表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/39

1‐2

 桐矢くんと珠里ちゃん。私とはクラスメイト兼部活仲間という間柄のこの二人は、二ヶ月ほど前から付き合っている。珠里ちゃんから告白したのだとか。

 その前から彼女側の気持ちは私も知っていたので、二人が本当に交際する関係になったと知った時にはすごく嬉しかったし、めちゃくちゃテンションが上がったことを覚えている。

 それで、彼らが今身に着けているペアリングは、誕生日のプレゼントとして珠里ちゃんが希望し、二人で選んだものなのだとか。


「ペアリングとして買うのは分かるけど、まさか桐矢くんまで学校につけてくるとは思わなかったよ。意外とそういうのいけるタイプだったんだね」


 私達が通っている高校は、服装関連の校則はそれほど厳しくない。目立たないデザインのリングや細身のネックレス程度のアクセサリーを身に着けている生徒は他にもちらほらいるので、先生に叱られたりすることはないと思う。

 ただ、桐矢くんは元々人目を気にして目立つことを嫌うタイプだ。本人もいじられることを懸念している様子だけれども、それならばペアリングなんて、少なくとも学校には着けてこないはずだ。


「……俺は抵抗あったんだけどさ」


 きまり悪そうに薬指をもう片方の手で覆い隠すのは、無意識の動作なのか。桐矢くんが目を泳がせながら言う。


「珠里が着けてっていうから……」

「いいじゃん。誕生日だから何でもわがまま言って良いって、桐矢が言ったんだよ?」


 桐矢くんの言い訳じみた言動を、珠里ちゃんがにやにや笑いながら牽制する。何とも微笑ましい光景だ。

 どうやら桐矢くんがペアリングとして想定していたのは、デートなどの時に身に着けるイメージだったみたい。けれども、珠里ちゃんは普段からお揃いで着けていたかったようだ。それで、桐矢くんが珠里ちゃんの希望に合わせた、と。


「もう、二人とも羨ましい! 一から十まで羨まし過ぎる!」


 私の口からは、もはやその言葉しか出てこない。このわずかな間のくだりで、「羨ましい」という言葉を一体何回口にしたことか。


 何故こんなにも騒いでしまうほどに羨ましいのか。

 二人のような関係になりたい、付き合いたい人が、私にもいるからだ。

 相手はちょっぴり曲者。

 知り合ったばかりでもないのに未だに距離感が掴めず、気持ちも分からず、手が届きそうで届かない人だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ