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第26話 足りないお小遣い

「ごちそうさまでした!」

「……ルーシー様。珍しく、美味しそうに召し上がってくださいましたね」

「え? だって、本当に美味しかったもん。じゃあ、次は後片付けね」


 テレーズさんが作ってくれたポトフを食べ終えると、怪訝な顔を向けられたけど、一緒に後片付けを終わらせる。

 といっても、水魔法は私も……というか、ユリアナも使えるので、食器や調理器具を洗い、使わせてもらったテーブルなどを拭いていくだけだけど。


「後片付けまで手伝っていただいて、すみません」

「それくらい、良いわよ。というか、食事を作ってもらった訳だしね。それより、早く買い物に行きましょう!」

「ヒート・プレートですね? ですが、少しだけ問題がありまして」

「問題? な、何なの?」

「はい。ご主人様から、ルーシー様へのお小遣いを預かってきているのですが、それでは少々足りないかと」


 お小遣い! ……というか、そもそも私、この世界のお金を持ってなかった!

 ときメイの中では、お金を稼ぐ方法は二つ。

 一つは、放課後や休日のアルバイトなんだけど、学校外でのアルバイトは禁止されているので、魔法学校の先生の助手とか、図書室の本の整理とかが対象になる。

 で、もう一つはダンジョンで得たアイテムや、魔物を倒して得た素材を学校で買い取ってもらうというもの。

 しかし、どっちも二年生になってからしか出来ないんだよね。


「わかった。ちょっとだけ待ってて」

「え? ルーシー様!? どちらへ!?」


 テレーズさんを部屋に残して寮の裏へ行くと、こっそり転移魔法を使って森へ。


「あ、お姉ちゃん! 今日は早いんだね」

「おぉ、ルーシー。まだ日が高いのに珍しいんやな」


 早速セシルとダニエルが話し掛けてきたけど、挨拶もそこそこに目的を話す。


「あのね。ダンジョンとか森とかで手に入りそうな、価値のある物ってないかな?」

「ん? いきなり何の話や?」

「えっと、美味しいご飯を作るのに必要な調理器があるんだけど、少しお金が足りなくて、何か売れそうな物が無いかなって思って」

「なるほど。美味しいご飯と言われたら、協力せんわけにはいかへんな。で、街で売れそうな物か……って、あるやないか。確実に高額で売れるもんが」

「ホントっ!? 何々!?」


 早速ダニエルが売れそうな物を教えてくれるらしい。

 流石、関西人? ……か、どうかは分からないけど、商売が得意なのかも。

 ワクワクしながら何が売れるのかを待っていると、すぐ側にある木を前脚で指し示す。


「コレや」

「ん? コレ……って、この木が何かの材料になるの?」

「何かの材料になるかもしれんけど、それよりも、この実は絶対に売れるやろ」

「えーっと、それってもしかして、私が植えたリンゴの事?」

「せやで。食べたら魔力が上がる木の実や。売れへん訳がないやろ」


 いやまぁ、確かにそうかもしれないけど、それは流石に売れないってば。

 こっちの世界に無い新種のリンゴで、甘くて魔力が増えるなんて、絶対にダメ!

 逆に値が付けられないくらいに価値が高くなって、皆がこぞって学園に来ちゃうってば。


「ごめん。それは大事になり過ぎちゃうからダメだと思う」

「なるほど。まぁお嬢ちゃんにも色々あるって事やな?」

「うん。せっかく言ってくれたのに、ごめんね」


 ダニエルの提案に対して謝っていると、セシルが口を開く。


「お姉ちゃん。だったらボクが、お友達にこのリンゴと何かを交換してもらって来ようか?」

「セシル。お友達が出来たの?」

「うん。実は、何度かこのお米を狙ってたんだけど、何度かお話ししているうちに、お友達になれたんだー!」

「そっか。それは良かったわね」


 思わず、お母さんみたいな気持ちでセシルの話を聞いていると、


「じゃあ、ボクちょっと行ってくるねー!」


 すっかり目的の事を忘れてしまっていた。


「ほな、ワイもそーしよか。ちょっと知り合いにあたって来るわ。多分、夜までには戻って来るかな」

「二人共、ありがとう」

「いいよー。お姉ちゃんには、お世話になってるもん。じゃあ、ボクも夜までには戻って来るねー!」


 そう言って、セシルとダニエルが森の奥へと姿を消していった。

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