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孤独な少女は、生きる意味を探す。  作者: インコりん
二章「ローダンセ」
31/42

7「居酒屋にて」

遅くなってすみません…

でも焦ると文がめちゃくちゃになるのでのんびり書かせていただきますね。お許しください。

「うわ、ここ迂回しないとなのか?面倒だな。」


「確かにね。中を突っ切って行く?」


「そうしたいところだが…。そのままの格好で行くのか?」


訝しげな目で見てくるジラに当たり前だと頷ずくと、呆れたように口を開いた。


「このままだと門番かなんかに、身元不明の迷子が現れたと通報されるのがオチだ。」


「…あ。」



ということで少し森の方に戻って洞穴を探して着替えている間、ジラが出入り口を背中で隠すようにして座り見張りをしてくれていた。


着替えた服を畳んで魔道具と共に皮の鞄にしまうと、ローブを羽織って外に出た。


「着替えたか。」


「うん。変じゃない?」


その場でくるりと回ると、「いいとは思うがフードは被れ。」と言われたので顔が隠れるくらい深くフードを被った。ただでさえ口元を隠すために布を巻いているのに、さらにフードなど被ったら不審者感満載だ。大丈夫だろうか。


ジラに縮んでもらい小さめの魔獣サイズにすると、ここから一番近い南門へと足を進める。


「身分証ないんだけど大丈夫かな。」


「まあどうにかなるだろ。」


楽観的な返答に苦笑して門の前に着くと、認識阻害の魔法をかけておいたジラに、何があっても喋らないようにと頼んでから門番の方へと歩いていく。


「ここってスアディード国の王都ですよね。」


「ああ、そうだよお嬢ちゃん。規定だとここに入るには身分証がいるんだが…。」


「あー、ごめんなさい。ほんとに人が少ない田舎の出なので身分証がないんです。このあとミル王国に行って冒険者のライセンスを取ろうと思っていて。」


「そうだろうと思ったよ。特に田舎だと戸籍登録だけ済ませる人も多いしな。じゃあ犯罪履歴だけないか確認させてくれ。」


そう言って取り出したのは白い水晶玉だ。これは犯罪履歴のある人物が触れると赤く光るという、全国で流通している基本的な防犯魔道具だ。


ある程度魔法の技術がある人間だと偽証できてしまうのが難点であるが、田舎から出てきた若い女だから偽装などできまいとその方法で調べることにしたらしい。


まあ無論、私にとって偽証など容易なことではあるが、何も罪を侵した記憶はないので普通に手をかざして魔力を流すと、水晶玉は水色に光った。


「よし。大丈夫そうだな。これはここから出る時に必要だから無くさないでくれ。」


渡された紙を読むと、どうやら通行証らしきものであることが分かった。こくりと頷いて鞄にしまうと、礼を言って門の中へ入る。




「よく怪しまれなかったな。」


頑張れよお嬢ちゃん、という声を背に門番が聞こえないくらいの位置まで進むと、ジラが感心したように呟いた。


「サラマニカ王国でも身分証を全員に配布するなんてことできていなかったもの。それに身分証どころか戸籍がない人だって居たわ。恐らくどの国でも同じ問題を抱えてるのよ。」


「へえ。」


あまりよく分からないな、唸るジラにくすりと笑う。


「同じ方法でもミル王国に入ることが出来そうね。」



途中でジラが屋台で売っていた串焼きを欲しがったので、1ギムを払って2本受け取ると、それをちびちびと食べながら東門へと向かった。


夏が始まったこの国は、この時期が1番活気づいている。人通りが多いため、いつもより小さくなっているジラはよく足を踏まれるようで、小型犬サイズになったジラを仕方なく片手で抱えて移動した。



ーーーーーーー




いくら小さな国だからといっても、徒歩で通り抜けるのにはまあまあ時間がかかるようだ。時々建物の上を飛び跳ねながら近道をしたが、門に着いた頃には日が暮れかかっていた。


「こんな時間に外に出るのは怪しまれるだろうし、今日のところは宿を取って一泊しようか。丁度夕食の時間だし。」


「ああ。」


取り敢えず情報収集も兼ねて夕飯を先に食べることになった。先程食べた串焼きがお気に召したらしいジラのご希望により、似た香りを漂わせる居酒屋の扉を開く。


ガヤガヤと賑やかな店内を見渡すと、横並びに2つ空いている席があった。一番混む時間なのにラッキーだ。小さくなったジラが隣の椅子に飛び乗るのを片目に椅子に鞄を掛けて席についた。


酒は17にならなければ飲めないが、私はまだギリギリ16である。見た目は大人びている自覚はあるのでバレたりはしないだろうが、ただでさえ前世では20からしか飲酒ができないのに16で飲むと言うのは如何なものか…と思ったので、酒はやめることにした。


「そこのお嬢さん、水を2つください。あとおすすめってなにかありますか?」


隣の席にエールを運んできた店員らしい少女に声をかける。


フードを深く被っていたので少し警戒しているようだったが、笑顔で焼き鳥を指した。


「ここの店はタレが美味しいんだよ!やっぱりタレと一番合うのは焼き鳥だね。あとは…卵焼きも美味しいよ。」


「そうなんですね。じゃあ焼き鳥20本と卵焼き1つください。」


彼女は、はーいと元気よく返事をして厨房に注文を伝えると、耳元に口を寄せて来た。


「お兄さんは凄く言葉が丁寧なんだね。普通そんな言葉使うのはお偉いさんか貴族様くらいだよ。だから治安が悪い所にいくと、敬語を使ってることがきっかけでお金目当てで狙われたりするんだ。」


気をつけてね、と微笑んで、彼女はトコトコと厨房に戻って行った。


男だと間違えてはいたが、優しい子だ。今回のことは水に流してあげよう。ほんわかとした気持ちでジラに視線を向けると、なにやらジラが縮こまってプルプルと震えている。


「ふっ、おまえ、お兄ちゃん…って、、男、っ…」


「あ?何だと?折角忘れようと思ってたのに。」


「あいたっ抜ける抜ける。ごめんって。」


ヒゲを引っ張るとジラは慌てて謝った。仕方なく離すと、恨めしげな目でこちらを見てくる。いや悪いことしたの君が先だよね。


混んでいる割と直ぐに頼んだものが運ばれてきた。


「神からのお恵みに感謝を。」


もうすっかりいただきますは使わなくなったな、と思いながら焼き鳥に手を伸ばす。ジラが串から外せとつついてくるが無視してまず一口食べると、香ばしい炭火焼き特有の香りが広がり噛むと溢れてくる肉汁と甘辛いタレが絡む。


「美味しいな。」


思わずぽつりと呟くと、隣で飲んでいたおじさん達が笑いながら話しかけてきた。


「お兄ちゃん、美味いだろここの焼き鳥。因みにここの卵焼きはニナちゃんが何度も練習して、やっと店主から担当する許可を貰ったんだ。早く食べてやってくれ。」


そう言って厨房を指すのでそちらを見ると、気になっているのか皿洗いをしながらチラチラとこちらを見ている少女と目が合った。


ああ、あの子はニナと言うのか。目が合って慌てて下を向いたが、やはり気になるのか度々こちらに視線を送っている。


一緒に運ばれてきた箸で卵焼きを一口サイズに切って口に運ぶ。


さて、私にとって卵焼きといえば、前世で機嫌が良い日の母が買ってきてくれた安いコンビニ弁当に入っていたものだった。

レンジなんか使えなかったから温かくなかったし食感も固かったが、私の中の卵焼きと言えばそれだったのだ。


しかしこの卵焼きは今までの常識を覆した。一口噛むとじゅわりと温かい出汁が溢れて優しい甘さが口に広がる。自然と頬が綻ぶ。


「…美味しい。」


「美味いってよニナちゃん!良かったなぁ!」


そう言ってスキンヘッドのおじさんがガハハと笑うと、ニナさんは恥ずかしそうにはにかんだ。



「そうだ兄ちゃん、お前さんはどこから来たんだ?」


「サラマニカ王国だ。」


何気なく答えたのだが、私の声が聞こえた客たちの空気がピシリと固まった。


「おまえ、サラマニカ王国から来たのか!?」


あまりにも大きな声だったので、なんだなんだと人づてに話が伝わり、店中がこちらに注目してしまった。


「…まぁ。逃げてきたんだ。でも3、4ヶ月前に国を出たから最近のことは知らないんだ。」


そう言うとおじさん達が気の毒そうに眉をひそめて今の母国の現状を教えてくれた。


「よく逃げれたな。前国王が亡命して、新しい王になっただろ?今はその新王が国民が逃げないように国境の警備を強めてるんだよ。」


「逃げようとした奴は捕まえられて牢に閉じ込められて見せしめに処刑されるらしいぞ。」


「自分が亡命する前に、前王が秘密裏に国民を親交がある他国に移住させようとしてたんだが、その第1団が国を出た辺りでバレてな。その晩命を狙われたからもう逃げるしかなかったらしい。」


あまりのことに開いた口が塞がらない。本当に、ジン達がやったのだろうか。


「前王がどこへ逃げたのか知っているやつはいないか?」


「うーん、申し訳ないがそれは知らないなぁ。」


僅かな希望をかけて聞いたが、やはり知らないようだ。自分で探すか、情報屋に頼むかーー。


「色々と教えてくれてありがとう。もう1つ、従獣も一緒に泊まれるここから1番近い宿はどこか教えてくれないか?」


「それだったら、ここを出て右に歩いていって、3つ目の角を左に曲がった所がいいと思うぞ。それくらいの大きさなら、獣舎じゃなくて同じ部屋に泊めてもらえるさ。」


「ありがとう。そこにするよ。」


話が落ち着くと、みんな自分たちの会話に戻っていった。


少々冷め気味な卵焼きを食べながらもう1つ頼もうかと思っていたら、ジラが呪い殺しそうな目でこちらを見ていることに気がついた。


「あ、忘れてた。ごめんって。」


ジラは串から肉が食べれないため私が外してあげなければならないのだが、申し訳ないことに完全に忘れて話していた。


ジラは、冷めているとぶつぶつと文句を言いながら残りの焼き鳥を平らげ、30本の追加を要求した。


そうして運ばれてきた焼きたてを満足気に食べるジラを横目に、私は追加した卵焼きを頬張った。



今更ですが、お金の単位を書かせてもらいます。

1ギータ… 10円

1ギム… 100円

1ギルーク… 1000円

1パルータ…1万円

1ギヌル… 100万円


つまり、セレナが買った串焼きは1本50円ですね。まあまあ安いかな?

因みにどうでもいいのですが、私がよく行く串焼き屋さんは1本80円です。

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