第二話「バカっぽい少年」
ちょっと長めになったかも… ごめんなさい…
もう一度確認する。完全に同年代だ。
背丈もほぼ変わらないし、顔は何ならボクよりも幼いし、
さっきから「俺、参上!」とか言ってくるくる飛び回ってるのは
完全に小学生のそれだ。演奏者だろうが、こんな感じだといかにも情けない。
どう反応すればいいかわからずすっとぼけてたボクを救ったのは
皮肉にも先ほどまで「無能狩り」をしようとしていた連中だった。
「なんだあいつ。さらにバカそうなやつが来たぞ!」
「いいじゃねえか、分配する金が増えるだけさ…」
バカな演奏者をぶっ飛ばすつもりのようで、軽い攻撃態勢をとった。
攻撃が来ると思ったボクは、まだブンブン近くを飛び回っているバカを見て
「おい、早く逃げろ!お前わざわざ殴られに来たのかよ!」
「何寝ぼけたこと言ってんだ、寝言は寝て言うから寝言なんだぞ?」
「んなのわかってるからはよ逃げろ!」
だが、けんかしている間にも相手は止まってくれるわけはなく。
ババババ、と威勢のいい音で光線が数発発射された。
「「わああああああ」」
二人ともくるくる回ってよける。
だが、そんなよけ方じゃ当たらないで突破できるはずがない。
ドカーン、といい音を立ててボクの胸らへんに命中した。
ぶっ飛ばされたが何とか着地。急いで建物の裏側に隠れる。
「おおい、どこに隠れたんだあ?」
「長~い時間痛めつけてもいいんだぜえ?」
向こうは完全に勝った気でいるらしい。
まあ、こちらも負けた気でしかないから考えは同じだ。
どうしよう、もういっそ前に出てかねはありません、といったほうがいいのだろうか。
そんなことを考えていると、
すぐ近くでこの狩りに片足突っ込んだアホがにやにや笑いながら座っていた。
「俺だったら、こいつら十秒あれば事足りるのになあ」
「お前だってさっきわあああ、ていいながら逃げてただろ!」
「だってまだ依頼受けてないもん」
「依頼ぃ?」
この子供はヒーロー漫画でも読みすぎたのだろうか。
ここは某緑の髪の少年が出てくるジャ〇プのマンガじゃないのだ。
だが、もしここで依頼とやらをすれば助かるのならやってみる価値はあるだろうか?
「依頼すれば本当に助けてくれるのか?」
「する気になったか?ウチの依頼料はお高いぜ?」
こいつはどうも人をおちょくるのが得意らしい。
だが、ボクは大人だから鉄壁の自制心をもって、
「…………わかった。頼む。ここから助けてくれ」
「さいっしょからそう言えばいいのに」
というと外に出て行って、
「はいはいお兄さん方、けんかはここら辺にしてお茶でもしないか?」
「なんだあいつ。本格的にアホなのか?」
「見栄っ張りさ。さっさとやっちまおうぜ」
敵さんお得意の「千本桜」でアホが吹っ飛ぶ未来が見える。
まだあいつはこちらもお得意のにやにや笑いを送っているだけで
まったく防御もとろうとしない。
やっぱりあんな奴に任せなきゃよかった、後悔とともに思わず目をつぶる。
あともう少しで奴に攻撃が届く―――
―――――というところで光線が曲がった。
「「「はあ?」」」
思わず三人の言葉が重なる。
「おい、何してる!早くやつを狙え!」
周りの奴らが攻撃するが光線は当たることなく曲がっていく。
その現象を見てボクはハッとする。
そういえば一番最初の時も光線が曲がったような。
こいつがあまりにもバカな行動をとるので、すっかり忘れていた。
「俺の能力は「運命」。聞いたことあるだろ?
あのデデデデーン、てやつさ。」
あの余裕たっぷりの表情でヤンキーたちに近づいていく。
だが、彼らの顔にはさっきと違って余裕が一切ない。
「その名前から乗じて俺の能力内容は無生物の進行方向を
変える力になったわけだ。当然、異能光線は無生物だ。
あとは言わなくてもわかるよな?」
ヤンキーたちの額に汗が流れる。そりゃそうだ。ボクもそうなる。
そしてその次に弱者がとる行動は―――
「うわあああああああああ!」
全力で逃げることだ。結局は彼らも強敵から逃げることは変わりないらしい。
ボクがポケ―っとそれを見つめていると、あいつはボクに向かって
最高級にむかつく顔とピースサインを届けてきた。
次はどんな能力にしようかなあ…