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「えっと、あなたは?」

「お主、ヒデヨシの連れか?」


 ゴリの登場に、ミヤが話しかける。

 ヒデヨシはゴリが何かを言い出す前に、


「ゴリさん、今日初めてやる俺の連れです。

 ……一応リア友なんで、お手柔らかに」


 後半の部分を、ゴリにしか聞こえないように話す。

 ゴリはその言葉を聞き、静かに、


「……もしや、これか?」


 と小指を立てた。

 パシィンといい音を鳴らして、ヒデヨシはゴリを叩いた。


「何をするのだ」

「不躾すぎません?」

「事実なのだろう?」

「俺とゴリさんの仲だから許される話ですよ?」

「褒めてくれるな」

「今のどこに褒める要素が?!」


 そんな二人のやり取りを見ているミヤは、クスリと笑った。

 その様子にゴリとヒデヨシが、ミヤと見る。

 そんな視線を浴びたミヤは、


「仲良いんですね」

「うむ、こやつには辛酸を舐めさせられているからな」

「辛酸?」

「ライバル、ってこと」


 ヒデヨシの言葉に、ミヤは驚く。

 ライバルなのに仲が良い。

 そんなのは少年漫画の中だけだと思っていたから、余計に驚いている。


「ゴリさん、今日はどしたの?」

「ふむ、どこかの誰かが昨日でイベントを終わらせたせいで、今日は時間が余ってしまっての」

「……それは仕方が無いですよ」

「まぁ、なんとなく察したわ」


 ゴリはそう言った後、あたりを見渡す。

 周りでは、武器屋や、その周辺のプレイヤーがゴリのことを見ている。

 その様子にゴリは、


「ここで話すのもなんだ、場所を変えるか」


 そう言って歩を進めた。

 ヒデヨシはミヤに向かって肩をすくめる動作をする。


「面白い人なんだね」

「それはどうだか」


 ミヤはそう言ってヒデヨシとゴリの後をついて行った。



☆☆☆☆☆



「それで、ここに来たんですか?」


 着いたのは、馬小屋。

 中には馬がいるのが見える。

 が、どことなく手抜き感のある馬小屋にミヤは首を傾げていた。


「あぁ、ここならいい語り合いが出来ると思ってな」

「いやいやいやいや、最初にここに入るとかドマゾ以外いないですよ」

「そうか……なら行くか……」

「だぁっ!

 やぁめぇてぇ!」


 ヒデヨシは、ゴリを引っ張って止めようとするが、流石の巨体を止めることは難しい。


「えっと、ここってどこなんですか?

 聞いた感じと見た感じだと、馬に乗れる場所?」


 ミヤは二人のやり取りに違和感を覚える。

 見た感じは馬小屋なのに、ヒデヨシは行くのを渋り、不穏なことを言っている。

 対してゴリは平然と、いつもの様に入っていこうとする様子に、矛盾を覚える。


「馬に乗れる……か、あながち間違いではないな」

「なにがあながち間違いじゃない、だ!

 えっと、ここは馬小屋に見えるけど、本当は、対戦の為の窓口なんだよ」

「窓口?」

「曰く、戦場に向かうのに、移動という意味を込めて馬小屋にしたらしいのだが、このゲームで馬には乗れない!」


 ゴリのハキハキとした話にミヤは、へぇ、と納得しかけてしまうが、


「えっ?!

 馬乗れないの?!」


 少し期待していたミヤは、肩を落とす。


「だからゴリさん、道場がいいって」

「……でも結局ここには来るのだろう?」

「……まぁ……」

「で、ここに入ると対戦できるって言ってたけど、何するの?」


 未だにこのゲームのルールを知らないミヤからしたら、ヒデヨシの嫌がる理由がわからない。


「だからこそ、ここに入って教えてやろうという訳だ」


 ゴリはそんな質問に対して、身も蓋もない回答をする。

 ヒデヨシは、ミヤとゴリの顔を交互に見て、不安そうにする。

 ミヤはそんなヒデヨシの様子に少し微笑み、


「うーん、よく分からないけど入ってみるといいんでしょ?

 習うより慣れろ!」


 少しの意地悪な心と、ヒデヨシの見ている世界を見たくなったミヤは、馬小屋に入っていく。


「おぉ!

 流石はヒデヨシの友人だ。

 見どころがある」


 そう言ってついていくゴリ。

 取り残されたヒデヨシは、一人置いていかれたことを悟ると、トボトボと馬小屋の中に入っていった。



☆☆☆☆☆



 馬小屋の中は、馬小屋だった。

 が、


「なんか、雑?」


 馬がどことなく機械感の感じる装いで、例えるならばメリーゴーランドの馬のようだった。


「ここは結構雑に作られているんだよ。

 別にここはあくまでゲームの形式を選ぶだけ、長い時間居るわけじゃないからいい、って」

「うーん、長屋と比べちゃうとなぁ……」

「ガハハ!

 あそことは比べては行かんよ!

 あそこはゲームを作っている段階で、一番プレイヤーが行き来をする場所なことは予想されていたからな」

「そっか……」


 ミヤは馬小屋の中をじっくり観察していく。

 馬小屋は、両サイドに五つずつ……計十匹の馬を保有しており、それぞれの馬の上には、


『白兵戦』

『籠城戦』

『攻城戦』

『旗戦』

『太刀戦』

『大太刀戦』

『短刀戦』

『脇差戦』

『打刀戦』


 そして最後の馬は、何も表示されていない。

 それぞれの馬には手網が備わっていて、顔の前にぶら下がっている。


「基本九種」

「基本九種?」

「常に遊べることの出来るモード。

 イベントの時だけの戦いとかがあるんだけど、イベント以外の期間でも遊べることが出来る戦い」

「つまり、今遊べるものってこと?」

「まぁそういう認識でいいじゃろう」


 ヒデヨシの説明に、とりあえず自分の中で理解するミヤ。


「まずは妥当に『白兵戦』かの」

「それがいいと思います。

 覚えることも少ないですし」


 ゴリとヒデヨシの会話の内容が分からないミヤは、とりあえずと『白兵戦』の馬の手網に触れ、


 その場から消え去った。



☆☆☆☆☆



「え?」


 ミヤが気づくとそこは、長屋だった。


「え? なんで長屋? 私……」


 戸惑っていながら戸の方に近づき、開けようとするが、開かない。

 なんで開かないのかと力を入れようとしたその瞬間、


「あっぶねぇ!」


 後ろから声がした。

 ミヤが振り向くと、そこにはヒデヨシの姿。

 ホッと胸を撫で下ろしたミヤは、ヒデヨシに近づき、


「もしかして、あの手網が始める合図だった?」

「もしかしなくてもそうです」


 ヒデヨシは少し怒るのかという雰囲気を出したが、


「説明してなかったね、ごめん。

 言うべきだったよ」


 と、ミヤの頭を撫でる。


「いやー、こっちこそ無闇矢鱈と触りまくってごめんね」


 ミヤは微笑んみながら撫でられるのを受け入れる。


「……それにしても、ゴリさんは……」


 ヒデヨシは撫でるのを止める。

 ミヤは少し物足りなさそうな顔をしながらも、一緒になって考える。


「普段だったらどうなるの?」

「一緒に手網を掴んでいれば、同じ部屋に入って、戦闘まで待機する。

 だけど同じ部屋に入らないってことは……」

「はぐれちゃったのかな?」

「うーん、はぐれたで済めばいいけど……」


 ヒデヨシの苦笑いした様子に、ミヤは首をかしげると、


『白兵戦!!!』


 野太い男の声がする。

 ミヤは驚くが、肩に手が回される。

 ミヤはその手の主……ヒデヨシを見ると、


「驚くよね、分かるよ。

 これが聞こえると、はじまりの合図だ」


 ヒデヨシは、先ほどまであかなかった戸に近寄ると、


 バンッ!


 勢いよく開ける。

 そこに広がっていたのは、大きな一本道と、森だった。



☆☆☆☆☆



「すっご」


 ミヤが一言、呟く。


 そこに広がっていたのは、一本道と、両サイドに森。

 そこはさっきの馬小屋とは違い、ゲームさを感じない、まるで現実かのような風景。


「ここの名前は、なんの捻りもなく『一本道』。

 両サイドの森と、この大きな一本道から構成されるステージだよ」

「っだぁおらぁ!いくぞぉ!」

「ハッハー! ヒャッハー!」


 すると、ミヤの左側から聞こえる、世紀末的な声。

 隣を見ると、そこには頭の真ん中のラインにだけ髪が生えている……所謂モヒカン頭の男二人が、走り出した。


「あっ!

 助さん角さん!」


 そこでヒデヨシが、その二人を呼び止めるように声をかけたが、ミヤは誰に話しかけているのかよく分からなかった。


「っ、あぁん?!」

「なんかようでもあんのかてめぇコラ!」


 すると、走り出したかと思われたモヒカン頭の二人は、振り向いて睨みつけてきた。

 そうして、ヒデヨシの姿を視界に入れた瞬間、


「「ちっ、【羽柴】のヒデヨシか」」


 二人は息を揃えてヒデヨシに向かって舌打ちをする。


「すいません、こいつ、俺の連れなんですけど、初心者なんで何とかしてくれませんか?」

「おいおい、何とかって……、俺ら二人だけで何とかなるぞ?」

「本当だぜ【羽柴】。

 いくらあんたの隣の子がひ弱そうな子でも、俺らが負けることなんてありゃしねぇよ」


 二人して刀を肩に担いで、やれやれとジェスチャーをする。

 【羽柴】と呼ばれたことが気になったが、彼氏の悪口を言われたミヤは、ムスッと頬を膨らませたが、


「……あんたらこそ鈍ったんじゃねぇのか?」


 ヒデヨシのつぶやきと共に感じるのは、ミヤでも分かる程の圧力。

 しかし、ミヤには圧力を感じる原因が分からない。

 ミヤが急いでヒデヨシの方を見ると、


「ゴリさん、これ狙ってたのか」

「「ぬぁっ?! ゴリだと?!」」


 ヒデヨシの呟きに、モヒカン二人組が反応する。

 モヒカン二人組は、二人してぷるぷると震えて、ミヤは怯えているのか、と勘繰ったが、


「それなら」

「やるしかねぇな」

「「ヒャッハー!!!!」」


 元気よく駆けて行った。


「えぇ……」


 ミヤは困惑した様子でその二人の後ろ姿を見ると、ヒデヨシは微笑みながら、


「ま、楽しんでいこうよ」


 ミヤの頬を突ついた。

馬小屋について

馬小屋には常時十頭の馬が置かれていて、その内1頭がイベント様になっている。

当初開発チームは、この馬のグラフィック等々にこだわろうとしたが、開発チームリーダー、前島悟(まえしまさとし)は反対。

その説き伏せによって、その当時馬のクオリティアップチームは、長屋に関しての仕事をした。

ちなみに、馬小屋自体にはこってはいないが、イベント時のゲーム参加するための馬の凝り方は異常であり、時には馬フェチの人がイベント時の馬を見るためだけにゲームをすることがある。

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