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第19話 想定外の来客

「よし。そこで練り上げた魔力を放出してみよう」

「え、えーいっ!」

「……うーん。魔力はちゃんとあるんだけどな」


 今日もローランドさんの指導の下で、火魔法の練習に励んでいるんだけど、私が突き出した杖からは何も出ない。

 ユリアナにもローランドさんにも、私の中に魔力があるとは言われているんだけど、それを身体の外に出すっていうのがよく分からないのよね。


「今日はこの辺にしておきましょうか」

「そうですね。ありがとうございました」


 うーん。ローランドさんの丁寧な指導のおかげで、菜園クラブでの農業の知識は確実に増えているんだけど、肝心の火魔法がねー。

 ただ、今日は根菜の育て方を教えてもらったので、早速森で大根を作ってみようと思う。

 ふふっ、お米の次はお漬物を作るんだ。

 浅漬けも良いけど、タクアンも良いよね。

 ここの食事が悪い訳じゃないんだけど、和食も食べたい。

 そんな事を考えながら今日も森へ行き、早速大根の畑を作ろうとすると、慌てた様子でセシルが駆け寄ってきた。


「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」

「どうしたの? セシル」

「あれ……見てよ」


 セシルの視線の先を見てみると、大きな鹿がムシャムシャリンゴを食べていた。

 と言っても、奈良に居そうな鹿より一回り大きいくらいで、セシルの方が大きいんだけどね。


「せ、セシル。あの鹿さんって、セシルのお友達?」

「違うよー! それに、このリンゴはお姉ちゃんのだから、勝手に食べちゃダメって何度も言っているのに、食べるのを止めてくれないのー!」


 こ、これは私から鹿に言って……っていう事なの!?

 せ、セシルが言ってダメなのに、私が言って聞いてくれる訳がないと思うんだけど。

 けど、セシルが凄く困った表情を私に向けて居る。

 うぅ……と、とりあえず魔物じゃないよね? こっちの世界では普通の鹿だよね!?

 襲われそうになったら、すぐに転移魔法で逃げられるようにと杖を手にして鹿へ近付く。


「あ、あのー。そのリンゴ、私が植えたリンゴなんですけどっ!」


 意を決して、少し離れた所から鹿に話しかけてみると、


「…………」


 一瞬私の方をチラッと見て、再びリンゴを食べ始めたーっ!

 無視なの!? 思い切って話かけたのにーっ!


「あ、あのっ! さっきも言いましたけど……」

「……このリンゴがお嬢ちゃんのもんやって言いたいんやろ? せやけど、そないな証拠は何処にもないやないか」


 喋ってくれたーっ!

 けど、どうして関西弁なのっ!? 奈良!? やっぱり奈良の鹿なのっ!?

 いえ、奈良に限らず、鹿は日本中の何処にでもいそうだけど。


「証拠は確かにないですけど……でも、私が植えたところはセシルも見ていました!」

「けど、リンゴが身を付けるまで、数年は掛かるやろ? 違う場所で植えたんを間違えてるんとちゃうか?」

「間違えてなんていません! 何より、植えたのは昨日だし」

「はっはっは。ほら、みてみぃ。昨日植えた? 植えた翌日に、ここまで大きく木が育つ訳ないやろ」

「本当だってば。だったら、見てなさいよ」


 鹿が食べ散らかし、地面に落ちていたリンゴの食べ残りを拾うと、そこから種を取って地面へ。

 そして、


「≪グロウ・プラント≫」


 木魔法を使って一気にリンゴの木を成長させる。


「……はっ!?」

「どう? これで本当だって分かったでしょ? 食べるなとは言わないけど、セシルと仲良く食べてよねっ!」


 目の前でリンゴの木を成長させたからか、流石に関西弁の鹿も言葉を失ったんだけど、


「お嬢ちゃん、凄いやないか! これ、森の革命やで! お嬢ちゃん、名前は?」

「え? ルーシーだけど?」

「ルーシーか! えぇ名前やな。俺はダニエルや。宜しくな!」


 何故か鹿に自己紹介されてしまった。

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