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孤独な少女は、生きる意味を探す。  作者: インコりん
一章「エリカ」
12/42

7「変化」

お久しぶりです。

いつも更新遅くてすみません…

(`・ω・´)頑張ります!

「このドレス素敵ね!これちょうだい!」


おかしい。


「この宝石も綺麗!これちょうだい!」


誰だこの子は。


私の部屋にやってきてあらゆる物をねだる妹をまじまじと見つめる。


「このネックレスもちょうだい!ほら見て、私のほうが似合うもの。」


今度は化粧台の引き出しにしまってあった箱を取り出したネックレスを掴んで自分の首元に当て、鏡を見つめていた。


「それはダメよ、今度の入学生歓迎会につけて行くためにお父様が買ってくださった大切な物なの。」


「えー、お姉さまの意地悪!」 


口を尖らせ我儘を言うシェリーに思わず溜息が出てしまう。


そう、私はめでたく入学試験に合格したのだ。お父様も、当時のシェリーもまるで自分のことのように喜んでくれた。

けれどそんな愛しい妹から、ここ数ヶ月で優しい心も花が咲くような笑顔も消えていってしまった。代わりに出てきたのは、どす黒い笑みを浮かべた別人のような女の子だった。


この前ようやく少年(婚約者)が屋敷に初めての顔合わせに来た際、部屋に乱入してきた彼女は、仮にも私の婚約者である彼の真横に座って上目遣いで自己紹介をしていた。


シェリーは昔から父上以外の男の人と接するのが苦手で、近づくことすら嫌がっていたのに。




「ありがとうお姉さま!」


「あ、ちょっ、待ちなさい!」


考え事をしている隙に、シェリーは欲しい物を全て引っ掴んで部屋を飛び出して行ってしまった。

  


大きく溜息をついてソファーに座り込む。最近いろんなことがありすぎて頭痛が酷い。


「大丈夫ですか、セレナ様。」


先程シェリーに強制退場させられていたサラが、紅茶を淹れて持ってきてくれた。


すっかり中身のなくなったクローゼットを含め、いろんな物の無くなった部屋を見渡し紅茶を飲みながら考える。


「どうしたのかしらあの子。2ヶ月前にこれが始まった頃はたまに我に帰ったように謝りに来ることがあったけど、最近それも滅多になくなったし。」


「そうですね…少し前までは優しく聡明なお嬢様でしたのに…」


サラも呆れ気味だ。


「でも今日は祝福の儀です。切り替えて行きましょう。」


「…そうね」


そう、今日は祝福の儀という、神様達から称号を授かる日なのだ。


サラがクローゼットから私の目と同じ色の、裾が広がるタイプのドレスを持ってきてくれた。


それに着替えると、髪を結んでもらうために化粧台に座る。


「このドレス、取られなくてよかったですね」


「確かにそうね」


自分の着ているドレスを見下ろす。肩が同じ青色のレースで作られている以外はなんの飾りけもないドレス。確かシェリーは、私には似合わないとか言って他のドレスを取っていった気がする。


「でも、この歳でこんなに大人っぽいデザインのドレスを着こなせるのはセレナ様くらいですしね。」


本当にサラは私をなんだと思っているのか。



サラはハーフアップにした髪に、ドレスと同じ色のレースのリボンを器用に編み込んでくれた。今日は父も同行するので、ケバケバしいドレスやメイクをしなくても、母からのお咎めはないのである。


「ありがとう」


残っていた紅茶を飲み干してから、立ち上がって背筋をピンと伸ばし、広間に待っている父のもとへと向かった。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




馬車に揺られて着いたのは、王都に昔からある歴史ある教会だった。


窓ガラスはすべてステンドグラスでできていて、聖堂内には色とりどりの光が瞬いていた。


通された部屋でしばらくで待っていると、3人の神父さんがやってきた。


「こちらが今日祝福の儀を受けるクラシス家のお嬢さんですね。」


1番年配の方が此方をみて微笑んだ。父と少し話があるらしく、それが終わるまで聖堂を見て回った。


そこで一際目立つ三つの象の前で立ち止まる。


一番左には筋骨隆々で、厳格そうな雰囲気の男性、

真ん中には長い髭を腰辺りまで蓄えた優しそうなお爺さん、

そして一番左には、脚まで届くフワフワとした髪の、慈悲深い笑みを浮かべた美女。

左から武術の神ハラガンス、大地の神マルティナス、幸福の女神ナミカラナである。


じっくりその姿を眺めていると、話が終わったらしい父と神父さん達が聖堂にやってきて、儀式が始まった。







「この宝石を持って階段を上り切ったらあちらで両膝をついて祈りを捧げてください。そうすれば神からの神託を賜ることができるでしょう。」


手を広げ、手渡された宝石を眺める。何色とも言えない、様々な色が混ざりあった美しい石だった。


ゆっくりと階段を上がると段上で跪く。


そして、3分が過ぎた。





「…………。」


いやちょっと、神託貰えないとか笑えないのだけど。祈りを捧げろって言ったって、前世は無神教だっただから、祈り方なんて知らないのである。何でもいいから神託をくれ、頼む!頼むからぁぁぁ!!



すると急に視界が明るくなり、驚いて目を開くとさっきと違う場所にいた。


慌てて周りを見渡す。デザインは聖堂に似ているが、全て白色で、光が満ちていた。


「おお、久しぶりに人間がここまで来ているぞ。」


突然何処からともなく声が聞こえ、後ろを振り向くが誰もいない。


「それに相当質の良い魔力を持っておる。…ああ、ふむふむ。なるほどあの子の子か。」


その声は、なんだか直接頭に響いているような気がした。だって何度周りを見渡しても誰もいないから。


「あら、此方が見えていないみたいよマルティナス」


「おお、そういえばこの姿だと人間には見えないのじゃったな。忘れておった。」


なんだか気の抜けるような会話の後、突然目の前に人が現れた。


…この人たち何処かで見た気がする、と思ったら、なるほど聖堂に建てられていた象の人達に似ているのである。状況から考えて、目の前にいるのは神である可能性が高い…確証はないが。


「おや、よくわかったのう。正解じゃよ」


何故だ…普通に心を読んでくるが、原理がわからない。まさに神業、いやあるいは本物の神か。


「ほほほ、腐っても神じゃからの。」


いや、腐っちゃダメだよ。

というか祈りってあんな適当でよかったのだろうか。必要なのは信仰心とかじゃなくて熱意だなんて、随分と体育会系である。


「ねえ貴女、シエナの娘でしょ?大きくなったわねえ。」


幸福の女神様が身を乗り出してそう言ってきた。


「ええ、シエナは私の母の名前ですが…どうして私の母をご存知なのですか?」


「この神界にまでやってきた人間は数えられるほどなんだ。そして前回来たのがシエナ、君のお母さんだよ」


一歩前に出た厳格そうなおじ様がそう言った。多分武術の神、ハラガンスである。見た目から想像して、声はもっと太くてドスの効いた感じだと思ってたのに、少年のような軽やかな声である。すごい違和感だ。


「失礼だな。私は武神なのだぞ。もっと畏れろ。」


「やだハラガンスったら。見た目に威厳がないからって外見誤魔化してるの、みんな知ってるのよ?」


「な…な…!?」


「あ、それより早く称号あげて向こうに返してあげないと下界の人間が心配するわね。ここにいる間は向こうで気を失っているんだから。」



というわけで、ショックを受けているハラガンス様を放置して、さっさと称号を貰うことになった。


「あら、ハラガンス!貴方セレナに加護与えてるでしょう。称号の方が影響が強いから加護は我慢することになったじゃない。」


魔道具はともかく、魔法すら使わずに易々とステータスを確認している。いつの間にか口が開いていたのに気付き慌てて閉じた。ちなみに女神様になじられた武神様は不貞腐れたように唇を突き出している。え、全然似合わない。



「…ほう。お主、面白い魂を持っておるのう。他の世から来た魂と融合しておる。」


女神様が私につける称号を考えている間、大地の神様が興味深かげに話しかけてきた。ピクリと肩を震わせると、慌てたように弁解される。


「別に責めとるわけではないんじゃよ。たまに他の世界との境目を魂が通り越してくることがあるのじゃ。その者たちのことを、世渡り人と呼ぶのじゃよ」



「世渡り人、ですか?」


「さよう。その者たちは多かれ少なかれ前世の記憶を持ったまま生まれる。それだけじゃなく、初めから非常に特殊なステータスを持つのじゃ。例えば全属性の適性がある、とかじゃな」


「そうですか…」


なるほど、異常なステータスだと思ってはいたが、世渡りをした影響によるものだったらしい。いろいろ考え込んでいると、準備できたわよ、という女神様の声で思考の海から引きあげられた。


「大地の神マルティナス、幸福の女神ナミカラナの名において、セレナ・クラシスに神の祝福を。」


目が眩むほどの光が溢れ、ギュッと瞑る。何かが大量に流れ込んでくるような気がした。それが収まるとだんだん光が弱くなって、目を開く。


「セレナ、大丈夫か?」


目の前には父の顔があった。慌てて身を起こして周りを見渡す。

教会に戻ってきていた。そうだ、向こうにいた間は気を失ってたんだっけ。


ーここで一つ忠告じゃ。身近な人間に気を付けろ。何が起きてもその美しい心を汚さぬよう祈っておる。自分を見失うでないぞ。ー


最後に頭に流れてきた声を最後に、向こうとの通信がぷっつり切れたような感覚がした。


しばらく呆然としていると、神父さんがソワソワとしながら近づいてきた。


「もしかして、神界に行っていらしたのですか。」


「神界…なのかはわかりませんが、神様達にはお会いしてきました。」


神父さんは、そうですか…と呟くと早歩きでどこかに行ってしまった。


「あとは魔道具でステータスを表示してもらわなきゃいけないんだが…まぁいいか。セレナが自分で教えてくれ。」


なんかとても信用されてるなと申し訳なく思いながらステータスと呟く。




*****************



セレナ・クラシス 10歳


種族:人間

性別:女

職業:?


MP :1200/1200


称号:剣神・大賢者・知識の収集者・体力の化け物・世渡り人


魔法適性

火属性 練度Lv 6

土属性 練度Lv 8


耐性

苦痛耐性Lv 4/10

逆境耐性Lv 3/10



ー加護ー

武神の加護




*****************



…なんかヤバそうなのきた。なに、体力の化け物ってなに。いや、体力足りなくて困ってたけど、化け物はないんじゃないか。このラインナップの中でこれだけ人じゃないし。


「どうだったかい?セレナ。」


少しの間黙り込んでいると、心配したように聞かれた。


「あ、ええっと、…ち、知識の収集者って書いてあるよ。」


一番マシっぽいやつを選んで、今のうちに全部ステータス隠蔽をかける。


「おお!珍しい称号だなぁ。さすがセレナだ!」


頭をわしゃわしゃと撫でられながら、嘘をついた罪悪感に悩まされていると、丁度よくサラが馬車で待ちきれずに聖堂まで来てしまったので帰りを言い出すことができた。



ーーーーーーーーー



屋敷に帰ると昼食を食べ、すぐに着替えていつもの練習場まで走った。



少年はまだ来ていなかったので、先に練習を始める。

しばらく剣を振るっていると少年がやって来た。


「なぁ、聞いてくれよ。」


少年が私がこの前風魔法の練習中に何本か切ってしまった木の切り株に腰掛けた。私も汗をタオルで拭いながら隣の切り株に腰掛ける。


「この前婚約者と初めて正式な面会をしたんだ。その後屋敷から出ると、彼女の妹が追いかけてきて姉の話をしだしたんだ。」


「…おう?」


まさか帰りにも少年に会っていたとは思わなかった。


「どうやら妹の物を片っ端から取りあげたり、召使をこき使ったりしているらしい。でもクラシス公爵は娘に甘くて咎められないんだと。ほんと、どうしてクラシス公爵という素晴らしい人の娘がそんな風になるんだろうか。」


少年が大きく溜息をつきながらぼやいた。


ほんと、どうやったら父上から今のシェリーみたいな子が生まれできたのか。私にもわからない。



「疲れてるんだなお前。大変だったな」


「そうなんだよ」


「そういえば…なんかシワが増えてないか?」


「うるせー、まだ一つもねーわ!」



魔力を感じてひょいと身をかわすと、横を火球が通り過ぎていく。私は仕返しで生活魔法の水を放ち、少年は防ぎきれずびしょ濡れになってしまった。


「おい、これ学園でやったら退学だぞ。私じゃなかったら当たってた。」


「お前相手だからいいんだよ。」


謎理論を言い出す少年に笑いながら、服と髪を乾かしてあげる。そして練習を始めようと立ち上がった。



「どうした?なんか聞きたいことでもあるのか?」


なかなか立ち上がらない少年を心配して振り返ると、顔を赤くして口をぱくぱくしていたので聞いてみる。


「……名前」


「ん?」


「そろそろ名前、教えてくれてもよくないか。」


おい、それは禁句だろ?と笑い飛ばそうもしたが、腕を掴まれた。いつにも増して強引な少年に戸惑う。



「なんだよ急に。」


「…俺、学園に受かったから入学するんだ。そうしたら忙しくてなかなかここに来られなくなるだろ。お前もどうせ受かってるだろうけど、だからといって学園で会えるとは限らないじゃないか。だからせめて、名前だけでも知っていたら見つけられるかと思ってさ。」


「…じゃあ、君が先に言うならいいよ」


しばらく迷うように黙って、まるまる1分は考えたんじゃないかと思うほど経つと、彼はようやく口を開いた。


「えと、ジ…ジ…ジオン」


ここまできて嘘つくんかい、と心の中でツッコミながら、じゃあ私は誰の名前を使おうかと考える。ジンが父親の名前を使ったのだから、私は母の名前を使うことにした。安直すぎるかもしれないけれど。


「私はシエナだ。」


「じゃ、じゃあ改めてよろしくな、シエナ」


どもりながら初対面のような挨拶をする少年にまたもや笑いがこみ上げてきて苦しくなりながら答える


「ああ、よろしく。ジオン」


「…お前、笑顔似合わないから他所で笑うのはやめろよ」


練習を始めようと剣を振り上げると、唐突に言われた言葉に驚いて少年の顔を凝視する。


少年の顔がどんどん赤くなっていくので、やはり暑いのだろうかと水の入った入れ物を投げ渡す。


「どうした?お前今日おかしいぞ。熱中症か?」


「ネッチュウショウってなんだ?」


「…なんでもない」





3時になり少年が帰ると、今日貰った称号にどんな効果があるのか実験してみることにした。


「おいミーナ、そこにいるんだろ?」


後ろに立っている大きな木の上に問いかけると、ミーナが服を揺らしながらふわふわと降りてきた。


「いつから気付いてたの?」


「最初からだよ」


ワクワクとした表情で聞かれたので答えると、急にテンションが下がった。


「あーあ、姿隠してたつもりだったのに」


「……なんか悪かったな」




「それにしてもセレナは青春してるわねー!あの子彼氏?」


謝ると機嫌を直したようで、私をツンツンしながら揶揄うような口調で言ってきた。


「青春…?は、学園でするつもりだ。それとあの少年は友人だ」


「あら、そういえばセレナは鈍感ちゃんだったわ…」


なんかブツブツと独り言を言い始めたのでさっさと練習に付き合ってもらうことにした。


「今日祝福の儀を受けて称号を貰ったんだよ。それがどのくらいの効果があるのか実験したいんだけどいい?」


「どんな称号貰ったの?」


「えーっと、剣神、大賢者、知識の収集者、体力の化物…かな。」


世渡り人という称号は伏せておくことにした。バレるのは神様達だけでいい。


「…これはまたヤバそうなの貰ったわね…」


「…やっぱりそうだよなぁ。私もそう思ってたんだ。」






せっかくミーナがいるのだからとまずは大賢者という称号を試すことにした。


「えーと、これはどうゆうこと?」


「…さあ」


目の前に広がる切り株畑にただ呆然とする。さっきまで木が生い茂っていた10㎡ほどの木を全て切ってしまったのだ。


下級魔法で。



「これは調整が必要ね…」


ミーナの言う通り、これでは下級魔法すら容易に使えなくなってしまう。でもさっき少年に使ったとき生活魔法の威力は変わっていなかったから、生活魔法には効果がないらしい。



こうして今日は下級魔法を使っても下級魔法の威力に留められるようにするという、側から聞いたらちょっと意味がわからないような練習をした。しばらく続けてようやく火、水、風属性の下級魔法の威力は抑えることに成功したが、もう辺りは暗くなっていた。


「大変だ、今何時かわかるか?」


「うーん、人間の時間だと多分19時半くらい。」


練習に付き合ってくれた礼を言うと、屋敷まで猛ダッシュした。



「…遅かったのね、セレナ」


何故か私の部屋で仁王立ちしている母上に息を飲む。

なぜなら…


その後ろに見える部屋がすごい有様になっていたからである。


「…どうして私のものがなくなってるの?」


「親には敬語を使いなさい!」


大きく振りかぶった手で頬を叩かれ、まだ10歳の、たまに食事を抜かれるような痩せた体は吹っ飛んだ。ベッドの角に頭をぶつけてしまい、頬を生温かい液体が伝った。


「貴女のお父様は急遽お仕事で一年間家を空けることになりましたの。だからこれからこの屋敷は、私の管理下なのよ。」


「…それが何故私の部屋を取り上げることに繋がるのでしょうか?」


怒りで握りしめた拳が震える。


「何故ですって?そんなの私の可愛いシェリーのために決まってるじゃない。ねぇシェリー?」


母上の背後に立っていたシェリーが、ひょこりと姿を表した。



「ねえ、お姉さま。シェリーのためだもの。いいでしょ?」


変わらないはずの姿。変わらないはずの声。

なのにどうしてだろう。どうしてこんなにも変わってしまったのだろう。


「……貴女は一体誰なの…」


「私はシェリー・クラシスでしょ?お姉さま。可愛い可愛いヒロインなの。」


口を歪めて笑う目の前の少女が、別人に見えた。浮かべる表情も口調も、私の知るシェリー・クラシスとはかけ離れた人間だった。


「セレナ。これからはシェリーにもきちんと敬語を使いなさい。家長の命令よ。」


にっこりと微笑む義母の顔が、邪悪な悪魔のように思えた。ドアを閉められてもなお耳に残る不快な高笑いを頭を振り追い出す。



そう、少し前から母上が再びシェリーに優しくし始めたのだ。嬉しかった。嬉しかったけど…。


彼女たちの関係を変えたのは、私の知るシェリー・クラシスじゃないだろう。

 

「あの子は誰なの…。」


ギリッと音を立てて歯を食いしばる。

返してほしい、もう一度あの陽だまりのような私の愛しい妹に戻って欲しい。そうでないと私は…貴女が嫌いになってしまう。



「シェリー…」



サラが部屋にやってくる翌朝まで、消えない苦しみを必死に噛み殺した。


いつも見てくださってる皆様、本当にありがとうございます!更新頑張ります!

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