抽選
新作も投稿していくことをお許しくださいぃぃぃっ!!!!
トーナメントを目前とした二回戦だったからかほとんどのギルドが様子見しつつも自らの勝利を取りこぼさないように立ち回ったからか10ブロックの戦闘は初戦と比べれば終了する時間が遅かった。
――――一部のブロックを除けばではあるが。
既に二戦目の決着は付き少々長めの休憩時間中。
トーナメントの組み合わせ抽選は直前に行われるためどのギルドが戦うのかは分かっていないが、トーナメントに駒を進めたギルドは大々的に掲示される。
それを見て今年の【ギルド対抗バトルロイヤル】での結果を予想する配信者やプレイヤーが多く、今回も掲示されるのを待つプレイヤーたちで賑わっていた。
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〜二回戦突破1位〜
――――前回ギルドランク1位――――
【高天ヶ原】
〜二回戦突破2位〜
――――前回ギルドランクなし――――
【偽りの記憶】
〜二回戦突破3位〜
――――前回ギルドランク5位――――
【BLACK・ROSE】
〜二回戦突破4位〜
――――前回ギルドランク3位――――
【Greedy Walker】
〜二回戦突破5位〜
――――前回ギルドランク2位――――
【龍驤虎歩】
〜二回戦突破6位〜
――――前回ギルドランク7位――――
【Blue Bird】
〜二回戦突破7位〜
――――前回ギルドランク4位――――
【Aurora】
〜二回戦突破8位〜
――――前回ギルドランク9位――――
【Enigma】
〜二回戦突破9位〜
――――前回ギルドランク15位――――
【神ヘノ賛美】
〜二回戦突破10位〜
――――前回ギルドランク23位――――
【Labyrinth・Maker】
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初めはいつも通りの【高天ヶ原】のトップ通過、そして不動の上位5つのギルドの名前があることを確認したプレイヤーたちが今年もかと笑いながら言い、その他のギルドへと目を向ける。
残りの5つのギルドの名前を確認し首をかしげ、二回戦突破順位を見て目を見開いた。
「【Aurora】が……7位……?」
「【BLACK・ROSE】が【Greedy Walker】抜いてるぞ……!?」
「【偽りの記憶】って何処のギルドだよ……?」
二回戦突破の順位のため多少変動はあるもののここ数年変化の無かった上位陣に起きた事態にザワつくプレイヤーたち。
そして何より明らかにできたばかりのギルドが前回ギルドランク6位のギルドを倒して更に2位での突破という事実。
毎年盛り上がるのは間違いないのだが、あからさまに違う展開にプレイヤーたちは更なる盛り上がりを見せていた。
「くぅ〜……!
いつも通り【高天ヶ原】のブロック見てたからなぁ……!
他のブロックも見ておけばよかった!」
「俺も【BLACK・ROSE】見てたんだよなぁ……。
【偽りの記憶】ってどんなギルドなんだよ」
プレイヤーのほとんどが不動の上位5つのギルドが戦闘をするブロックばかりを見ており、その他のブロックを見ることが少ないため【偽りの記憶】の戦闘を見れずに悔いるプレイヤーも少なくない。
「この後のトーナメントまでお預けだな」
「だな。
んで?今年は順位予想どんなもんよ?」
「そりゃ【高天ヶ原】1位は確定!……と思ってたけどなーんか今年はありそうじゃねぇか?」
「確かに去年までとはだいぶこれまでの結果が違うもんな〜」
「まぁ、それでも【高天ヶ原】が負けるのはあんまり考えられないけどな〜」
「いやいや!
今年こそ【BLACK・ROSE】がだな……」
トーナメントの組み合わせ抽選までの休憩時間で様々な予想が飛び交い、プレイヤーたちのテンションも上がっていく。
それほどまでにトーナメントでの戦闘はプレイヤーたちに期待されているのだ。
――――そして、『ジャイアントキリング』こそが最も望まれてもいた。
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――――トーナメント出場ギルド待機ルーム
初戦、二回戦と勝ち進みトーナメントに駒を進めたギルドになると待機場所として完全個室を用意される。
例えトーナメントが開始されたとして、一戦ずつ行っていくため後半に出番を持つことになったギルドの待ち時間はかなりのものだ。
中には一度ログアウトして食事をしたりシャワーを浴びたりするプレイヤーも少なくはない。
なんなら現実世界で時間を潰すプレイヤーもいるほどだ。
「――――さてさて〜うちのギルマスはくじ運どうかな〜?」
休憩時間が終わりトーナメントの組み合わせ抽選を行う時間となる。
備え付けのモニターには各ギルドから1人、基本的にはギルドマスターが舞台上に並ぶ姿が映し出されていた。
各々リラックスしながらもこれから行われる抽選に注目しているらしく自分たちのギルドマスターの姿を目で追う。
①から⑩までの数字が記入されたトーナメント表が大きく投影され、二回戦の突破順位上位からくじ引きで枠を埋めていく方式をとっており【高天ヶ原】は1位での突破をしているためトップバッター。
抽選を見守っているプレイヤー達からすればどこに【高天ヶ原】が入るのかは見逃せない所である。
――――何せ現状の最強ギルドなのだから。
上位を目指すのであれば早くには当たりたくはない。
しかし頂点を目指すのであればいづれにせよ戦う事になる。
――――で、あるのならば。
出来る限り自分たちと当たる前に他のギルドとの戦闘で手の内を晒させたいというのが本音であろう。
トレードマークとなっている狐面を被ったユウノが悠々と抽選ボックスへと手を入れる。
古典的ではあるが抽選ボックスの中から数字の書かれた玉を取り出すというのがこのトーナメントの抽選方法となっているからだ。
ユウノは掻き回すなどすることも無く、恐らく初めに手に当たったのであろう玉を容赦なく掴み取り天に掲げた。
投影されたトーナメント表が一瞬輝くと数字の下に【高天ヶ原】の名前が刻まれる。
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① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
高
天
ヶ
原
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戦闘の回数が多い場所に当たってしまったためかユウノは苦笑いしながら恐らくモニターで仲間たちが見ているだろうと手を合わせる。
1人、また1人と抽選ボックスに手を入れて自分たちの数字を決めていく。
【偽りの記憶】からは仮面により表情すら見えない全身黒ずくめの【幻影】――――モーターが流れるような動作で玉を取りだし自分たちの番号を決める。
【偽りの記憶】――――⑧。
特に何かリアクションを取るということもなく戻っていくモーター。
彼からすればどこに行っても関係ないという意思の表れであろう。
【BLACK・ROSE】からは中世ヨーロッパの貴族女性が身に纏うドレス姿に真紅に染まった髪の毛を三つ編みシニヨンでまとめた風貌のアリシアが優雅に進み出るとにこりと微笑み抽選ボックスからひとつ取り出す。
【BLACK・ROSE】――――①。
誰よりも早く数字を確認したアリシアはユウノの方を向いて挑戦的な笑みへと表情を変える。
【Greedy Walker】からは紋章があしらわれた軍服を腕を通すことはなく羽織った姿のジェイドが恐らくその場にいる誰よりも大人の余裕というものを含ませた表情で抽選ボックスに近づくとこれまたスムーズにひとつ握りしめた。
【Greedy Walker】――――⑦。
顎に手を当て何かを考える素振りをみせると少し後に納得したのか整理が着いたのかうなづいてみせる。
【龍驤虎歩】からは首に近い低い位置にひとつでまとめられたお団子ヘアに薄手ながら全身のシルエットが捉えにくく両手両足がちょうど見えない程に裾袖の広く長い服を身に纏った何処か動きにくさを感じる服装のワンジーが一歩で抽選ボックスにたどり着くと、抽選ボックスを服の袖が覆い隠しながら玉を掴み出した。
【龍驤虎歩】――――⑤。
何処の数字が出るのかに全く興味がないらしく一瞬で元の場所に戻り退屈そうにし始めるのであった。
さて、ここまで上位5ギルドが順調に場所を決めていくものの――――未だにどのギルド同士が戦うのかが一切分からない状況となっている。
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① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
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興奮冷めやらぬといった状況で、抽選を見守るプレイヤー達はモニターにかじりつく。
初戦から【高天ヶ原】が出てくるということもあり早く相手を教えてくれという言葉が幻聴になり聞こえてきそうな程に盛り上がりを見せていた。
次の抽選は【Blue Bird】。
さながら鷲や鷹を扱う鳥使いのような風貌の男性――――クリューが自らの腕を守るアームカバーの位置をなおしつつ前に出る。
その場にいる他の9人のギルドマスターに一礼をすると抽選ボックスから玉を取り出すのであった。
【Blue Bird】――――⑩
ここまで引いてもまだ組み合わせが決まらない状況に面白さを感じてきたのか不敵な笑みを浮かべるクリュー。
とはいえ、自分の番は終わった為に元の位置へとゆったりと戻る。
ようやく組み合わせが決まる7番目。
しかもここで出てくるのが前回ギルドランク4位の【Aurora】。
ほぼ何処に入ったとしても激闘が予想されるが故に期待がさらに高まる。
商人のような風貌は変わらずにいつも通りのポーカーフェイスで抽選ボックスの前に立つアルヴァン。
まるで焦らすように緩やかな動作で玉を掴み出す。
【Aurora】――――②。
アルヴァンの纏う空気の雰囲気が変わる。
表情は全く変わらないというのに対戦相手である【高天ヶ原】のギルドマスターであるユウノを目を開いて見つめていた。
【Enigma】からは手足の露出はそこそこにあるものの素肌が全く見えないほどに包帯が巻かれたプレイヤー――――カルロが抽選を行う。
【Enigma】――――⑨。
対戦相手は前情報がほとんどない【偽りの記憶】。
しかもギルドマスターが【幻影】とあっては油断はできないとそんなことは百も承知だと言わんばかりに頷く。
【神ヘノ賛美】からは全身を白で統一した神官の服に身を包んだ女性プレイヤー――――二ィールが上品な所作で歩みを進める。
そしてさらに【Labyrinth・Maker】からボサボサの髪に初心者プレイヤーかと言わんばかりの質素な防具に身を包んだ女性プレイヤー――――モースも同じくオドオドしながらではあるが後を着いていく。
そして2人が同時に抽選ボックスから玉を取り出す。
【神ヘノ賛美】――――⑥。
【Labyrinth・Maker】――――④。
二ィールは全員に向けてニコリと笑い軽く頭を下げると元の場所に戻る。
モースは口元に手を当てて落ち着かない様子であったものの、二ィールが戻っていってしまうため自分も戻らねばならないと慌ただしく駆けて行った。
――――こうしてようやくトーナメントでの組み合わせが決まる。
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① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
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『――――トーナメント初戦は
【Aurora】VS【高天ヶ原】。
30分後にスタート致しますので準備をお願い致します』
機械音声が開始時刻を告げるとその場に集まっていたプレイヤーたちは解散する。
ユウノとアルヴァンは互いに視線を合わせて小さく笑うと言葉を交わすことなくそれぞれの待機場所へと向かうのであった。




