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「じゃあ、ゴリさんに会わないように頑張ってみようか」


 ヒデヨシは、ミヤとの話を終えると、立ち上がり、すたすたと進んでいく。


「ゴリさんに会わないようにって、出来るものなの?」


 ミヤは自信ありげなヒデヨシの歩みについて行く。


「実は、このゲームやりこんでいくと、一定のラインから気配を感じるようになるんだよね……」


 苦笑いしながら言っているヒデヨシに、ミヤはまたもや尊敬の眼差しを向ける。


「すごい……」

「いや、普通ならここで厨二病っぽくて気持ち悪がったりするシーンじゃないの?」

「いや、別に気持ち悪いなんてことはないと思うけど……?」


 ミヤの不思議そうな目にヒデヨシはなんだか歯痒い感情を抱きながらも、説明を続ける。


「ま、それで気配を感じる、って話だけど、これそんな万能じゃないんだよね」

「どんな感じなの?」

「……自分の部屋で物を把握してて、ここにあるよねー、みたいな?」


 昨夜起こった自身の部屋で足をぶつけたことを棚に上げながら話すヒデヨシ。


「うーん?

 分かったような分からないような?」

「今の時点でわかったら本当にすごいから、逆に安心」


 ヒデヨシはミヤの方から、先程までいた道の方に顔を向け、


「それで、本当だったら気配を読めるようになると、消したり薄めたり、みたいな真似ができるようになるんだけど……」


 ヒデヨシは立ち上がり、静かに歩き始める。

 既にヒデヨシに言われるでもなくついていくミヤ。


「ゴリさんはその手の小技が滅法できない。

 何時もなら味方で怒ってるシーンだけど、敵なら利用させてもらう他なし、って訳で……」


 ヒデヨシはゴリの気配を感じる場所とは距離を取る。


「ゴリさんとヒデヨシ、ほんと仲いいんだね?」

「今その話?

 ま、まぁあの人とはこのゲームを始めた頃からの知り合いだからね」

「へぇ……。

 ちなみにさ、このゲームで一番仲いい人ってゴリさん?」

「いや、違う…………」


 二人が静かに話している、そんな普通の光景に、大きな影。


「覚悟!」


 その影はヒデヨシを覆い、武器を振り下ろす。

 ヒデヨシは気づかない。

 そうして、その武器は振り下ろされ、辺りには草が生い茂る。


 残り、30秒。



☆☆☆☆☆



 へ?


 ヒデヨシの声がやけに響く。

 ヒデヨシは、押し倒されていた。

 気づくと、鬱蒼と茂った草の中から、ゴリを見上げていて、


「ミヤ……?」


 ヒデヨシは、ゴリを見ずに、とある一点を見る。

 それは元自分がいた場所。

 そこには倒れているミヤ。

 ミヤは、何も発することなくポリゴン状の光の粒子となって、消えた。


『あれま』


 ヒデヨシを庇って一刀両断されたミヤは、光の粒子となった後、残った二人を見下ろしていた。


『死んじゃうとこうなるのか』


 ミヤの発言は、残る二人に届くことはない。

 ミヤが自分の体をみると、何やら幽霊のようになっていることに気づく。


 それと共に、視界の右上に表示された『リスポーンまでのこり15秒』の文字を見る。


『結構長いんだ』


 ミヤはそれならゆったりと二人を見ていよう、と思ってみていると、

 ヒデヨシがいつの間にか立ち上がっていた。

 体には無数の赤い線。

 おそらく擦過傷をいくつも受けたのだろう。


『庇ったけど逆効果だったかな?』


 ミヤは誰に言った訳でもない言葉を放りながら、ヒデヨシを見ていると、

 ゴリはヒデヨシの待つ間もなく、

 刀を上段に構え、ヒデヨシに振り下ろす。


 ここは森。


 整備されていない状態で避けるとなると、必然的にその足元の悪さにより、満足に避けることは出来ない。

 さらには、ヒデヨシはもう既にゴリの『森の守護者』を受ければしんでしまう。


 ミヤが息を呑む。


「ちっ」


 そうしてヒデヨシに攻撃が当たりそうになった瞬間、妙に響いた舌打ちがミヤの耳に届いた。

 次の瞬間、ぶれて見える程のスピードでヒデヨシの手元が動く。

 次の瞬間、ゴリの刀がはねあげられる。


 同時に、ヒデヨシの体が後方に吹っ飛ばされる。


 ヒデヨシは抜刀した刀を鞘に収め、そのまま空いた手足で地面に四点で着地する。

 後方にかかる力を無理やりとどめて、ヒデヨシはゴリの方に走り始める。

 一方のゴリは、しっかりと刀を上段に構え直し、今一度の振り下ろしを試みる


 その瞬間、ヒデヨシの体が加速するのをミヤは捉えた。

 抜刀しないまま、素手のままの突進。

 勢い衰えず、ゴリの腰にタックルをしたヒデヨシは、同時にゴリの足を引っ掛けるように動く。

 振り下ろしのタイミングをずらされ、突進されたゴリは、そのまま足を後ろに引いてバランスを保とうとする。

 だが、ヒデヨシが木の根の方に倒したことにより、ゴリの足は木の根に引っかかり、体制を立て直せず押し倒される。


『おぉ!』


 尻もちを着いたゴリに対して、一緒に倒れこまなかったヒデヨシは、倒れたゴリさんの刀を持つ手を、


「ぐあっ!?」


 蹴り上げた。

 このゲームは痛みは感じないのだが、蹴られた、という認識はあるため、ゴリの手は蹴り上げられると同時に刀を手放してしまう。

 大きな大きな刀は、宙を舞う。

 そして、ヒデヨシがゴリを見下ろした瞬間、


『リスポーンします』


 時間切れになった。



☆☆☆☆☆



 長屋。


 ミヤは直ぐにヒデヨシの様子を見に行こうと戸をあけると、


「はぁっ!」

「斬る!」


 青色の袴の二人の男が襲ってきた。

 ミヤは咄嗟の対応が難しく、戸をでて地面に足をつける頃には、襲撃者の二人とはすれ違っていた。


「くっそ」


 襲撃者の二人は振り返り、ミヤの方を見る。

 二人の目線は、ミヤの肩口に注がれる。

 そこには一本の赤い線。

 そう、一本だ。

 二人の襲撃者のうちの一人が、ミヤを睨みつける。


「意外に躱せるもんだね、うん」


 ミヤは、自身の体に刻まれた一本の裂傷を見たその瞬間、


『白兵戦終了!』


『結果!

 赤、勝利!』


 カンカンと金属を叩く音とともに、終了の合図が下された。

 ミヤはその合図に体の力を抜く。

 ヒデヨシのことを気にするように点を見上げたミヤは、空が赤く染まっていりことに気づいた。

『憂』について

プレイヤーで『使いにくい刀』と呼ばれている『(うい)』は、初心の(うい)とかけられた刀。

序盤から中盤は使ってもいい、がそっから先はオススメしない、と攻略サイトにある。

大味な攻撃を繰り出す敵に対しては有効だが、ゴリの持っている刀などの、擦過傷によってのダメージを与える相手だと相性が悪い、


ちなみに、これを使っている強いプレイヤーは存在していて、【道連れ姫】と呼ばれている。

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