの雑魚どもを斬ってみろ」
「でもお前折れてるじゃん」
「カスみたいな拳よりはマシだろうよ」
確かに。まだ折れてる刀のがマシか。ならしっかり使わせてもらおう。
手に持つと、セッティングされたような感覚。装備完了ということだ。他ジョブの武器は持てない筈……と思ってステータスウィンドウを開くと、ジョブ:手品師 サブジョブ:サムライの表記が。アプデで実装されたサブジョブ制度に勝手に入ってたわけか。ところで俺が選ぶ権利は?
さて、現れたオバケにタマグライを振ったがほぼダメージは入ってない。俺の攻撃力が1なのは変わってないからね。
だが……。タマグライが光を発した。そして斬られたオバケは黒いモヤモヤになって刀身へと吸われていった!
「今何した?」
「喰った」
「つまり?」
「俺は魂を取り戻して元の姿に、お前はレベルアップでウィンウィンだ」
こいつまだ「世界全部喰ってやる!」とか言ってんじゃねぇかなぁ……。




