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第20話 リンゴのお礼

「えーっと、ダニエルさん」

「なんや、他人行儀やな。ダニエルでえぇで」

「……ダニエル。あの、とりあえず、リンゴを食べるのは止めて欲しいんだけど」

「何でや? お嬢ちゃんの魔法で幾らでもリンゴを生み出せるんやろ? ほな、構わへんやないか」


 あ……まぁ言われてみれば、確かにそうなんだけどさ。

 言えないけど、異世界の……日本のリンゴで食べたら魔力が増えちゃうんだよ。


「でも、私の魔力には限度があるし、無限に出せる訳じゃないんだよ」

「ほな、お嬢ちゃんも、このリンゴを食べたら良いんとちゃうか? このリンゴ、何でか知らんけど、食べたら体内の魔力が増えるし、味も旨いし、言う事無しやで」


 バレてるーっ!

 ダニエルは自分の魔力が増えるのが分かるの!?


「そのリンゴは私が生み出したからか、私が食べても魔力は増えないのよ」

「ほぉ、なるほど。ほんなら、ちょっと待っといてや。えぇもんあげるわ」


 そう言って、ダニエルが森の奥へと消えて行く。

 めちゃくちゃ足が速いけど、あれは元から? それとも、このリンゴを食べたから?

 前者なら良いけど、後者なら困る。

 私のせいで、森の生き物が変な事になっちゃうんだもん。


「セシル。ダニエルって、元からあんなに足が速いの?」

「知らないよぉー。初めて会ったもん」

「そっか。じやあ、後で本人から直接聞こうか」


 そんな事を考えつつ、少し離れた場所を大根畑にしようと、土魔法で土を耕していると、


「お、また何か植えるんか? 出来れば、麦や大豆やと嬉しいなぁ。アレ、旨いねん。まぁこのリンゴの方が旨いけど」


 いつのまにかダニエルが戻って来ていて、私が畑を作る様子を眺めていた。

 ダニエルは悪い人……というか、悪い鹿では無いと思うんだけど、ノリが関西人っていうか、妙に距離が近いのよね。


「……次は大根を作ろうと思ってね」

「大根かぁ。食べるけど、麦の方が嬉しいなぁ。麦の種があったら植えてくれるんか?」

「ううん。それぞれの作物には美味しくする為の育て方があって、私は麦の育て方を知らないから無理よ」

「さよか。まぁこのリンゴも十二分に旨いからな。それより、お嬢ちゃん。この木の実、あげるわ。ほらほら、手を出して……それ、美味しいから食べてみ」

「あ、ありがとう」


 ダニエルの前に手を出すと、関西のオバちゃんが飴をくれるノリで、小さな紫色のブルーベリーみたいな木の実をくれた……って、待って。

 ダニエルは鹿なのに、どうやって私の手に木の実を置いたの?


「ダニエル。今……」

「大丈夫。さっき採ってきたばかりで新鮮やし、綺麗やで。というか、時間が経てば経つ程に鮮度が落ちてまうから、早く食べ」

「は、はぁ……じゃあ、いただきます。……えっ!?」


 ダニエルさんがくれた木の実を、恐る恐る飲み込むと、


――魔力が三上がった――


 と、ときメイで何度も目にしたシステムメッセージが頭の中に流れる。


「こ、これって、まさか魔力の実!?」

「お嬢ちゃんたちは、そんな呼び方なんか。正確な名前は知らんけど、食べたら魔力が増える実なのは確かやな。とはいえ、増える量は、こっちのリンゴの方が遥かに上やけど」

「あ、ありがとう!」


 食べるとランダムな数値の魔力が上がる木の実を、掌に盛られただけ全部食べ、合計で四十くらいの魔力が上がった。

 ときメイのステータス上限は九九九だから、四十って結構な値よね。


「リンゴのお礼や。また見つけたら採っとくわ」


 まさかこんな形でステータスアップアイテムが貰えるとは思ってもおらず、ちょっと嬉しかったので、ローランドさんに麦の作り方を教わろうかなと思ってしまった。

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