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孤独な少女は、生きる意味を探す。  作者: インコりん
一章「エリカ」
18/42

13「学園騒動(1)」

お久しぶりです!更新遅れてすみません…(>人<;)


長くなったので切りました!



つい先月まで黄色や赤で鮮やかに彩られていた庭の木も、今では葉がすっかり落ちてしまい木々は服を失って寒そうに震えていた。




「いよいよ来週ね…。」


招待状が来てから三ヶ月。いよいよ舞踏会を来週に控えている。

この三ヶ月で、学園では大きな変化があった。


それは学園内での私の友人が一人増えたことだ。今まで財産と権力目当てで媚を売るために引っ付き回ってきた少女達しかいなかったのに、何故だか信仰者的なものが出来てしまった。

それはシェリーの起こしたある事件がきっかけだった。




*******************



「そんな…酷いわ、ベルセルク様!」


「黙れ!私を誑かした上にシェリーを裏切ったのはお前だろう!」


学園の中庭で盛大に行われているのは、心優しい聖女のシェリーに恋に落ちた伯爵家の長男ベルセルク・ジダンディによる、可哀想な婚約者ヒアナ・サンタル嬢への婚約破棄だ。こんなことが起こるなんて誰も予想しなかったであろう。

 何故ならベルセルク様とヒアナ様の二人は、学園に入った時から仲睦まじいことで有名だったからだ。


しかし頭も良くて誰にでも優しく、家柄も申し分ない美男であるベルセルクを令嬢達が放っておく訳もなく、入学早々見目麗しい女子に囲まれていた。


その美女達に一人一人丁寧にお断りをするとヒアナ様の手を握り「私の婚約者、そして将来の妻となるのは永遠に彼女だけです。どうかご理解ください。」とヒアナ様の頭にキスを落としたという。

普段優しい仮面で覆われているベルセルクの強い独占欲と溺愛っぷりのギャップに、令嬢達のベルセルクへの人気がさらに上がったのだがその後は誰も何も言わなくなった。

あの獣のような婚約者探し中の令嬢達に諦めさせるとはどんな断り方をしたのだろうかと非常に気になるが。




まぁとにかく、二人の仲は良好だったのだ。


しかし事は半年前、生徒会に一人の少女がやってきたことであった。生徒会室の扉を開いた一人の少女に、その場にいた誰もが目を奪われたのだという。



輝く蜂蜜色の、柔らかく波打った金髪に、エメラルドのように透き通った美しい緑色の瞳。その顔に浮かぶ不安げな表情が、思わず抱きしめたくなるほどに庇護欲を掻き立てられた()()()そして、彼女がほんのりと笑うその表情は花が咲くように美しく儚げで、男性諸君だけではなく女性まで頰を染めるほどの破壊力()()()。話す声はよく響く鈴の鳴るような美しい音で、誰もが聞き惚れると言われている。()()()


そう、全部()()()だ。

何故ならその少女、シェリー・クラシスは私の前では顔を変えているからだ。まあそれが素なのだが、誰も気付いていないらしい。いや、絶対に誰かに裏で嫌われてるよねー、と思うけどシェリーの怒りを買うと私みたいになると皆さんよく学んでいるわけで。


私からして見れば彼女は絶対に庇護欲なんて掻き立てられない女だ。意地っ張りで傲慢で、自分の目的のためには手段を問わない女。

でも小鳥みたいなのは否定しない。あの声でペラペラと尽きることのない悪口雑言を吐いているときは本当に鳥とそっくりだ。何を言っているのかわからない。



シェリーは、その珍しい称号も含め魔力が豊富な上、成績もよくまさに優等生だった。それでも今までどんなに優秀でも生徒会に参加できるのは4年からだというのは決まりだ。

なのに何故だかわからないけれど2年生で生徒会に入った時は誰もが驚いた。長い歴史があるこの学園でさえも、史上初の二年生での生徒会委員だろう。恐らく彼女のことをあまり知らなかった人達は何故こんな小娘がと思ったと思う。



けれどすぐにシェリーは誰もが認める生徒会委員になった。それはある戦場に聖女様が現れたことであった。

その聖女様は治癒魔法をつかい、敵味方問わず怪我を負った人々を癒してまわったらしい。聖女様はフードを深く被っていて顔がよく見えなかったが、美しく安心させる声で人々に寄り添ったという。


問題は、その人々を救ってくれた聖女様は誰なのかということだ。 

治癒魔法が使える人間となれば限られてくる。光属性が使える者か、聖女や癒しの手という称号持ちこ限られた人数から戦場の殆どの人を癒すその魔力量の多さから、聖女はシェリーだったのだと国は特定した。我が家に助けて貰った騎士団や街の人々が押し寄せてきたときには驚いたものだ。シェリーが「私があの時の聖女です。」言うと、聖女が現れたという話は稲妻の如く広がり、聖女様誕生の宴が各地で開かれた。


こうして聖女ならば生徒会の一員になるのは当たり前だということになったのだ。




そんな心のお美しい聖女様(笑)は、時に謎発言をする。実際に、「ヒロインは私なのになんであの女と上手くいってるのよ!」とか「逆ハーエンドいけるかも!」とかもう何言ってんの?みたいなことを叫ぶ時がある。


とにかく、たまに日本にしかない言葉が混じることからシェリーに乗り移ったやつは私と同じ転生者なのかもしれないと思っている。



そう、それで聖女様……(笑)は、「逆ハーエンド」というものを目指すために様々な見目麗しい男性方達を落としまくっている。

今回の標的となったベルセルク様は、シェリーの言う「乙女ゲーム」というものではヒアナ様と仲が良くなかったはずらしい。だからそこに漬け入り落とす予定だったのに、ラブラブだったから落とすのが大変だとかなんとか。


もうさ。そのゲームと違う設定がある時点で諦めたらどうよ?と思うんだけど、いつも飽きっぽいところを見ると今回の「乙女ゲーム」騒動には謎の執着を感じる。





長くなったが、何がどうなったか知らないがついにシェリーに落とされてしまったベルセルク様がヒアナ様に、なんと目立つ中庭で婚約破棄を言い渡すという前代未聞の大イベントに学校中の生徒達が中庭に集結しているというわけだ。庭に入りきらなかった生徒は廊下の窓から見物しているし、なんか生徒だけでなく見覚えのある先生達の姿も見える気がする。




「…っシェリー様!貴女ベルセルク様に何をしたの!」


「うぅ…こ、怖いわヒアナ様…。私何もしてないじゃない!な、なのに…どうして…っ?」



ベルセルク様の袖を震える手で掴み、涙を零さんばかりに目を潤ませながらそう言うと、可哀想に…と言いながらシェリーを抱きしめた。

それを見たヒアナ様は、それまで必死で堪えていた涙をついに一筋流した。しかしその涙をサッと拭くと彼女は足を奮い立たせて立ち上がった。



「証拠はあるのですか?私がシェリー様を虐めたという証拠は!」


「あるさ!シェリーが泣きながら部屋の床にこれが散らばっていたのだと教えてくれたよ。この指輪、君が壊したんだろう?」



ベルセルク様は左腕でシェリーの肩を抱くと、右手の方でその指輪を見せた。


見事に水晶部分が破壊されていて、真っ二つに割れて…ん?粉々になっていないしあれくらいなら魔法で直せそうだけど。



「これはシェリーが買った、貴重な天界の光と呼ばれる水晶から作られた高級品だ。この指輪の石は普段手に入れられない上オーダーメイドだから同じものは二つとないのだぞ!貴様がこんな事をするなんて、思ってもみなかった!」


「そんなに壊れるなんて…本物?それに、あれくらいなら簡単に直せそうじゃない?」



憤怒の形相で唾を飛ばしながら熱弁しているベルセルク様に注がれる、周りの視線は冷たかった。恐らく誰も口出さないだけで、ヒアナ様が犯人ではないと分かっているのだろう。これは、シェリー本人がやったことなのだろうと。シェリーはベルセルク様の背後に隠れながら一見泣いているように目に涙を浮かべてはいるが、よく見ると勝ったと言うようにほくそ笑んでいるのが周りには丸見えだからだ。


 ヒアナ様はベルセルク様の言葉に平然と正論を呟いていた。うん、私も直せると思う。それに、天界の光の水晶は耐久性が凄いことでも有名だ。たかが学園の生徒なんかが悪戯に壊せる代物ではない。なのに砕けてると言うことは…壊せるように見た目もそっくりな偽物を買ったのか。馬鹿なりに少し考えたな…。




「え、嘘!そんな。偽物な訳ないじゃない!結構な額を払って買ったのよ!」



やはり馬鹿は馬鹿だったようだ。商人達の口車に乗せられて偽物を掴んだっぽい。あの金遣いの荒い女が結構な額を支払ったと言うのなら、あの偽物を本当に大した金額で買ったということだ。

ああやだ、今月の請求書を見るのが怖い。



「…普通そんなに割れませんもの。」


最初はベルセルク様を正気に戻させようと頑張ってたみたいだけど、だんだん面倒臭くなってきたようだ。ヒアナ様が呆れたように二人を見ている。

そう、社交界の場に出ているのなら、流行りのアクセサリーやドレスや珍しい品々の事をきちんと把握しなければならない。というかお茶会なども殆どファッションの自慢大会の話ばかりだ。いやでも耳にするだろうに。一度も社交界に出ていない私でも天界の光の水晶は知ってたのに、あの子は普段何を考えて社交界に出ているのだろうか。



「…っ…で、でも私の大切なものを壊したことに変わりはありませんわ!今回の指輪以外にも嫌がらせばかりしてきて…辛かったのですベルセルク様ぁ!」


慌てながら必死にベルセルク様に縋り付くシェリーに、これ以上クラシス家の評判を下げないで欲しいと言いたくなる。まぁ、私だけで十分下がってるかもしれないけど。


「そうかそうか…よく我慢したな。おい、ヒアナ!お前よくも私のシェリーを泣かせたな!シェリーの大切な物なんだから全額弁償しろ!」



嘘泣きをするシェリーにまんまと騙されたベルセルク様は、シェリーに頼られて満更でもない様子だ。二人して馬鹿なのかな?


ヒアナ様が心底呆れたような表情で大きく溜息を吐いて黙っていると、ベルセルク様が怒り爆発とでも言うようにヒアナ様の前に立ちはだかった。 


「おい、何か答えろ!」


あの馬鹿ベルセルク様がなんとヒアナ様に手を上げた。驚きで暫く動けなかったが、野次馬の列の一番前に居たためどうにか間に合った。




パシンと乾いた音が響いてベルセル様の手首を掴んだ。本気で殴ろうとしていたようだ。

私の突然の登場に、さっきまで静かだった野次馬達がざわざわとし始めた。



「ベルセルク・ジダンディ様。女性に手をあげるとは何事ですの?申し訳ないけれど今私はストレスが溜まっているから機嫌が悪いんですの。」


にっこりと微笑むとベルセルク様は鼻息荒く手を振り解いた。再びにっこり笑うと次はその背後に隠れているシェリーに身体を向けた。


「シェリー。貴女いつも高い物ばかり買って。貴女のお陰でクラシス家の財政は火の車よ。管理している私の身にもなってみなさい。」


「嘘つかないでよお姉様!私、いつもお姉様ばかりいろんなもの買って、ただでさえ物が少ないのにお姉様に私の物を取り上げられたりして…。頑張って切り詰めた生活をして、お金を貯めてやっと買った指輪だったのに…。」



大声で馬鹿なの?と言わなかった私を褒めて欲しい。思わず、呆れて溜息をついてしまった。


「はぁ〜。ベルセルク様。貴女がシェリーを愛してやまないのなら、彼女が物を壊してしまったら他の人に言い掛かりを付けるのではなくてもっと素敵な贈り物を送ってあげたらどうですか?」


「え、でもあれはヒアナが壊したシェリーが…。」


「どうして貴方はシェリーの言葉を鵜呑みにするのですか?シェリーが嘘をついているという思考には至らなかったのでしょうか。」


遠回しに馬鹿かと言っているのだが、ベルセルク様は気づかずにそんな…とかなんとか呟いていて、それどころじゃないらしい。




「シェ、シェリー。君は嘘なんかつかないだろう?これはヒアナが壊したのだろう?」


「え、ええ。私はベルセルク様に嘘なんかつきませんよ!信じてください!」


二人が言い合っているのを見ながら、なんだか違和感を感じた。普通愛する人がいたのならこんなに早く心変わりなんかするのだろうかと、疑問を持たずにはいられなかった。


ここまで読んでいただきありがとうございました!

ブックマーク、感想ありがとうございます!筆者の励みになっております(*´꒳`*)

読んで下さる皆様のお陰で続けられています!

これからもよろしくお願いします。


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